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願いを咲かす その1





あおいに完全に勘違いをされたのち、私が立ち上がってお風呂場へ向かおうとしたら秋葉もついて来る。来ないでよエッチ、と彼女の真似をすると先に走り込んで行こうとしたからさせぬ、なんてまた服を引っ張り合いながら脱衣所のドアを押したり引いたりして攻防戦をしたあと、さっと無視をして服を脱いでお風呂へ入った。


 

…………と、思ったら固まる。くつろぎの石湯空間がいつの間にユニットバスへと創生変更されていて。えぇ………狭い。仕方なく簡単に身体と髪を洗い終わり、新仕様に驚いている秋葉にその場を譲って浴槽のフタを開けたら………………モ、モコモコで満ちている……………………



私は泡風呂に入ったことがない。恐る恐る足から入れていくと、ザワザワとした音と共に微かにこそばゆい感覚があって落ち着かず。でもこの、消えない泡は面白いな……とか思いつつ触って眺めていたら秋葉が入ってきたから、私出るよ、と言ったところで肩を押さえられて「一緒に入ろ?」ってニコっと微笑む。このムッツリおじさんめ。



じぃっと見てくるから、何ですか?と尋ねると「泡がついてる丹海は……とんでもなくエッチ。めちゃ売れ写真集。」などという本家直々のお言葉を頂き、それはどうも……はぁ……って珍しくため息が漏れ出て。どうしたの?丹海、こっち来て?と言われましてもねぇ、これは……えーと……親友、なんですか?秋葉さん?って聞くと「……もちろん親友。…………エッチな親友。」なんて言うから泡が吹き飛ぶほど笑ってしまった。



……モコモコバブルの浴槽に2人して寄りかかって……手なんか絡めちゃって……私たち何してるんですかね?これをあおいや葉子に見せて『親友です。』って言える自信が私にはないよ……と、つぶやくと泡の似合う美人が後ろで「言葉は後から生まれた……定義に溺れる必要はない……」そうつぶやき返して来たけどよく分からない。



親友でも、色んな種類の親友がいるから細かく考えるなってこと?なんて聞いてみたら「現代は………細分化し過ぎている…………愛でおおらかにまとめなくてはいけない…………」うん、愛ねぇ…………私にはよく分からな……ちょっと!耳を触るなっ、と言いたいけど背中に秋葉の胸の感触もあり。

「あったかい……」ってまた真似をしてみたら「やめて……」などと言いながらちゃっかり私の胸も触られたので、はいっ完全にセクハラですっ!って泡を顔にぶつけたりぶつけられたらお風呂場が大爆発したみたいになった。



脱衣所にて、私たちはじゃあ……エッチな親友ということで合ってるね?と確認すると「そう。丹海だけ。」ってふざけたことを言うので下着姿で迫ったら赤くなって謝罪された。なぜ裸の時より恥ずかしがっているのか?人間というのは分からない、不思議なんだ。




さて、とっくに時間は経っただろうと鍋を確認すると…………琥珀色で、底にゴールドの光の粒が細かく輝いて。わおっ!マジカル☆



それをキッチンに置き、そして積もり積もって『誤解のミルフィーユ』を創作させてしまったあおいの部屋へと向かう。私たちの部屋のすぐ隣の、明らかに材質の違う黒い金属のドアをノックしても反応がないので、なぜか壁にあるインターフォンをピンポーンと押す。家の中でさらにお宅を訪問しているのか……


   

はーいっ!って声がして、ガチャっと開くとメガネのあおいがそこにいた。は〜ん♡似合う〜♡……ん?なんで頬を赤らめているのかな?と思ったらそうだった。……あのね、私たちはちょっとケンカみたいのすることがあって、さっきもそれだったんだよ〜ともだちだしね、ともだちだからね〜?と念押ししても「そ、そうなんですね、はぁ………ともだち………出会い…………抗えない2人の宿命…………」ってなることは分かってたよ…………はぁ…………



秋葉は、何だかじっと中の様子を見渡している。……改めて拝見すると、わあ……すごいゴージャス、黒い大理石の玄関とミニシャンデリアがオトナって感じで。でも、奥の方は芝生のラグやキノコのイスがちょっとだけ見えて、え?……かわいい。



