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願いを咲かす その2





オーシャンビューのパーティルームは音楽と光で溢れている。昼の海は輝き、どこかにある太陽がソファに仰向けで倒れている秋葉を優しく包む。あの撮影会の後だから私たちは制服のままでなんか変な感じだ。彼女は乱暴にブレザーを脱ぎ、付いていたリボンを片手で解いて床に放り投げ、白いシャツをスカートから全部出し、ボタンを3つ外して『まぁはしたない、おパンツ見えてるわよ?』と私が言うと「うるさい……」なんて寝たままテーブルに手を伸ばす。GODIVAのチョコを取れるだけ引ったくり、ガサガサと一度に3個口に入れてリスみたいになった。



哀れな新品のローファーがひっくり返ってるからきちんと揃えておく。葉子は向こうの方でヒゲの生えたイルカと社交ダンスをしたりみんなに胴上げされたり、部屋のあちこちを回っていつでも楽しそうだ。私は隣に座るあおいとプチケーキを食べ、一緒にソファから後ろを向いて輝く海を見た。うん、あおいと海と風がよく似合う。



葉子が好きになるのはすごく良く分かるな。とにかく彼女は透明感があって、声も同じく透き通っていて。そして、たとえ何も話していなくてもそこにいるだけで癒されるからこれはまあ、誰でも好きになるやつ。「あっ丹海さん!やっと雲が見えましたよ!」とか元気で無邪気なのもウケが良すぎて、あおいはモテたよね?って聞いたら「へっ!?」なんて反応、マンガのヒロインなの?



みんなに好き好きされてたでしょ?と聞いたら「あ、私女子高だったんですけど、好きって言われたことありますよっ!」ほう、詳しく聞きたい。



「部活の後輩とかクラスの子に何回か告白されちゃいました。でも……はっきり言ってそういうの疎いんです。だから『私、恋とか全然理解してないのでまだまだダメで。ごめんなさいっ!それが分かるまで勉強したいんです!私、極めるまで、最強になるまで頑張るのでっ!』ってお断りしてました。今振り返ると私、何言ってるのかよく分からないですけどっ」



乙女話だと思ったら急に少年マンガの第一話が始まる。秋葉と同じく口からジュースをこぼしかけた。……そ、そのクセの強いフリ方なに?独特すぎる。……ちょっと!魂の創生に「天然」と「ストイック」は混ぜちゃいけないですよっ!

 


「そのあとは声優のお勉強やお仕事で忙しくなったので……青春のようなものはほとんどやっていませんね。……だから今、楽しいんですよっ、葉子さんも丹海さんもここあさんもいて、みんなでいつも面白くて♪」



そっか……私もね、実は恋愛とかあまりよく分からないんだよ、って打ち明けたら「そうなんですかっ!?」って激しくボールが返ってきた。「丹海さんは恋愛マスターじゃないんですかっ?皆さんと契りを交わす親愛なる聖なるお姉様ですよねっ?」



えぇ…………なんか専門用語な世界観が混ざってる気がするけど、ち、違うよ全然!みんなに告白されても意味が分からないってずっと思ってたから……と話したら「そ、そうなんですね。すっかり忘れてましたけど、私、ずっとそういう気持ちについて知りたくて、これまで声優とか……色々と活動していたんですよね、たぶん」とあいまいに振り返っていて。



「特に葉子さん……HISUI姫に出会ってから『好き』というものが少し分かった気がして。本当に感謝しているんです、永遠の憧れなんですっ。」


 

それから風の中、ソファに乗せる腕に顔をつけながらこちらを見て。

 


「でも、不思議ですね。丹海さんといると心が嬉しくなりますっ。ドキドキもしますしっ。よく分からないですけど……こういうのが恋なんですかね?……ふふっ♪」



……おいおい、そんなこと言って。抱きしめていいのかな?ってふざけて聞いたらあおいも葉子ジュースでだんだんアガって来ているのか、え〜?いいですよ?と笑うからじゃあこっち向いて?とお願いして、優しくハグしようと思ったら向こうから突撃するように突っ込んできたので、よく知らないけど恋人同士でする抱きつきをしてしまった気がする。



