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ヒーリングタイム その2






葉子の下着ファッションショーは、最後にホタテ貝のデザインのブラを披露したところで私たちが吹き出し、機嫌を損ねた葉子が「へくしょい!」とか思いっきり寒がって秋葉に怒られ終了した。



脱衣室を出て、美しい板張りの廊下をキレイなくつ下でスタスタ通過する。入り口すぐの部屋まで戻り、ガチャ……と厚い木のドアを開けると本格的な暖炉がパチパチと乾いた音を鳴らしており。レンガの壁おしゃれだし落ち着く……特にソファなどの家具はなくて、床全体に白いフワフワとしたラグが敷かれている……4人ですぐにゴロゴロした。最高の癒し空間……♡



モグラ色の服だけだとやっぱり寒いので脱いで、暖かな下着を足して替えの服にみんな着替える。暖炉の前で葉子がクッションを持ちながら暖まっていて……まだ毒と疲労は残っているようだ。私のバックからブランケットを取り出して葉子にかけてあげると「ありがと〜にゅ〜♡ねぇ〜肉じゃが食べたいよ〜♡」なんてお料理リクエストを突然言い出して。

 


「奥に……小さいけどキッチンがある。」って秋葉が見つけて、あおいと行ってみるとイスとテーブルも置かれた素敵な場所があった。さっそく3人で作ろうと材料を創生する。スマホ画像を見て、一般的じゃがいもや一般的調味料等を揃える。ご飯も食べたいから土釜と、新潟のお米を生み出す。



「問題は……豚肉。本物に触ってからの具現化はできないけど……過去に食べたことはあるから人工豚肉を生み出せるはず…………」



『葉子も肉じゃがとか食べるんだね♪』って聞いたら「……食べたいものがあれば美味しく食べる………葉子は、とにかく感謝を大切にしている……食べなければ生きていけない世界が終わってもこれは大切…………」と大事なお言葉をいただく。そうだよね〜とかあおいとうなづいて豚さんに感謝をしつつ、豚肉のイメージをした。……妙なことをしてるね?



フッと、目の前にバラ肉のようなものが出てきたからうまくいったのかな?見た目はほとんど似てるけど……どこか造り物感があって不思議だ。じゃがいもと人参の皮をあおいと一緒にピーラーで剥き、玉ねぎも適当に切って秋葉が持つ深めのフライパンに投入する。



「これは…………水炒め。油の代わりに水を使う………スチームで素材を破壊しすぎないことによる美と健康への効果…………」



さすが、葉子の専属シェフだけあってこだわりがあり、手慣れている感じだ。『秋葉、かっこいいよ!』「素敵ですっ♪ここあさん♪」私たちが横から褒めると嬉しそうにしている。もっと近寄ると「来ないで……材料にするよ。」とか言われ。さらに近寄ると睨まれた。あおいは「仲……良いですね♪」とクスクス笑っている。



調味料を入れ、落とし蓋を置いてグツグツさせている間に、水につけておいたお米を炊く。秋葉に「丹海のこだわり……」なんて言われたけど、確かにそうかも。『私、土釜もそうだけどお米はコシヒカリが好きなんだよ♪』って話したら「私もそうですっ!やっぱり美味しいですよね!」とあおいも同意してくれたので『これからは一緒に毎日おみそ汁を作ってもらいながら暮らします。』などと秋葉に宣言すると「私も……あおいさんと毎日食べたい。」とか、もう一つプロポーズが来たけど「い、いいですよっ!みんなで食べましょうっ!」みたいに言ってくれるのほんと天使だよ〜もうみんなで結婚しよう♡ 



いいおいに惹かれて葉子が「おいしそ〜♡」ってやってきた。輝くご飯と魅惑の肉じゃがを器に盛り付け、みんなでテーブルでいただきます♡する。…………うわっ、美味しい……。甘さと塩の加減が絶妙で、じゃがいもがとろけるよ!と絶賛すると「塩麹が隠し味……私の好きな男爵芋……」とか小声でつぶやきながら嬉しがってるの可愛いんですけど。