ん?なんか机で大きなパソコンみたいなものがいくつか起動してて……あれは……?みたいに首を伸ばしてたら「わーっ!見ないでくださいっ!」って手でブロックされた。メガネ……目が悪いの?とか尋ねると「あ!パソコンで作業してる時はつけてますっ!」と言うから作業?って聞くと「あっ!あのっ!えと!秘密ですっ!」なんて言われて、ますます気になっちゃう。 



あおいも合流し、一階の葉子の部屋へ向かった。……つ、ついに有名人の、あのHISUIのプライベートに…………とても興奮する。長い廊下をぎこちなく歩いていった途中に『ようこ』という金のプレートが飾られた白いドアがあり。うわ…………ドキドキする。



どんなお部屋なんだろう?って胸が高鳴っていると、扉の向こうからクラシックか賛美歌みたいなのを美しく歌う声が聴こえる………。と思ったらそこに『♪いいなっ、いいな〜っ、にんげんっていいなっ♪』って人間讃歌が突然混ざって来たから3人共必死に笑いをこらえる。今にも噴きそうな秋葉が静かにドアをノックしたら歌が止まったのでもうこんなの無理だった。



廊下に響き渡る爆笑をしているところにガチャっと勢いよくドアが開いて「にゅ〜♡」ってなぜか私に飛び込んで来て。部屋の入り口の天井から巨大なカマキリのぬいぐるみがぶら下がって揺れていて、あおいがギャア!と恐竜みたいに叫びながら後ずさり「あ!あおちゃんごめんね!にゅ〜、これ私の最新作なの〜!かわいいでしょ〜?」って、こっちに向けなくていいから……と秋葉も引いている。



か、かわいいね……はは…………と一応褒めたら「ありがと〜♡はぁ〜ん笑顔〜いつ見ても可愛い〜♡国民的美少女ひとりじめしちゃう♡」といつも通りスリスリされ「そうそう!にゅ〜が好きそうなの買ってきたよ!ねぇ、私が留守な間に寂しくなかった……?」って髪をさらさらされ優しく頬を指で撫でられ……あ〜ん葉子マミーに甘えちゃう〜♡



「丹海、回避……低すぎ………全ヒット………」なんてぶつぶつ声が聞こえるけど無視をして、ちらっと部屋の中を見る。あ、おしゃれ、背の高い観葉植物がたくさん…………え?カラフルな超巨大ジグソーパズルが壁にある……オブジェかな?というか、スキーリフトみたいなものがいくつも部屋の中をぐるぐる、喫茶店の天井にあるファンみたいのもぐるぐる回って…………き、気になりすぎる…………



「葉子の部屋、悪趣味………心身に影響出るから見ないほうがいい…………」なんて秋葉が言うと白いサンダルを履きながら「ひどいよ!ここちゃんの部屋のほうが何にもなくて怖いんだからっ!」って怒っている。確かにそうだった、この2人は両極端の関係みたいで本当に面白いな。あおいが廊下でいつまでも震えていたからカマキリは入り口から撤去された。


  

葉子達は都内のスイーツ巡りに行ってきたようだ、高そうで華やかなプチケーキとか、米粉のパンとかベーグルとか、老舗の羊羹に秋葉は興奮して、私は大きな虹色わたがしに心躍って葉子に感謝した。はぁ…………キッチンでペットボトルの水を飲む彼女は秋葉と同じくCMのようで…………いや、出てたのか。写真を撮りたい。



さっそく「ひみつのもの」が煮込まれた魔女鍋をテーブルへドン!と置いた。すご〜い!!って葉子とあおいは喜んで、秋葉は羊皮紙を見せろと要求する。いよいよ恐怖の発表&試飲会か…………と腹をくくる。まあ……大丈夫でしょう、はは………



レシピには『パーティーのための魔法のドリンク』と書かれている。葉子は、どうやらみんなで宴をやりたかったようだ。にゅ〜天才だよっ!と抱きつかれたけど私は上の空で。というのもやはり効果が心配…………でもさ今回は神☆創生者葉子もいるし、平気だね♪って適当冒険気分で小さなグラスに注いで渡した。