えっ?あおいの香り…………ときめいちゃうローズみたいな……………素敵っ、おとぎ話の中にしか咲いてない特別に甘いバラって感じ………………って、おっぱい大きいな。おもむろに肩を揉んであげたら「えっ?どうしたんですかっ?」と不思議そうに聞くから『あおいも、凝るでしょ?』なんてことを意味深にヒソヒソしたら赤くなったけど「そ、そうですね……」と意外に受け答えてくれたので思い切って『あおいは…………いくつ?私はEだよ。』ってささやいたら私のこのノリに慣れたのか、恥じらいながら私の耳に両手を添えて、



『……………私は、Fですよっ。』


 

うわっ…………いい声。そしてもちろんエッチだ。ちゃんと答えてくれる〜あおいかわいい〜優しい〜好きぃ〜♡ってもう一回ハグしたら彼女もハグして、そこに葉子も混ざってきてあおいが叫んだ。



「何してんのっ?ねっ!みんなでお着替えしよ〜っ?」

 


危なっ……聞かれたらイルカのエサになるところだった。葉子は数色のTシャツとルームパンツを創生し、私たちに渡してきて「好きなの選んで〜?あとさ〜なんかSwitchでゲームしよ〜?」と誘ってきた。あおいは「いいですねっ!」とアガっている。葉子が広いバルコニーに白いシャボン玉の空間を創生したからそこで着替えるため、ソファで横になったままの秋葉を呼ぶことにする。



外はスッと夜になり、海は変わらず静かだ。照明を落としたパーティルームにはレーザービームや創生した花火が舞い。そしてピンクや紫のライトが、気だるく着崩して横たわっている秋葉の上を何度も通過していく様はエッチでしかない。私は知らないけどそういう場所じゃないからここは………ね?パーティーしよ?って起こしたら「いかがわしい丹海……一番人気。」ってまた出たよそれ、名言?と聞くと「さすがに違う……」とか自分で笑ってるから何なんだ。しかも酷いな。



全員ルームウェアみたいな格好に着替えたところで葉子はソファの前のテーブルに大きいテレビを創り、ニンテンドーSwitch2を設置してコントローラーを手渡す。ハンチング帽を被ったイルカさんがみんなのグラスに葉子ジュースを注いでくれたのでありがとうと言って『かんぱーい♡』する。うっ………何だかどんどん気分が良い。これは限界というか飲み過ぎというものが絶対あると思うので気をつけなければ…………もう遅い気がするけど。



私さ〜そんなにアクションっぽいゲームとかやらないというか全然できなくてダメなんだよね……って話すと「じゃあテトリスやるっ?あおちゃんすごいんだよ!」と葉子が興奮して腕に抱きついてあおいはまた叫んでいる。え!そうなんだ!見たい見たい!ということで腕自慢のイルカさんを募集すると若い方ができます!っていうので対戦をすることになった。


  

「そっそんな!私!強くないですよっ?」とメガネをかける時点で怪しい。猛者の香りがする。すると開始直後から表情がガチになり、次から次にブロックを隙間なく構築して若イルカを一瞬で〈強すぎエグいキュ〜!〉とテーブルに撃沈させた。



次にやりたい!という子どもイルカにも全く容赦ない。開始の瞬間から顔が変わり……とにかくブロックを落下させるスピードが速すぎて、ボタンが壊れているのかな?と思って手元を覗くとそうではない、すご……どうなってるの?とか言ってたら終わった。



「ご、ごめんなさいっ!!つい夢中になっちゃいましたっ!!」



「あははっ!!あおちゃんすごいから泣いちゃいそうだよ?ごめんね〜?」



葉子はかなり目が潤んでいる子どもイルカを撫でて、大きな『プケットモンスター』のお菓子の詰め合わせをあげると彼は少し明るくなって〈おねえさん強いね。〉ってあおいに握手を求めた。かわいい♡



『プロのゲーマーなの?このあおいさんは……』気になって秋葉に聞くと「知らない。得意分野……に関してでもそうでなくても、彼女は集中力高い…………けれど時々、力の加減ができない。以前、肩を揉んでもらったら逆に筋肉痛…………ザコ敵を最強魔法で狩る全力プリンセス…………ポテンシャルが高いけど暴発する…………ブレーキとハンドルを置き去り…………」…………い、いや、わけが分からないけど、危なっ、私も肩を揉まれるところだったわ。