「ここちゃんおかわりっ!」って、早っ!葉子は幸せそうにご飯とじゃがいもをほおばっている。どうやら人工豚肉は成功したみたい、味も変わりないし、逆に脂分が少ないから健康的だ。「美味しいです♪みんなで食べるからさらに美味しいんですよねっ♪」と微笑むあおいをスマホで撮影したら「丹海さんっ、食べてるの撮られるの恥ずかしいですっ!」なんてちょっと怒ってるのも綺麗♡撮っちゃう♡ 



もう家族でしょこれは……みたいに私が惚けていたら、葉子が「あははっ!そうだよね〜もうそんな感じだよね〜♡」と隣に座るあおいに笑いかけて。彼女は「えっ?ええと……」って下を向いており……葉子が覗き込むと「なっなんですかっ?」とか…………も〜なかなか進展しないドラマ見てるみたいで早く〜!とか思っちゃうよ……自分どうした?って感じだけど……よく分からない。


 


みんなで後片付けをして、秋葉とお皿を洗って、あったかいところへ行こ〜と暖炉の前で白いクッションを抱え、またゴロゴロした。そうそう、あおいと秋葉に2人でお土産買ったんだよ♪って、マカロンの箱とたい焼きのおまんじゅうをあげたらみんなで食べよう♪ということになったので、バックからミントティーと黒豆のブレンド茶を取り出してマグカップも用意した。小さいテーブルも創生し、キッチンにあった大きな白いお皿にマカロンを全部並べると最高に映え〜♡あおいと撮った。



バックの中にあったトランプ……ライブの時にインコがくれたやつを見せて『ババ抜きやらない?』と聞くと葉子が「やるやる〜♪」って比較的元気だ、ごはんを食べて少し身体が元に戻ってきたのかな?みんなで暖炉の前で寝転びながらカードを配り、じゃんけんで勝った私から左隣の秋葉のカードを取った。彼女は完璧なまでに無表情だ……いや、いつもそうだけど。



私の手元にはジョーカーはない。でも、なかなか揃わなくて。そのうち葉子が「はい優勝〜♪」って早いよ〜!とか言ってたらあおいもすぐに「ありがとうございます♪」なんてひどいよ!ってことは……秋葉がジョーカー持ってるんじゃん〜!とか言ったら「うるさい……」なんてイライラしている。葉子に負けたのが悔しいのかな?



秋葉はトランプの並びを凝らすこともなく目の前に差し出し、私も特に考えることもなく取ったら彼女は床に撃沈した。…………あれっ?秋葉が私に投げ捨てたジョーカーの絵がスッと消えて…………え……?何これ……?


 

『私が………映ってる…………C組の教室…………』



秋葉が、バッ!と起き上がって私から回収する前に「見せて〜っ!」と葉子が『映像トランプ』を取った。…………ど、どういうこと??トランプの箱を見ると英語で『MY−SECRET』と書いてあり。私の………秘密??



「あ〜っ!!ここちゃんが廊下からにゅ〜のことチラチラ覗き見してる〜っ!!エッチ〜!!え、制服姿のにゅ〜可愛い〜♡告白したい〜♡」



「はぁっ……運命の出会い……休み時間の秘密……素敵ですね♡」



秋葉は、暖炉より真っ赤に耳を燃やして床に伏している。カードを見ると確かに……あの時の私だ。そして廊下から教室の窓ごしにチラ見している秋葉さん………うわ、やっぱり私バカ笑いしてる恥ずかしい………秋葉そんな見ないでよ……というか私も出演してて明らかに流れ弾でしょこれ……『秋葉のせいだよ……』とか言ったら「次は……丹海の秘密を暴露させる。」などとやる気だから、別に秘密なんてないし、いいよ〜?と、葉子達と同意して2回戦目を始める。


  

今度は葉子からスタートし、秋葉はピリピリしながら私のカードを抜き取ってくる……怖いんですけど。でも「はいごめんね〜?」ってまた葉子が最初にあがって、そのうち秋葉も終わって、あおいと私の争いになったけど……あおいがジョーカーを持っている。ドキドキしながらカードを引き抜くと…………揃った。「悔しいっ!!」と本気なのも可愛い……とか見てたら彼女は「あっ……」なんて小さくつぶやき顔が青くなり……手品のような素早さでジョーカーを後ろ手に隠した。