「それじゃ、パーティするよ〜?かんぱーいっ♡」



グラスをみんなでカチカチ鳴らしてから飲む。なんか……辛味があるけど身体に良さそうな味で悪くはない…………と思ったら足元からブワブワッ!っと何かの電気みたいのが身体を通り抜けて、まるで『私、今ジェットコースターを乗り終えたばかりなんです!』みたいな最高の感覚が常に巡って来て。アガるぅ〜☆



わ〜い!楽しいね!にゅ〜!って葉子が両手を広げるので、同じくわ〜い!とハグをしに行った。あれ?なんかテンションが同じ…………になるっていうこと?これ?



「この高揚感……つまり葉子ジュースは、飲めば彼女が保持する強力な現実創生能力を一時的に獲得することができるということ………愛と想像力が倍増され、より細かな願いを叶えられる………」



……考察する秋葉の頬が若干ピンクになっている。要するにちょっとお酒を飲むようなものか、いや違うか。葉子はすぐに周りの景色を海の見えるパーティルームへと創生した。20人程度が収まる一室に黄色いコの字型のソファがいくつか用意され、立ち飲みテーブルも置かれて



「ライブの打ち上げだよ〜♡イルカさん募集〜♡」



と呼ぶと、こんにちは〜ってまた不思議なイルカさん達が部屋に泳いでやってきた。今回はアロハイルカ君はいないみたい。参加してくれた彼らのために急遽、葉子ドリンクをジュースで薄めたものをピッチャーに入れて大量に用意する。良かった……と私は安心した。原液はかなり濃すぎて一瞬クラっときたから薄める位が適切だろう、副作用が怖いし。



すぐにそれを持って、複数のイルカさんがみんなのグラスに注いでいく。そして「それでは〜?もう一回かんぱーい♡」と、キラキラ輝く液体をみんなで飲むと〈あ!おいしいこれ!〉とか〈身体が熱くなるぞ!楽しい!〉とかご好評だ。


 

葉子は各テーブルにパーティオードブルを創生し、賑やかな空気の中で花火が飛んだり光が舞ったり、イルカさんたちは楽しいお喋りと夢実現のエフェクトに夢中になっている。

私もあおいと大きな虹色わたがしを楽しんで、食べた味の色を空気中に具現化した。ラムネ味を食べたらその気持ちをイメージして手から放出する。すると水色の雲が漂って、香りもラムネになってあおいと喜んだ。 



「あっ葉子さん!ケーキをお一つどうぞっ!」

「は〜いありがと♡」



気がつけばすぐ隣で葉子がソファの背に肘を乗せ、笑顔で私を眺めていた。さっきまであっちで喋ってたのにいつの間に……そして「……びっくりした?」って不敵な笑みがイケメェン!!さらに手を肩に回されて「にゅ〜は、何がしたい?叶えたいこと、何でも叶えられるよ?」なんて決め顔されて、あおいと「はぁ〜♡そのスマイルだけで十分です〜」みたいに盛り上がってたら、秋葉が葉子ジュースを一気飲みして私に大福餅みたいな白い泡を飛ばしてきたからそれを「危ないよ?」って片手で防いだのもはぁ〜ん素敵すぎ♡プリンセス気分♡「神……死んでもいいっ………♡」なんて、あおいとひたすら高揚してたらあははっ!と葉子が大笑いした。



……そうだ、一つ聞きたいことがあったんだ、聞いていい?なんて結構雑に話を切り出したら「何でも聞いてよ♪」って言ってくれたので、え〜と…………葉子がさ、歌手活動とかアイドルを目指した理由を知りたいな?と思い切って言うと「あっ!!私もそれっ!!聞きたいですっ!!」あおいアクセルのメーターが一瞬にして最高値を振り切れて葉子はまたお腹を抱えて笑った。ほんと中性的、美少年みたい………神ぃ…………♡って、ちょっと……秋葉見ないでよエッチ。