その後は誰も参加者が出て来ないので、あおいにハンデありで秋葉が対戦することになった。「負けたらジュース飲んで、勝った側からリクエストされたモノマネをやってもらうよ!スタート!」といきなり葉子が言うので2人共焦ってたけど段々と一方的になってきて秋葉はすぐ負けた。つ、強すぎる………



秋葉がジュースを一気飲みすると「私、ここあさんのHISUI姫が見たいですっ!」ってあおいのリクエストが来たから、アガってきた彼女がソファに立ちマイクを持ったフリで朗々と話し出す。



『……有難うございます皆さんっ。パーティ楽しんでいますか?私も……今日がとても楽しみでした、すごく……すごく嬉しいです。短い時間ですけれども、素敵なひととき……盛り上がっていきましょう!』



「はぁっ♡姫っ………………」



「ちょっと!こんなの違うもんっ!にせものだから!」


 

え…………本人だが?改めて思うけどやっぱり声は同じだよね。テンションと言葉遣いと表情を組み合わせれば成りすましだって可能なレベルだ。ついでに秋葉は自分で面白くなったのか、なぜかカントリー・ロードを歌いはじめてみんなをハッとさせる。きれいだ、発声はもちろんプロじゃないと思うけどふつうに上手いよね。



盛り上がるイルカさんを尻目に葉子は「やだやだっ!!」なんて赤くなっている。確かに、自分とそっくりな存在が違うキャラを目の前でやってたら違和感とくすぐったさで死んじゃいそうだ。新現実になってから秋葉はいつもこれにある意味耐えていたでしょうし、これからもそうやっていくのだから本当に尊敬だよ、すごいよ。



みんなの拍手でソファのステージから下りると秋葉は少しバランスを崩しながら私に雪崩れ込んできて「きゃ〜♡」とかあおいに言われ。うわ、顔がかなりピンクじゃん、秋葉、飲みすぎじゃない?と、おでこに手を当てたら「大丈夫……」などとつぶやき、がしっと手首をつかまれ、肩に頭を乗せられ「はぁ……♡新婚素敵……♡」って違うが?



やはり飲みすぎは危険だ。お水を持ってきてもらって飲む?と聞くと「飲ませて……」なんて言うから秋葉の頭を私の肩からソファに戻し、グラスを口元につけて静かに傾けていく。お酒とか飲みすぎたらこんな風になっちゃうのかな?恐ろしいものを開発してしまった気がする。



あおいとのテトリス対決に負けた葉子が「リクエストで、ここちゃんのマネしま〜す!」と発表し『……あおいさん、可愛い………すごく可愛い………あったかい…………柔らかい………いいにおい……』と、本人にそっくりすぎる声で喋るから思わずそっちを見たらブフッ!って秋葉が水をこぼした。



「よ、葉子さんっ!もうっ!」あおいは何かを思い出したのか急発熱して「あ、これは酔ってるここちゃんでした〜間違えちゃったごめんね〜♡」と舌を出して謝ってるところを秋葉が捕まえようとしたからソファから後ろのバルコニーに逃げて2人して激しい鬼ごっこを始めた。すっかり酔いみたいの覚めたじゃん、葉子、わざと言ったな。良い奴なのか何なのか。



くたくたになった秋葉はまたソファで横になる。私とあおいとの対決はどう考えても無理なので葉子とすることになり。彼女も酔っているのか適当にブロックを積んで遊んでいる感じで、でも僅差で私が負けてしまったからジュースを全部飲み、葉子のリクエスト『あおいのモノマネ』をやったら「似てますよ丹海さん!」「すご〜い♡」と意外にも盛り上がった。このジュースに真似る力があるのだとは思うけど、嬉しい。



「ねぇ〜あおちゃんが絶対言わないこと言ってみて〜?」



無茶振りきた!なので、喉に手を当ててから『わ、わたし!美しさなら誰にも負けませんっ!!』などという絶対に怒られることを本人の前で披露しましたら「もう丹海さんっ!恥ずかしいですっ!」とTシャツの袖をぐいぐい引っ張られた、いや可愛いだろ。