『え〜気になる〜!あおいの秘密ってなに〜??』とか私が近寄ると後ずさって「い、いやっ……あのっ……これは…………」って……なんだ?「え?あおちゃん、エッチな秘密があるの?」などと葉子がニヤニヤして言うと「ちっ、ちがいますよっ!!」と怒りながらも見せてくれない。「ほら〜負けたんだから〜……ね?あおちゃん?」って葉子が手を出すと「ううう……!」なんて苦しみの表情でゆっくりと……それを差し出して。すぐに3人で食い入るように映像トランプを見る。



……ん?この前みたいにメガネをかけたあおいが……机で大きなパソコン画面に向かって作業をして…………

『…………何か描いてる?』

私がそう言って振り向くと、あおいはこの世の終わりみたいに顔を手で覆っている。「懐かしいね、私が彼女のアパートにここあといた時の風景だね♪」と葉子は微笑み。



「あおちゃんはね、マンガ家さんなんだよ?」


「葉子さんっ!!!」



秋葉と私は「えっ?!」ってなった。『…………そうなの?』って、あおいに尋ねても何だか下を向いて黙っている。これは……聞いちゃいけないこと?



「あおちゃん、最新巻まだ〜?」


「葉子さんっ!!もうっ!!」



珍しくプンプンなあおいに『……ほんとにそうなの?』ってシンプルに問うと「…………そうですよ。描かせてもらってました。」と若干不機嫌な返事が来て。「な、なんていうペンネームですかっ?」とか秋葉が食い気味に聞くと「は、恥ずかしいですっ……!!」って叫びながらまた顔を隠した。



「……あおちゃん、胸を張ってよ。あおちゃんはすごいんだから。自分のこと、にゅ〜達に教えなきゃ。」 



葉子は頭をナデナデした。あおいは「うう………」なんてしばらく苦しみの声を出した後、その後スッと無表情で立ち上がり、バックからスマホを探してきて「これです……」と待ち受け画面を見せた。あ……この前ライブで2人が歌ってて、インコが喋ってたアニメ『カナと飛鳥』…………えっ?!その原作者さんなの??あおいが??



「そ、そうです……」



彼女がもじもじしている内に秋葉が調べて「45巻も出てる………すごい連載……」ってほんとだ!超有名じゃんっ!……私のスマホを持ってきて秋葉と勝手に第一話から読み始める。ペンネームは……青花 優雨(あおが ゆう)。……えっ!すご……!繊細な絵が美し……きらきらしてかわいい…………しかも面白い。



……高校生の女の子2人が主人公で、ゆっくりとお互いに仲良くなっていくけど……片方のヒロインが自分は死神だったことに気づいて、もう片方の元天使のヒロインを起こさないと元の世界に戻れないから……毎回がんばるけど信じてくれなくて……みたいなコメディですごい楽しい。

 


「面白いです!あおいさん、マンガを描いていたなんて知らなかったです、今度全部読みます。」と秋葉が興奮気味に話すと「あ、ありがとうございます……」って、あおいは少し照れながら恐縮している。



彼女に『……私さ、恋愛?とかの漫画って小さい頃に少女漫画を読んだきりで……あんまり興味は無かったんだ、でもこれはすごく読みたいって思うよ。なんか……女の子が中心で、楽しくやってて面白いし癒されるというか。」とコメントするといきなりガッ!と手を握られて「丹海さんもですかっ?私もそうだったんですよっ!百合に出会ってから人生が変わって!」なんてキラキラの目で言われた。



百合って……なに?と尋ねると「あ、えーと、女の子同士の心の触れ合いというか、お互いに絆で結ばれているという関係が表現されたもの……ですかねっ!…………って……私お喋りしすぎですね、ごめんなさい………」さっと私から離れて、今度は体育座りを始めた。急にアガったり謝ったり赤面したり……不規則な信号機みたいにくるくるしてるんだけど。