彼女は質問されて「そんなこと〜?」とびっくりしてたけど、私たちのそばに顔を近づけて『いいよ、特別に教えてあげる。…………それはね、自分が、どのくらいの人にどのくらい愛を与えられるのか?試してみたかったんだよ♡』ハートをふわっと投げられて、はぁ〜ん♡すごいです姫っ♡って2人で昇天した。だから〜秋葉見ないでよ。


  

え、私もそういう考え方したことある……と告白したら「そうなの?じゃあにゅ〜も、私に似てるんだね♪」ってニコっとしたあとしばらく私を見て「……も〜可愛すぎ!あんまり見つめないでよ♡ねぇ、にゅ〜にお洋服着せたい〜、そうだ!みんなで制服着よう?制服どんなだったどんなだった?」



手を眉間に押さえていた秋葉が、そろそろ止めないと……みたいに動き出そうとしたところであおいが



「あっ!そうだ!お二人のお写真撮りたいですっ!」



うっ、まずい予感がした。そうだ、秋葉が『私たちのこと好きなだけ撮ってもいいですよ』なんて勝手なことを言うから………



「え〜いいねっ!ねぇ出会いは?知りた〜い♡馴れ初めをさ〜撮ろ〜よ♡」



「ようこっ!黙ってっ!」と秋葉は抵抗をするが意味もなく、私は彼女に「ちょっとしつれ〜い♡」となぜかしばらくハグで胸に抱かれて、え……すご……いいにおいって思ってたら「……うん!じゃあはいっ!」ってマジックみたいに、一気に4人が学校のスカートブレザー姿になった。ええっ!?なにこれっ!?

 


「記憶の……共有能力からの再創生…………ドリンクを飲んだ葉子……神の域…………」



「この制服とリボンかわい〜♡ちょ〜っとね、にゅ〜と一つになっちゃった♡勝手にごめんね♡」……す、凄すぎる……なんかエッチだし…………え?まさか…………と、周りの景色が変わっていく様子に硬直していると



「わぁ〜っ!教室ですっ!何だか懐かしいですねっ!」



秋葉と私は頭を抱えた。創生って恐ろしい……まんま、あの時の再現じゃん……と辺りを眺める。窓の外は秋で、11月の終わり頃の風と午後の日差しが床を照らしていて。違うのは生徒と先生がいないだけ。私の記憶から再創生された空間だ。



せっかくだから?とみんなで席に座った。あおいは左前の席で、葉子は右の方で、私と秋葉はあの時の場所。秋葉に、ねぇ……頬杖してよ、ってお願いしたら窓辺で静かに目を閉じた。わぁ……………秋葉さんだ。



「はぁ…………素敵です…………!」



それをあおいが撮影したからちょっと慌てた。今、私どんな顔してたんだろう?右を向くと、葉子も同じく頬杖をしてこちらを見ながらにっこり笑っている。やだ………新しい記憶が創られちゃう…………同じクラスの美人姉妹に巻き込まれる私…………あおいは「私の教室に姫が…………最高…………神…………」ってつぶやいて、秋葉は「やっぱり生来の二股………浮気者ビッチクイーン高校生…………」と暴言を吐いて呆れて。誤解ワード陳列やめて? 



私たちは、そうして久しぶりの教室を堪能した。ああ、このニオイ……この床…………、葉子は机の上に立ち、他の机に飛び移って遊んだ。あおいは外の誰もいないグラウンドと木々を風に揺られながら眺め、私は黒板に英語の文章とめちゃくちゃな数式を書いて、はいこれ解いて〜?そこの寝ている秋葉さん?って指さして無視されたから『あきは は ムッツリ』とピンクのチョークでバカデカく書いたら勢いよく走ってきて黒板消しで消されて定規で頭を叩かれた。いたい。



「じゃ〜次いこ〜次〜!」



ん?次って…………なに?嫌な予感と共に景色は保健室のような場所へと変わり、私と秋葉は再び硬直した。ま、まさか…………ど、どこまで知っ……………あれ?なんにも物が置かれてない空の状態だけど?葉子は、う〜んとあごに手をやりながら「ここからは、にゅ〜が教えてくれないの〜」と困っている……というか困惑してるのはこっちだ。いいからもうっ、馴れ初めじゃなくて2人の写真は撮れたしっ。