 

「え〜お願い、私に告って告って〜♡」という追加のお願いにもお応えして『葉子さんっ!好き好きっ♡』とすり寄ると「私も好き〜♡」ってなって、見ているあおいが恥ずかしの極みで壊れそうだったので「あおちゃん!パフェ食べるっ?」なんて葉子が声をかける。その瞬間に彼女はすべてを吹っ飛ばして瞳を輝かせたから私は笑いをこらえた。


 

DJブースの隣に葉子がスイーツコーナーを創生した。コック帽を被った女性らしきパティシエイルカは〈お好きなものをお申し付けくださいっ♪〉と私たちに微笑みかける。ガラスのショーケースにはマカロンとか色とりどりの創作ケーキがずらっと並んでいてあおいと歓喜し「全種類いいですかっ?!」とお願いすると〈もちろん♪席までお運びいたしますっ♪〉葉子が特別に頼んだ巨大いちごパフェも乗せられた水色のガラスケースワゴンがガラガラと到着するとすぐに秋葉が起きて目を丸くした。



撤去されたテレビの後にドンっ!とテーブルに置かれた縦1m横80cmスイーツの上部には青い筒のようなものが刺してあり、パティシエに言われた通り私がそのそばで手をかざすとボフっ!!と空中に光が打ち上げられ天井でパンっ!!ってイルカの形に広がる。クリアブルーとシルバーの甘くてキラキラした霧が歓声と共にパーティルームを包んだ。うわ幻想的………



パフェもそうだけど頂いた専用スプーンがとても大きくて、それで掘削するようにクリームとスポンジとフルーツをすくって、食べて〜?って3人であ〜んしてたら口がサンタクロースになったけど照明が暗くてアガってて葉子もあおいも気にしておらず、どんどん掘り進めて出てくるものに驚いて笑っている。

気がつけば、秋葉が私を隣でじっと見てたから「夜のパーティライトに照らされた丹海、エッチ。」ってセリフを予言してみたら「自分で言ってる…………」と笑われ、指で私の顔のクリームを何回も取ってニコニコ舐めた。酔ってるの?


 

大きなスプーンでパフェの中の青いバニラアイスを秋葉にあげると「プリンもほしい……」って言うから白いぷるぷるなのをすくって食べさせると葉子達の「かわいい〜♡」が始まって。微妙に恥ずかしくなったので、あと自分で食べなよ……と言うと「やだっ、まだ食べたい〜」などと腕をつかんで子どもみたいにごねりはじめたから口封じに近くにあったマカロンを押しこんでたら「あははっ!おしゃぶりみたい〜♡」って笑われても反応せず私の肩をスリスリして「ん〜」とかやり始めるから困った。あおいが大興奮して写真を撮ろうと近くに寄ると今度は彼女の首に手を回して「いいにおい……」っておいおい、美女の大暴走だよ。



「こっここあさんっ!!起きてっ!!」あおいが必死に背中を叩くと「やわらかい……」って言い出したから彼女はイチゴよりも真っ赤になって固まった。「ちょっとここちゃん?またエッチになっちゃった?しょうがないなぁ♪」と葉子がにっこり近づいてあおいと秋葉ごとハグをすると、猫みたいにバッと離れて私にしがみつきながら葉子を睨んだ。彼女は天敵か何か?



「ここちゃんにぴったりなケーキがあるよ!はい!」



テーブルに並べられたスイーツラインナップの中で一口サイズの黄色いキューブ状に創られたおしゃれなケーキがお皿に6つ並べてあり、葉子はそのうち一つを食べてから私たちにも勧めた。秋葉があ〜んって言うから仕方なくフォークで刺して口に運ぶと「!!」って一瞬彼女の身体が震えて目をパチパチさせたから、私も食べたら感電みたいな感覚があった後に何だか疲れが取れて元気になった。味は栄養ドリンクだったから、多分そういうケーキなのだろう。