葉子は、静かにうつむくあおいの後ろで同じように体育座りした。そして脚を広げて、そっと背後から包むように抱きしめる。「よ、葉子さん……」と彼女は抵抗したけど、手でぎゅっとされているから動けない。「……あおちゃん、何にも恥ずかしがることはないよ。マンガを描けるのって、尊敬しちゃうな。」って優しく横顔に語りかけるの、はぁ……王子♡



「そうですよあおいさん、どうして教えてくれなかったんですか?何年もマンガ家をされてたなんてすごいことじゃないですか。」



秋葉の言葉に「そ、それは……」と彼女が返事するのをためらっていたら葉子がニコニコと「……あおちゃんはお嬢様だからね♪そういうのダメって言われてたんだよね?あおちゃん?」って……お嬢様なのぉ!?やっぱり!?雰囲気そうだと思ったけど!



「よ、葉子さん……!ち、違いますよっ?あの、ちょっと父があれこれやっていただけで、私はそんな……」



「私のおうちも、あおちゃんのお父様の知り合いから紹介されたものなんだよっ♪」 


 

ええっ!?と秋葉が大きな声を出した。……あの巨大な宿泊施設みたいな家、芸術家の別荘だったって聞いたけど……そんな背景があったのか。



「……そうですね、家のことは父に協力してもらいました。アパートで葉子さんと話し合って、ここあさんと人の目を気にせずゆっくりとできる環境をと、葉子さんのことは伏せて父に『友人と仕事ができる広い物件を探している』と相談したんです。でも……私の分は私が支払いしていくと言ったのに、あの家のお金を私の代わりに父がほとんど出して……その他の援助もいつもしてくれたりと…………正直、かなり溺愛されてましたね。」



「知らなかったです…………」と秋葉が驚いていると「今までお伝えできなくてごめんなさいっ」ってあおいは謝り、話を続ける。



「……あのおうちは……葉子さんとここあさんのための場所で、私がそこに入るなんてことは考えもしなかったです。とにかく父にはそういった恩があって、長年彼のオフィスのお手伝いをしていました。だから厳密に言うと、私は純粋なマンガ家なのかどうかは分からないですけど……そうやって同時並行でお仕事をしていたんですね。」



……ええっ?会社でも働いてたってこと!?それも似合いすぎて、電話を取る姿を想像してたら葉子が「有名な会社の事務をしてたんだよっ!あおちゃんはすごいよねっ!」って……どこ?なんていう会社?と聞くと「『ナイザリア』っていうイタリアンのお店、知ってますか?」………うん知ってるよ?よく友だちと行ったよ??…………え?まじなの?



えぇ…………?衝撃の連続で、私も壊れた信号機みたいになった。「葉子………………あおいさんのこと、言わなさすぎ。」って秋葉がちょっと拗ねている。「あははっ!その時が来たら言おうと思ってたんだよ♪ねっ?あおちゃん?」とか覗き込むけど、何だか複雑な表情をしていて。それを見て、葉子がさらに話し出す。



「…………あおちゃん、私ね、色々考えてたんだ。あおちゃんがお父さんとのことで大変そうだったから。…………いつかね、絶対、私のところに連れ出して一緒に住もうって思ってた。新しい世界に変わった時は最初すっかり忘れてたけどさ、あの家にいるうちにあおちゃんの声が聞こえた気がして……だからまた出会えたんだね。夢が叶ったんだ♪」



「葉子さん…………私のことで、長い間心配をかけさせてしまってすみません。あの、一緒に住みたいだなんて……ずっと前から言ってくれていて……嬉しかったです………私、こうしてそばにいるのも未だに夢だと思っていますよ…………」



……あの、お父さんとのことって……何かあったんですか……?と、この際だから気になるまま2人に尋ねる。すると葉子が「……あおちゃんはね、30歳までに結婚しなければ会社の人とお見合いして籍を入れてもらう〜ってお父様に言われたんだよ。」なんてニヤっと笑って。『えぇ?………そんな、強制的すぎる……』とか私が引くと「そうですよね、びっくりしますよね……」ってあおいは苦笑した。