「ええっ?残念です〜、お2人の素敵な思い出、知りたいのに…………丹海さん、もっと教えてくださいっ!」



う………写真を撮っていいって約束したことだから何とも止め難い…………と思ったら葉子が「来て〜♡」って一人の仕事ができそうな黒縁メガネのイルカを呼んで、私にそっと寄り添って…………ってまずいよそれは!と気づいたところで記憶共有によって保健室の奥にベッドが創生され、カーテンの内側で私が秋葉に抱擁されている立体映像が映し出され〈2人はここで知り合った。〉などとイルカが余計な説明をして「きゃ〜ん♡エッチィ!!」あおいと葉子が最高に盛り上がる。誰か助けてぇ!



「違う!!これは…………先生がここで休んでいいっていうからっ…………休んでたら丹海が他の生徒に見つかりそうになったから咄嗟に……………」とあれこれ言うけど、

 


「はぁ♡………保健室の密会………偶然を装った運命………現実にあるんですねこんなこと………素敵♡……………じゃ、じゃあ撮りたいですっ!お願いしますっ!」ってあおいの暴走はもう止められず。ち、違うポーズでもいいよね?と懇願したら「そっそれはダメですよ!大事な出会いのお写真なんですからっ!」なんて言われた。秋葉は黙って横を向いている………どうすればいい?



「じゃ〜、私がしてあげるよ♡」



葉子が代わりに立体映像が映っているベッドまで行こうとすると、スッと秋葉が私の腕を引っ張って歩き、そのまま同じ場所で抱擁した。



「きゃ〜っ!!」



2人が大声で叫んで「は、早く撮って下さいっ」と秋葉は必死で、私はあの時と同じようにそのまま固まっていた。「ねぇ〜カーテン閉めると足だけ見えてエロい〜♡」「このシチュエーション…………神…………」なんてずっと2人が喜んでるから「早くっ!!あおいさんっ!!」って秋葉は限界を超えて叫んでいる……………私たち何をやっているのかなこれ?



撮影がやっと終わった……と思ったらメガネイルカが〈まだある。〉などとおっしゃって残りの保健室の記憶を再現させようとしてたから、ないですないです!!って全力でハートをぶつけて彼を放心させたら葉子に笑われた後すまなさそうにそっと頭を撫でられ。『……ごめんね?でも丹海、すごく素敵だったよ。見せてくれてありがとう。』なんて言われたから許しちゃうぅ〜♡イケメン罪作りすぎるぅ!



撮影、も、もういいよね?ってあおいに聞いたら「え、え〜と……あの、もう一つ、お願いがあるんですけど………?」と必殺の上目遣いが炸裂して回避できるわけがない。あおいも罪作りだよこれ!



「やっぱり……学校と言えば告白……ですよね。そのお写真をできたら撮りたいな〜って…………ダメですかね?」



一点の濁りもないキラキラな微笑みをこちらに向けて、うっまぶしい、こんなの断れないよ……みたいになってたら「丹海は告白されまくっていた………告白王」とか秋葉が言い出すから「え〜そうなのっ!やっぱり〜っ?じゃ〜、にゅ〜に告白する対決する〜?ここちゃん?」って……また始まった。え?何?告白対決?私やっぱり巻き込まれるの??美人姉妹に??



「えっ!すごい面白いですっ!あのっ、私、考えてもいいですかっ?」



ん?考える?どういうこと?ドラマみたいにやるってこと?首をかしげていると「そ、そんな対決……してどうするの」とやる気のない秋葉に「ええ〜?やらないの〜?私が負けたら何でも言うこと聞くよ〜?」って葉子が言うから「やる…………葉子うるさいからずっとHISUIの喋りでいてもらう……」なんて酷い罰ゲーム予告に「あははっ!」と笑い返してて仲が良いんだか悪いんだか。


  

「こんな贅沢……夢みたいですね!ここあさんの告白シチュエーション、できましたよっ!」



しばらく考えていたあおいがそう言うと、私と秋葉の景色は学校の廊下に変わり、身体が半分くらい勝手に動きだす。え……歩いてるんですけど!……そこに同じく、半分以上自分の意思ではない走り方の秋葉が「に、丹海!」と半分以上ぎこちなくセリフを言って私を屋上手前まで階段を上って連れていき、逃げないように壁にダン!と手をやる。いきなりの流れでちょっと表情が引きつっているが、ここで負けたら葉子からの罰ゲームが待っているのもあって本気の顔に切り替わる。




