遊び人と妖精① 金を受け取らない妖精
まだ、俺がパン屋になる前の話だ。
若い頃は、先のことなんて考えていなかった。
賭博で稼いで、その日暮らし。
束縛されるのが嫌で、
恋人なんて面倒だった。
ヤりたいときにヤる。
そんな生活だった。
性欲の塊みたいな20代。
妖精遊びにハマったのも、
まあ当然の流れだ。
その日は賭博で大儲けして、妖精を4人買った。
一通り楽しんだ後、ベッドの上で一服していた。
今日は最高だったな……
ふと、視線を感じた。
他の妖精は寝ている。
一人だけ、起きていた。
4人の中で一番おとなしかったヤツ。
端で膝を抱えていた。
こちらを見ている。
でも、何も言わない。
「帰ってもいいぜ?」
妖精は首を振る。
「……そ」
帰りたいんじゃねーのか。
金は先に払ってるし。
妖精は膝を抱えたまま、
少しだけ視線を落とした。
「……そっち」
「あ?」
「行ってもいいですか?」
妖精はベッドの端を指さした。
「……別に」
「来たいなら来ればいい」
妖精がいそいそと近づく。
ベッドの端に、ちょこんと座った。
側に来たいと言いながら、触れない距離。
それが、
妙に気になった。
腕を伸ばす。
「……来いよ」
腕の中にすっぽり収まる小柄な体。
さっきまで一緒にいたのに、
初めて触れられたみたいな顔をする。
驚いたような、
少し嬉しそうな顔。
不思議なヤツだった。
気づいたら、朝までその妖精を抱いていた。
腕の中で、
何度もこちらを見る。
触れてほしいと訴える目。
それを見ると、
無性に欲しくなった。
何で帰らなかったのか、
そのときは考えもしなかった。
……今なら、わかるけどな。
ーー
朝。
「ありがとうございました」
妖精達が出て行く。
「おう」
一人だけ残して。
「どうした?」
「あの……」
「よかったら、また私のこと指名してくださいっ」
「私何でもします、SMでも複数でも何でもしますから……」
言いながら、手が震えていた。
「……ありがとな」
ポン、と頭を撫でる。
そんなに金が欲しいのか?
「ほら」
金を渡す。
妖精は首を振る。
「いいんです……私、あなたの役に立てたら、それで……」
ハッとして妖精は頭を下げる。
「失礼します」
バタバタと出て行った。
金を受け取らない妖精なんて、
初めてだった。
そして、最初で最後だった。
ーー
別の日。
また賭博で一儲けした俺は、妖精の店にいた。
あの妖精がちょくちょく視線を送ってきていることはわかっていた。
けど、俺は指名しなかった。
来る日も来る日も、指名しない。
他の客にも言ってんだろうし。
気にすることない。
そう思っていた。
なのに、
気づくと視線を探していた。
いつも通り、
俺を見ているのがわかると。
ホッとしている自分がいた。




