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同僚と妖精(騎士編)⑤ 流されない

元同僚は立ち上がった。


「帰ります」


「ヤっていかねぇの?」


先輩が笑う。


「これからだぜ?」


元同僚の視界の端で、


騎士がズボンを下ろす。


妖精が膝をつく。


元同僚は目を逸らした。


「いいっす」


元同僚は振り返らなかった。


これ以上いたら、流される。


だから逃げ出した。


廊下に出る。


夜の空気が少し冷たい。


元同僚はそのまま道場へ向かった。


木剣を手に取る。


振る。


一度。


もう一度。


何度も。


さっきの光景が頭に浮かぶ。


妖精。


白い足。


甘い香り。


元同僚は強く剣を振った。


(あのまま部屋にいたら……)


一瞬、想像しかける。


「考えるな!」


剣を振る。


「クソ!」


もう一度、振る。


『お前になら……触られてもいい』


妖精の言葉がよみがえる。


『試してみる?』


元同僚の手が止まる。


本当は、あのとき。


(ヤりたかったのか?)


妖精なら、好き勝手抱いてもいい?


そういう存在だから?


「違う」


剣を振る。


「違う」


「違う違う違う」


木剣の音が、夜の道場に響いた。


ーー


翌朝。


騎士達は昨夜の妖精の話で盛り上がっていた。


「何回もヤっちった」


「マジで? ゴムあり?」


「生で中出し」


「すげぇ」


聞きたくなかった。


聞こえてしまう。


元同僚は黙って剣を握り直した。


先輩が肩を叩く。


「また来いよ」


「毎月呼んでるから」


毎月。


元同僚の胸が重くなる。


村でも、飲み会のあとに妖精の店へ行くのは普通だった。


騎士団も同じだとは思わなかった。


「ありがとうございます」


元同僚は作り笑いを浮かべた。


金のためだ。

このくらいどうってことない。


そう思うのに。


『人間に抱かれるのは、慣れてる』


そう言って、

無理に笑おうとしていた妖精の顔が浮かぶ。


頭から離れなかった。


ーー


それから。


先輩とは距離を置くことにした。


少しだけ飲んだら、部屋を出る。


妖精遊びには関わらない。


「ヤりたくなったら来いよ」


先輩の好意はありがたい。


でも、納得はできなかった。


数ヶ月後。


廊下を歩いていると、

毎月寮に呼ばれている妖精とすれ違った。


甘い香り。


短いスカートが揺れる。

少し動けば下着が見えそうだった。


妖精は元同僚を見ると、

小さく会釈した。


それから、

先輩の部屋へ小走りで入っていく。


(……アイツ何してんのかな)


思い出す。


(体売ってたりしてねぇよな)


村へ帰る日が、近づいていた。

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