「……丹海、告白されたって本当?」



『え……?う、うん、同じクラスの男子だけど、どうして………』



「ずるい………」



『え、秋葉…………?』



「私が、……私が丹海のこと、一番に好きだったんだからっ……」

 


その時校内サイレンが流れ、隕石から避難せよと放送が流れる。えぇ…………?



『隕石だって!秋葉、早くっ……』



階段を下りようとする私の腕をガッとつかみ、引き寄せて。秋葉は窓の外の炎や光に照らされながら、決意の瞳で私を見て。



「そんなの関係ない…………世界が終わろうがどうだっていい…………私は、一緒にいられるなら…………………丹海………………好きだよ、離れないで………」



『秋葉…………………私ね、今同じこと、思ったよ。世界が終わっても………関係ないよね?…………だって秋葉がいるなら…………私、ずっと、最後まで、一緒にいたいよ……………………』



……ちょっ!ちょっと!!顔近いって!!……するの?キスするの?ま、待って!!あおい〜っ!!!




———— 


  


「さ、最高ですっ!!世界の終わりの学校告白っ!!涙出ちゃいますっ!!」

 



そ、そうっすか……………はは………………っておいっ、唇は死守されたがあと2ミリだったぞ!秋葉と2人で床に手をついたまま立ち直れず。え、演じるってすごいんだね…………3年もHISUIをやり続けた葉子が恐ろしいよ…………というかなんという想像力…………告白が壮大すぎるぞあおい。



「にゅ〜可愛いよぉっ♡じゃあ〜次は私の番だね?負けないよ?」 



そうだ、今度は葉子の番か……と準備する間もなく景色が変わり、私は学校の屋外でランニングをし始めた。スタート早いからっ!あおいっ!




 


『きゃっ!!』



なんて、さっそく鈍くさく転んだら膝から血が出ている。痛!ほんとに痛い…………えぇ…………そこまでリアルにしなくても……と思ったらそこに長袖シャツにパンツ姿の葉子が現れ。 



「丹海っ!大丈夫?」



『あっ!葉子先輩っ!平気です歩けます!』



「立ち上がっちゃダメだよ、治さなきゃ。」



傷口に手をかざし、スゥっと治癒させる。痛みもなくなった。すご………神の手だ。



『ごめんなさい……いつもこんなことをさせてしまって。私が魔力を持つばかりに命を狙われて、その度に先輩は怪我をしてでも命がけで守ってくれて………………一つ聞きたいんです、どうして……どうしてそんなに……………』

 


「丹海。」



スッと、優しく人さし指で私の口を押さえて。



「……その質問に、答えるつもりはない。私から言いたいからだ。……丹海、愛している。」



うわっ視線やばっ!本気で殺しに来てるよこの人っ!



「丹海と出会わなければ、分からなかった。人を愛することを君は教えてくれた。でも……残念だな。」



『え?……先輩?』



「……魔物たちはすべて魔法界へと戻された。私の、ここでの調査は終わったんだ、だから丹海……さよならする時が来ている。」



『ま、待って、待って下さい先輩っ!先輩は…………私の返事を聞かないんですか……?」



すると立ち止まり、振り向いて切なく笑う。 


 

「丹海…………ダメだよ。それを聞いたら、私は戻れなくなるからさ……………」



私は走り込んで抱きしめる。



『好きですっ!!葉子先輩っ……!!私も、私も一緒に行きたい………!いなくなっちゃうなんて悲しすぎるよ……!先輩!もう先輩ではなくなっても、私はそばにいたい!』



「丹海……」


 

すると私を抱きしめ返して。



「君は……私をずっと癒してくれていた。私が君の怪我を治すよりも遥かに深く。いつも感じていた……それは深い愛だった。……もし願いが叶うなら、私の魔法を一つ唱えてもいいかな……?」


 


そして、私の頬に手を添えて微笑む。



 

 

「…………大好きだよ丹海。君と、歩みたい。」





手を差し出されてつかむと、そこから光の花びらが飛び散って。




元の保健室に私達が戻ってもそれは吹き荒れて、あははっ!と潤んだ涙を拭いて笑う葉子の周りを輝かせた。こ、これがアーティスト……………迫力が違いすぎるっ…………!