「父は、若いうちにお見合いで結婚した人なので……きっと、心配してくれていたんだと思います。でも…………ええと、私は、何というか………………あの、私って、人生においてそういうことを望んでいない人間というか、最初から頭の中になかったので……父が言うことには理解に苦しんでしまって。」



後ろから葉子にハグされながら、これまでを振り返るようにあおいは一つ一つを話し出す。


 

「……私、変なんです。ふつうなら…………私が、これまで読んできた漫画の中の人たちのように、ある年齢の時に誰かと出会って……子どもとかの未来を考えながら同じ場所へ向かって……という風に生きていくのかもしれませんけど…………私は、そのような人生について、恋愛や結婚というようなことについて一度も考えたこともなかったし、純粋に分からなかったんです。そして、そういう道の上を歩くフリもできなくて…………割と近年ですけど、父とケンカしましたね………人生で初めて反抗しました、『私、結婚はしません。子どもも欲しいって思いません。』ってはっきり言ったんです。…………私は、恋とかが分からない人だったので……だからマンガを描いたりして答えを求めていたんだと思いますけど……自分のことは『変わっている』と、昔から知っています。でも……その考え方で父に嫌われても構いません。周りに理解されるとかされないという以前に…………私、嫌なものは嫌なので。自分が納得できないことに関してすごく敏感なので…………って、長々とごめんなさいっ、そういうことがあって、葉子さんに気遣わせてしまって申し訳ないですっ。」

 


…………すごいなぁ、あおい。見た目はふんわりしてるけど、芯の部分がはっきりと凛としていて……秋葉が言うように剣術の使い手というか…………美しくストイックな侍みたいだ。



「……あおいさんの考え方……私も同意します。これまでの人間世界は……主に所有の概念を基に発展させていたもので……それは実際、私たち本来の愛の世界から微妙に逸れており、問題と欠陥が常にあった…………あおいさんは、それを分かっていますよね。あおいさんのお父さんも……もし、生まれ変わりがあるのなら、何年、何百年と経って、いつか分かる時が来るんです。私たちは………心の経験のために生きています。単に体験や表面的な何かをするためにいる存在ではないんだけれども…………そこを誤解している不幸なままの方がとても多く、溢れていて…………モノや刺激が豊かでも、心が貧しく暗い空洞を抱えた人たちとは………いつまでも話が噛み合いません。それは、これまでに与えられた価値観を自分で違うんだと変えなければいけない、個人的な問題なんです………あおいさんは何にも悪くない。」



秋葉は名言とメッセージを発する。「ここあさん……ありがとうございます。結婚のお話以外のことでも、これまで違う意見や環境に触れて違和感を覚えたり疲れたりすることもありましたが……みんなと私が通じ合う時が来るのなら……嬉しいですね。」って、あおいはお返事をしながら少し明るくなった。



「まぁお父様も……ふつうに悪い人ではないよね。」……葉子が、あおいの頭を撫でながらそう言うと「そうなんです、ちょっと通じ合えないところが目立ってしまうだけで。」と悲しく笑う。



「真面目すぎるところがある、というか……特に恋愛とか………そういったことは基本、恥ずかしいものなんだって思っている人で……私は未だに父の影響を受けているのかもしれません。私がマンガを読んだり描いたりすることも小さい頃は禁止にしたりと好ましくは思っていなくて……マンガ家になるのも反対されましたね……………って、あのっ、さっきからずっとごめんなさいっ!私の話ばっかりしちゃってますねっ!」



「……いや、聞かせてください。あおいさんはそこからどういう経緯でマンガ家になったんですか?知りたいです。」と、秋葉は記者のように質問する。……私が、たい焼きのおまんじゅうを2つ取って食べ始めたらジロって見てきた。『そんな、全部食べないよ〜』って顔をすると無表情で無視され……と思ったらこっそり手を握ってきて。何なのエッチ。



「私は、マンガと関連してアニメも割と好きだったので……声を褒められたこともあったから、それを活かしたいなって、コンテストをきっかけに声優のお仕事をさせてもらえるようになって……でも、マンガのお仕事の方も諦めきれなくて、趣味で描き続けていたんです。」