他にも見たことも食べたこともないスイーツばかりだ。透明なカップに入った茶色のムースはチョコレートだろうと思ってスプーンですくったら濃いピンクのマンゴー味に変わったり、マシュマロで作られた宝船に金銀のチョコレートが積まれていて、一粒食べようとしたらガイコツの船員にビスケットの剣を振られたからみんなで爆笑して、ごめんね?って外の船からちぎって食べたら慌ててテーブルの下へ走り去った。



リアルでかわいいイルカの姿のケーキは子どもが好きそうだ。秋葉にあげると「豆乳クリーム………美味しい。」と高評価をした。あおいは幸せそうに何層にも色が重なっているレインボーゼリーを葉子と上からつついている。秋葉もスイーツコーナーを見たいというから一緒に向かった。みんないつまでもお喋りに夢中だ。私もすごく楽しい。



DJイルカはレーザービームが飛び交う中、葉子ジュースを片手にスマイルをしてきたからどうも、と私は会釈をする。夢のようなスイーツショーケースを上から下まで眺めて秋葉は喜び、それから2人で辺りを見渡すといつの間に小さなバーコーナーが創生されていて、渋い顔のイルカさんが手元でリズム良くシェイクしてからカクテルみたいなものを前へ差し出すとウインクしながらこちらに手招きをした。



〈この気分の上がる、特別なジュースでオリジナルドリンクを創ったよ。ちょっと飲んでみてくれないかい?〉 


  

逆三角形のグラスにはブロンズに輝く液体が満たされていて。……秋葉、飲んじゃって大丈夫?ってかなり心配をしていると「葉子ジュースは……創生力を補助しているだけ。酔ったと思えば酔っていくから、意志が必要。もう大丈夫。」ということらしいので、せっかくだから頂くことにする。



……おう、個性があるけど馴染み深い味。これは……アジアなジンジャーエールだ。素敵です、って小柄なマスターに伝えると嬉しそうにうなづき〈ゆっくりして下さい。〉と静かに台から下りて棚の下にある扉の向こうへ消えた。美味しいねって秋葉を見つめて、うん……と彼女もこちらを見て、視線がしばらく合ったまま数秒経ったら「見すぎ…………」なんて、どっちがだよ!



「顔、近い………席、近い…………」



みたいのがまた始まった。……私、これくらいはふつうだよ?学校の友達と話す時もそうだったし……というか、秋葉こそ距離感おかしい時はおかしいよ、告白の…………それは言いかけてやめた。


 

暗闇の中、オレンジのアンティークなランプが木のカウンターをほんのり照らして、カクテルグラスを持ち上げて確かめる秋葉を見て、似合うな……と惚けてたら「また……見すぎ……エッチ。」……も〜それ言わなければオトナなお姉さんなのに〜とコメントしたら「おとな………」とつぶやく。



『私……秋葉みたいにオトナな人になりたいな?』



ふざけてささやいたら「丹海は……おとなだよ。」と、意外にもまともに返され。「私は…………憧れてる。丹海はすごいから。」なんて、不意に言われると困る。ごまかすように『秋葉は……私になりたい?』とか、とりあえず聞いてみると「うん、モテまくりのエッチなおとなになる………」っておいっ。


 

秋葉は……すごく独特の雰囲気があって、それで言うと私より十分オトナだしエッチだよ……?とよく分からないトークになってきたけど「うん、ありがとう………」って彼女の様子も変だ。あれ?私たち酔ってるのか?薄暗い中、気分がふわふわしてたら



『………眠くなっちゃった?夜はここから……だよ?』



って……ふわぁっ!葉子がいつの間に隣で微笑んでるから変な声出そうになった。こちらを見る怪しげな目がセクシィーすぎっ!


 

「ねぇ、ここにゴミがついてるよ……?」



耳のあたりを触られてあおいみたいにひゃっ!となる。そういえば彼女は……と気になったら、大勢のイルカさん達と巨大ケーキにシュガーな飾りものを乗っけていた。秋葉は、ぼんやりしながらカウンターに向かって何かを呟いている。右を見ていたその顔を優しく手で向き直されて、私は秋葉よりも長い秒数を葉子と見つめ合う。……秋葉と違い、全く動じていない。さすがだ……と思っていたら