あおいも感涙し「素晴らしいですっ!!」と、写真を撮り終えて満足したようだ。……というか、どうやって撮ってたんだ?私は別の所にいたの?分からん。と、とにかくすごく疲れた……何気に私もめちゃくちゃ告白してるじゃん、ちょっとあおいっ!




「はいっ!あおちゃ〜ん判定してねっ!どっちが告白、良かったかな〜??」



「ええと!ここあさんの告白もですねっ、私感動したんです!……でも…………申し訳ないんですがやっぱり、演技という点で姫は本当にすごくて……ということでごめんなさいっ!!勝者は葉子さんでっ!!」


 

…………まあ、それはそうなんだけど、秋葉はとりあえず絶望している。でもそもそも、このバトルに乗っかるのが悪いよね?相手はプロだもの……無理でしょ。



「仕方ないなぁ、ここちゃんには、ほっぺにチューしてもらうだけでいいよ?してもらいま〜すっ!はい、やって〜?」



そう言われた瞬間、虫のような速度で廊下に逃げようとした秋葉を、イルカさんが葉子の指示で取り押さえた。……この方は使い魔か何かなの?

 


そして創生が解け、パーティルームに私たちが戻ると他のイルカさん達が〈いよっ!待ってました!〉とばかりに拍手で迎えた。…………いや何を?


 

「ちょ、ちょっと待って………なんでみんな見てるの……………?」



さぁ?イルカさん達も興味津々なんだよ……と秋葉に他人事の如く喋ってたら最高に睨まれた。知らないもん私は……がんばりなさい?ちょっとチュってするだけだよ、って言えば言うほど顔を赤くして苦悶の表情で。……まあ、母親にキスするんだもんね………私の母にはできないけどさ、この葉子ならできるでしょ秋葉?



「はやく〜!やって〜??はい、やって〜??」



ほら、ずっと待ってるからしてあげなよ……と言うても動かず。…………秋葉、新しい現実を創るんでしょ?秋葉がやらなきゃ、お手本見せなきゃ誰も一緒に進めないよ?…………なんて、極めて適当なことを並べ立ててたら急にピクっとして



「そうだ……向かう……ために……愛の………くっ………」



うんうん、みんな秋葉の進む道を見てるからさ……などと横から何かしら言ってたらだんだん覚悟が決まってきたのか、



「平等のっ……世界のっ………秩序と……安寧っ………!ぐぅっ………………」



下を向いてマンガの主人公みたいに耐えている所に、イルカさん達の〈キース!キース!〉という可愛いコールと葉子のしつこい「はやくして〜?ねぇはやくして〜?」がずっと流れてて最高にシュールなんだが。でも……やっと心を決めたのか、秋葉はぎゅっと目を閉じながら震える手で葉子の肩をつかみ……………ゆっくりと顔を近づけてそして……………………


 


軽く触れ、崩れ落ち、倒れた。大丈夫か?


 


「いやぁ〜♡ここちゃんから久しぶりで嬉しい〜っ♡♡」



イルカさん達からは拍手とクラッカーを鳴らされ、DJイルカはブチ上がる曲を流し、良いものだ……と私はニコニコした。

 


「はぁ………素敵…………ついに果たされた究極の約束…………戦いの末の愛…………神…………」




ちゃっかり動画を2人で撮ったので、永久保存しておこうね♪ってあおいと話してたら「消してっ!!それ消してっ!!」なんて秋葉が必死に言うけどさ、仲良くして良かったじゃん、と頭を撫でたら「う、ううっ…………」って泣きそうになったけど「ここちゃん大丈夫っ!?そんなに嬉しかったっ??もう一回やるっ??」と葉子がふざけて迫ったら即、逃げ出した。はは…………いや、良いお母さんだよ。





 




 

  







 


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