「私が『見せてっ!』ってお願いしたからさ、いつもメールで四コマ漫画を送ってくれたよね♪私がまだ『あおいちゃん』って言ってる時代からね♪……ねぇねぇ、はじめて会った時の私、どんなだった?」



「えっ?あの頃の葉子さんですか?今と変わらず明るくて、HISUIとのギャップにびっくりしましたけど、すごく気配りがあって素敵な素晴らしい先輩だなって思ってましたよっ!よく相談にも乗っていただいてっ!」と瞳を輝かせたけど、葉子が「いじめのね、相談ね……」って、ため息混じりに言うと「してもらいましたよね……本当に、そんなこといけませんよね……」なんてシュンとして。……えっ??あおい、いじめられてたのっ??



「……私ではないんですけど、同期の新人さんと特定のベテランの方との間に、現場で毎回ちょっとした不和があったみたいで、その話をよく相談されたりして……自分のことではないんですけど、結構心を痛めてましたね……」



「……あおちゃんは心の綺麗な人だから、周りに影響されやすい。そういう人こそ内側の気持ち……自分の気持ちを守らないとダメだよ。」



葉子はほんと、かっこいいな……と見てたら「あの時も……そう言ってくれましたよね。本当に助けられました。」って、あおいは優しく微笑んで。はぁ、深く想い合っているんだね……2人、美しいよ。



……そういえば、秋葉にも似たようなことを言われたんだ。あの高校生活で、私は知らないうちに周りに振り回されてて……何もせずストレスを抱えたままではいけないってバスの中で話してくれたね、秋葉。……私にもマカロン取っておいてね?



「……葉子さんは私の色んな悩みをいつも、メールやプライベートでも聞いてもらって、元気づけてくれた……本当に感謝しています。その頃に描いていた読み切りのお話をたまたま応募した所、マンガ大賞を頂いて、声優からそちらへと夢を叶えることに決めたんです。その時に葉子さんに後押ししてもらった素敵な言葉……今も覚えてますよ。」



葉子はぼーっとして「え?なんて言ったんだっけ?」なんてあおいをハグしたまま上を見ていて。たまに天然なところは秋葉と同じだね。私の手をつないでくる本人をちらっと見たらなんか睨まれたし。……あおいは「もう、覚えてないんですか?」と笑ってあの時の名言をもう一度リプレイする。



「『……情熱は内側から出てくるもの。それは見えないものだから誰にも分からない。好きだという気持ちは自分にしか分からないものだよ、大切に守らなきゃ。私はあおいちゃんのその気持ち、ずっと応援するから。』って言ってくれたんです。私……夢を叶えてからも葉子さんのその言葉を忘れませんでした。」 



ふわっ……かっこよすぎる…………。これは永遠の推しになるよ。「そうだね、マンガ家あおちゃんの一番のファンとして心からがんばれっていつも思ってたよ♪」って葉子が笑うと、あおいは少し顔を赤らめて「ファンだなんて…………あの、ありがとうございます。」と恐縮した。


 

「……今は、こんな世の中になってしまったのでウェブでの連載はお休みしていますが……でもやっぱり描きたい気持ちは止まらなくて。葉子さんに自分の描いたものを面白いって言ってもらえるの、すごく嬉しいんです…………あ、あのっ……今までここあさんと丹海さんに言えなくてごめんなさいっ。」



『……あのさ、私も読みたいから、最新話ができたら見せてよっ♪』なんて勝手なお願いをすると「えっ、そんなっ、あの、全然描きますよっ、それで読んでいただければっ」と喜んでくれた。「良かったね、あおちゃん♪」横から見つめる葉子にちょっとびっくりしてからあおいは「…………はい。」って優しい笑みを見せていて。



「……声優を通して、マンガのお仕事を通して、たくさんのことを知りました。葉子さんがいなければ色んなこと、分からなかったです。私……いつまでもこの恩を忘れません。姫には、ずっと返し続けていきたい……」



