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第18話 しばしの別れ

 あれから一週間がたった。


 アンデッド軍団を討伐した僕らは都市の復興作業を行っており、ようやく一通り完了させた。


 いくつもの家屋や施設が破壊され、怪我人も多数出たものの、死者はゼロなのは奇跡としか言いようがなかった。


 とはいえ、決して傷痕は浅くなく、いまだに生々しく残っている。

 そこら辺はこれからも地道に修繕していくしかない。


「もう行かれるのですか?」

「うん。もうこの街でできる事はないからね」


  村行きの馬車に見送りに来てくれていたシスカは名残惜し気にしている。


 でも、敵の討伐に復興の手伝い、僕らが出来る事は一通りやった。


 最後まで手伝いたいという気持ちもあったけど、後はリズベルたちに任せよう。


 何度も叱っても、サボろうとしてたけど。


「あの冒険者の子なら大丈夫です。しっかりしつけておきます」

「え。ああ、うん」


 何故だろう。

 シスカの笑みにうすら寒さを感じたけど、気のせいだよね。


「それにしても、我々はまたあなたに救われてしまいましたね。あの。ラッシュ、あなたは……」

「もう王都に未練はないよ」


 切り出そうとしたシスカに先んじて僕はそう返した。

 元々はこちらの方が身軽で性に合っているのだ。


「……そうですか。私はずっとあなたが戻ってくる場所を作ろうと躍起になっていました。でも、今となってはそれも必要ないのでしょうね」


 どこか寂し気に微笑むシスカに僕はかぶりを振った。


「そんなことはないよ。僕がこうして自由に暮らしていけるのもあなたのおかげだ。あなたが続けてくれた事は無駄なんかじゃない」


 孤児院の皆もちゃんと報奨金を貰い、今でも平和に暮らせている。

 これは彼女がナフシア姫や貴族たちが余計な事をしないように、彼らにらみを利かせてくれたおかげだろう。


 むしろ彼女の力になれていない僕の方こそ情けない限りだ。


「その言葉だけで報われた気持ちになりますわ。これからもあなたの想いに応えられるように私も一層に励みます」

「それはこちらも同じだよ。僕は戦う事しかできないけど、それでも必要ならいつでも呼んでほしい」

「……そうですね。ならば、これからも色々と進めねばなりませんし、その時は少しばかり力を借りる事になるかもしれません。お願いしますわ。――あのクソ貴族共を片付けるためにも」


 涙ぐみながらも、朗らかに微笑むシスカ。


 あれ、最後に不穏なワードがよぎった気がしたけれど気のせいかな?


 ――邪魔な貴族連中を追い出すという名目なら対立してる教会内の派閥も味方に――そうすればいよいよ復興を名目にいつでも来れるように街道整備――宿泊施設が充実しても違和感ないように村の方そのものの発展――


 何だかブツブツ言っている。な、なるほど。

 既にこの街の復興だけでなく、この地域一帯の発展に向けて色々と展望を向けているようだ。

 彼女ほどの才女ともなれば、僕なんか及びもつかない深い考えがあるのだろう。

 僕も見習おう。


「それでは、またしばしの別れです」


 シスカはこちらの手を掴む。さらには潤んだ目で見つめてくる。

 言うまでもなく、彼女は美人なので、思わずこちらもドキリとしてしまう。


「おぉーい。まだ話し込んでいるのか? さすがに長いぞ」


 そこへ馬車の荷車からひょっこりとヴェロニカが首を出す。

 一気に空気が壊されて、残念な気持ちと少しばかりの安堵がない交ぜになる。


 対して、シスカの方はさっきとは打って変わって冷たい視線をヴェロニカへ送る。


「まだいたんですかトカゲ女。どうせ飛べるのでしょうから、さっさと先に帰って結構ですよ?」

「おうおう、私に救われたくせにいい度胸だな。聖女様よ」


 睨み合う二人。

 いつの間にか仲がさらに険悪になっている。


「先の戦いで助けてくれた事。そこは素直にお礼を言います。ですが私はいまだにあなたを信用していません。この竜の力は私が預かっておきますからね?」

「脅しのつもりか? そもそも貴様の信なんぞいるか。一から鍛え直してみるのも面白いと思っていた所だ。その力はくれてやる、好きに使え。もっとも貴様のような小娘では、扱いきれずに宝の持ち腐れだろうがな」

「は?」

「あ?」


 両者の間にバチバチと火花が舞い散る。


 ……あの二人共、本当に仲良くしてくれませんか?


 しばらくの間、緊迫した空気を漂わせていた彼女たちだが、やがて気が済んだのか、互いに視線を切り、僕はほっと胸を撫で下ろす。


「――それではまたいずれ会いましょう」


 馬車に乗る際に、後ろから送られるシスカの言葉。

 揺られながら、今度は僕が窓から身を乗り出し、彼女の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

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