「はぁ………可愛いっ♡美少女に見つめられてやっぱり照れちゃう♡」



って何なんだ。部屋が薄暗くて良かった、私は完全に赤くなっている。静かにマスターが扉からやってきて葉子に同じドリンクを創る。ああ……ドラマの中にいるみたいだ、物憂い気に頬杖をついて目を閉じて。私もこんな風にオトナに、なりたいな……そう思いを馳せながら彼女を眺めていたら「にゅ〜、ごめんね?勝手に覗いちゃって。」といきなり小さい子みたいにシュンとするから落差にドキッとしちゃうんだが。



「……ここちゃんね、いっつも、にゅ〜のこと可愛い、可愛いって言ってて。でも、もっと話しかけなくていいの?遊ばなくていいの?って聞いたらなんにも答えてくれなくなっちゃって。ずっと気になってたんだ。だから、にゅ〜がうちに来たときはすごく嬉しかった。あれから、仲良くなれたんだねって。それで、どんな風にともだちになれたの?って、すごく気になっちゃってさ………ごめんね、ありがとね?」



軽くハグされたので、い、いや、大丈夫。私も思い出の、あの頃の学校に戻れて楽しかったよ……と言うと手を握って『にゅ〜は優しいね………本当に、大好きだよ。』な〜んて。もう〜そうやってすぐ告白する〜とか言いつつ残ってたドリンクをぐいっと全部飲むと、あははっと笑い「あのね?」って、もう一度私のことを見つめ直して。



「だから、にゅ〜がやりたいこと、何でも叶えたいんだ。私からお礼がしたいよ。」



今度はキリッとした表情で、さらっと髪を撫でられた。……いや、この気合い入った顔、超絶かっこいいんですけど。この距離からまともに見つめ返せないよ…………というかそんな、お礼とかされるようなことしてないし、何でも叶えるってなに?



いや〜お願いとか何も思い浮かばないけど………と伝えたら『はぁ、にゅ〜には欲がないなぁ。」ってやれやれ顔をされた。あ〜その困ってるのも美しいですっ♡



『……ここあにもね、何でもお願いして良いんだよ?何でも、聞いてくれるんだから♡』



耳元でささやかれたけど何のことだかよく分からず。はぁ〜ん可愛い♡なんてなでなでされてたら、そうだ、気になることがあった、と一つ聞いてみた。

……あ、あの、葉子はさ、高校生の時すごいモテたでしょ?と突撃インタビューをしたら「え〜?それがお願い?」って聞いてくるからそうだね、知りたいよと答えると自分の胸に手を当てて光の玉を取り出して…………なんの魔法です?



それを「じゃあこれよろしく〜♪」とマスターに渡してお願いすると、何種類かのボトルドリンクと混ぜて強くシェイクして、私と葉子の前に薄い乳白色に満たされたグラスが差し出される。

 


「はい、かんぱ〜い♡」



わけも分からず、か、かんぱ〜いと葉子のノリに合わせ、一口飲む。あ、柔らかい味………リンゴだ。ほんの少しだけ酸味があり………………ん?視界が暗くなったあと、周りの景色が見知らぬ教室に変わった。思ったら、ああっ!制服姿の葉子!これはどういうことっ?って言ったら隣であはは!と爆笑する声がして。



『……面白いね♪あれが私、高校1年生。』



私は今、彼女の記憶を見ているのか…………今と同じだけど美しいなほんとに。めちゃくちゃ盛り上がってるじゃん、すごい!葉子モテモテだったんだね!と言ったら『そんなことないよ。ほら見て、あの顔。ただの孤独な16歳だよ。』



場面が変わり、夕陽の中、屋上に立つ彼女はじっと街を眺めていて。この表情、どこかで………………そうだ、あの、窓辺の秋葉さんだ。いつも何か心に思うことがあって、それが眼差しとして強く表れていて……そっくりだ。


 

『これは私が、モデルやアイドルを始める直前の記憶………ちょっと、恥ずかしいね。いつもここで思ってたんだ、自分はどのくらい、世界に愛を与えることができるのかな?って。この頃はそんなことばかり考えててさ、全然、モテてなんかなかったよ。』


 

……そうなんだね、でもみんなに与えようって気持ち、良く分かるよ。やっぱりすごい、大きいよ葉子は。街じゃなくて、地球を見てたんだね。私は16歳でそんなこと思いもしなかったし……とにかく素晴らしいよ。



