同僚と妖精(騎士編)④ 同じになりたくない
騎士団の訓練は甘くなかった。
朝は早い。
起床。
ランニング。
訓練。
昼飯の準備。
短い休憩。
午後の訓練。
道具の手入れ。
清掃。
それでも。
剣の腕が立つ者が大勢いた。
模擬戦を見るたび、胸が高鳴る。
元同僚はワクワクしていた。
木剣がぶつかる音。
速い。
強い。
元同僚は思わず笑っていた。
(すげぇ……)
強いのに、偉ぶらない。
気さくな先輩だった。
(こんな男がいるんだ)
初めて出会う、理想の男。
(こんな風に俺もなりたい)
騎士団に入って数週間は、
そんな風に思っていた。
あの日までは。
ーー
「今日夜暇か?」
「え?」
「妖精呼ぶんだよ」
「妖精?」
「寮にな」
先輩が笑う。
「外じゃ騒げねぇだろ」
少し声を落とす。
「溜まってんだろ?」
「新人は最初ビビるけど」
「一回やるとハマるぞ」
元同僚は肩をすくめる。
「いいっす」
「そーゆーの、興味ないんで」
先輩は引き下がらない。
「まあまあ、いいから来いよ」
先輩が笑う。
「いいから来いって」
元同僚は少しだけ迷う。
……妖精。
断りきれなかった。
夜。
先輩の部屋。
扉を開けると、
騎士団の仲間が数人。
酒。
笑い声。
そして。
一人の妖精。
綺麗だった。
白い肌。
細い体。
長い耳。
元同僚は思わず見惚れる。
……似てる。
妖精が先輩の横に座る。
先輩は自然に肩を抱き寄せた。
「突っ立ってないで、座れよ」
元同僚は先輩の近くに腰を下ろす。
視界に、妖精が入る。
薄い服だった。
動くたび、布が揺れる。
足を少し組み替える。
その瞬間。
太ももの奥が、ちらりと見えそうになる。
元同僚は思わず目を逸らした。
先輩が何やら妖精に耳打ちする。
妖精が小さくうなずいた。
しばらくして、酒を持ってくる。
元同僚の前に差し出した。
「どうぞ」
元同僚は少し戸惑う。
「……どーも」
妖精はにこっと笑った。
酒が進んでくると、騎士たちの声も大きくなっていった。
悪酔いした騎士が、妖精に絡み始める。
肩を抱く。
腰に手を回す。
笑いながら、頬にキスをする。
騎士が笑いながら、妖精のスカートを少し持ち上げる。
白い足。
その奥が、ちらりと見えた。
元同僚の胸が一瞬ざわつく。
……何反応してんだ、俺は。
元同僚は顔をしかめる。
自分に腹が立った。
騎士たちは笑った。
妖精は恥じらうように肩をすくめる。
でも、拒否はしない。
キスも、
身体に触れる手も、
そのまま受け入れていた。
元同僚は酒をあおる。
目を逸らす。
妖精が元同僚のコップに酒を注ぐ。
身をかがめた拍子に、
胸元がちらりと見えた。
元同僚は目を逸らす。
そのとき。
甘い香りがした。
ぐらっと、一瞬理性が揺れる。
この妖精は、アイツじゃない。
何したって、関係ない。
俺だって男だ。
欲くらい、普通にある。
けど。
『妖精ってさ』
『綺麗だし、サービスいいし、優しいし』
『金払えば文句言わねぇしな』
昔の職場の先輩達の声が、頭に浮かぶ。
元同僚は顔をしかめる。
同じになりたくない。
やがて。
騎士の行為がエスカレートする。
薄い服の上から、
妖精の胸を弄り始めた。
妖精はされるがまま。
「あ……あっ……」
甘い声が上がる。
キスをする。
チュ、チュッと生々しい音が部屋に響いた。