『やだな…………照れちゃう。こんなことをこうやって見せるのはにゅ〜が、初めてだから……』と、周りの景色を解いて、私にハグをした。



「お互いに共有……しようね。にゅ〜。」



うん、って私もぎゅっとして、できるマスターイルカさんはスッと〈よかったら、どうぞ。〉と特別なドリンクを差し出した。わぁ……夕陽の輝きと星空の煌めきが2層になってる………きれい…………



さっそくかんぱ〜い♡して飲むと、パッションフルーツとレモンと不思議な爽やかさが口に広がり、ふわっと浮くような素敵な感覚…………………いや、浮いてた。



私たちは地面から少しだけふわふわして、葉子は夜空のパーティールームの中を華麗にムーンウォークするから、私もできないけど真似をして一緒に笑った。イルカさん達は盛り上がり、葉子は私の手を取って社交ダンスをはじめる。



何にも踊れないはずなのに、身体が勝手に動いて。もしかして、魔法使ってる?と聞いたら「いつも使ってるよ?にゅ〜が私を好きになるようにって。今気づいた?」ってニヤって笑う。あおいは動画を撮るけど、それは消してもらいたい。とんでもなくベタなことを言われて赤くなるような自分は嫌なんですって。


 

「にゅ〜、綺麗だよ……お姫様みたい。」



甘い言葉を言われれば言われるほど気持ちがおかしくなるから黙ってたら「何も言ってくれないの?やだな……」なんて子どもになる。それにふっと笑うと「その笑顔で何人オトしてきたの?」って聞くから「そんなことしてないよ」と答えると「じゃあ……私が最初か。……あ、ここあは『自分で落ちた』から違うよ?」とか言われて吹き出しながら耐えてたら葉子も笑うからなんだこれ。



本当に、色んな輝きを持つダイヤモンドみたいだな………踊りながらしばらく眺めていたら「ずっと見てていいよ。私もにゅ〜を見るの幸せだから♡」っていきなりこっちを向くからやめてしまった。秋葉がやるように「み、見ないで……」と目を閉じると「その願いごとは、叶えられないな。」……強い眼差しで拒否をされ。


 

「だって、それは本心じゃない。心から望んでいないものは、叶わないから。」彼女は私の瞳の奥をじっと見て、すべてが見えたようにニコっとした。




『……丹海、何を叶えたいの?』



 

踊りながら笑顔でささやかれて『いや特に何も……』と返して『本当に?』とさらに問われて黙ってたら「何も言ってくれないの……?」とまた子どもになって。



その目で、何人の人をオトしたの?って私が聞いたらまたニヤっとして「私は歌でモテてたから。にゅ〜がはじめてかもね?」なんて……もう、キザすぎるのにまた赤くなってきて。いったん落ち着くために『飲もうよ、あおいも一緒に。』と提案したらふっと微笑んで触れてきて『ほっぺた……熱いよ?』とか…………言われなくても分かるんだ、夜がうまいこと隠してくれると思ったけどね。




 

 


もう足は地面についているんだけど、何だか心は戻らず。


 



最初から、あおいと一緒に魔法をかけられているんだね……と小さくため息をついたら「どうしたの?にゅ〜、こっち来て?」ってそれ……誰かと同じことを言ってるよ?と思わず笑っちゃって。


 

「にゅ〜はほんと、かわいいね……?」とかさ……これ、ずっと続くよね?なんて聞いたら「会話が続くのは……良い相性。丹海、笑顔で周りをオトす……」みたいに誰かのマネをし始めたから「葉子、世界を股にかける………無限股。」って最高に笑わせていたら



「丹海も同じ…………同類項。」



おや、本家の方が目を覚まして何かおっしゃった。さすがですね~と褒めると「やっぱりこの2人……会うべきではなかった」なんて〜ここちゃん酷いな〜?って葉子と左右からくすぐって叫ばせた。あおいはここまで録画してるけど……後で消してもらいたい。



4人でカウンターに並んで座り、それぞれがマスターに素敵な一杯をリクエストする。まだまだ長い夜を楽しもう、次はどんなお喋りしようか。

 


 







 





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