「……あおちゃん、もう、十分もらってるよ?」と、葉子はぎゅっとして耳元で話す。



「私は……あおちゃんとこうしていられるだけで、たくさん幸せだよ?私の方こそ、あおちゃんにいっぱい助けられたから。ここあがまだ、首もすわってない時に……心細くて仕方がない時に、私がワガママ言って一緒に見て、育ててくれた。本当に感謝してるんだ。」そして、横から覗くようにあおいを見つめて。

 



「……好きだよ、あおちゃん。色んなことがあったけど……今、ずっと一緒にいられて…………私、幸せ。」


 


あおいの頬に涙が流れた。「色々ありましたね……色々……ありました………」と、言葉に詰まりながら葉子を見て。




「けど…………そうですね、今……幸せです。こんな気持ちを見つけられたんですから………………本当に、私……葉子さんに出会えて………………良かったです………………」

 



消え入りそうな声で話したあと軽く微笑んで、あおいはそれ以上の涙をこらえる。葉子が横から頬を撫でると、あおいはじっと熱く見つめた。葉子も見つめると、しばらくしてから葉子は少しずつ、顔を近づけていき…………………あおいは目を閉じて、キスを受け入れた。



 

 

………って、ええっ?!!したっ!!したよっ!?

………ひゃ〜っ!!!き、綺麗……………………

 



…………なにこれ?映画なの?それとも童話なの?う……うっとりしてしまう………………葉子、あおい、良かったね……色んな壁を壊して、越えて、やっと通じ合ったんだね…………って感動してたら、秋葉がぎゅっと手を強く握ってきたから握り返した。


 


想いを交わすと、2人は放心していて。その後、葉子は無言であおいを後ろからぎゅっとした。あおいは、ぼんやりとしていた所からハッ!と意識が戻り「……あっ、あのっ、ええとっ………」とか小声でアワアワしていて、そのうち真っ赤になり、自分のひざを抱えたまま固まった。



すると「グス……」と、音が聞こえる。葉子はあおいの背中に顔を付けて……泣いているようだ。……それはそうだよね、葉子は10年以上も彼女のことを想っていたんでしょうから。ずっと、愛を受け入れてくれるのを待ってたんだから、すごいよ、やっぱり一途だよ葉子。



 

…………と思ったら、秋葉も泣いていた。ティッシュを彼女に渡すと、軽く拭いてから私のひざの上に倒れて来たので猫みたいな彼女を撫でて。何だか、感動しちゃうよね。秋葉も、葉子の幸せな顔が見たいって思ってるでしょうから。……純粋に、好きな気持ちを通わせるって奇跡だし、素敵だね。



 

  

「ねぇ……あおちゃん……ハグしていい……?」


 

少し間があってから、声の弱々しい葉子が背中から尋ねた。あおいは「え……あの……」と、ためらってから小さく「…………はい……」って言うと、後ろから組んでいた手をほどいて葉子は彼女と向かい合い。



「葉子さん……目、赤くなっちゃってます…………ごめんなさい、私……」あおいが目尻に触れると「あおちゃん……」って静かに抱きしめて。するとフワッとヒーリングの光が発生し、2人を優しく包んだ。



「何だか……あたたかいですね、これ…………気持ちが良くて……」



「うん…………」

  

 

葉子の泣いていた声が元に戻った。すごい、私たちこんな風にすぐに回復できちゃうのか。…………なんて思ってたら葉子は耳にキスをし始め………………ん?あおいは驚かずに「……はっ、ん……」とかエッチぃ!!膝枕されている秋葉はそちらを見て「……あれ、マズいんじゃない?」って言うけど……なに?どういうこと?



よく見ると、2人を包む光は強く輝いている。まるで……私たちが何回もキスしていた時のような…………ちょ、ちょっと!葉子が耳を舐め始めたけどっ?!あおいは大して抵抗をせず「んっ………葉子……さん……」とか、なんか始まっちゃってるけど!?



「…………ヒーリングは、お互いのエネルギーをつなげる行為……つまり、お互いが割と健康な状態であまり長く行うと………生命エネルギーも倍、様々な感度も倍……………錯乱に近い媚薬効果…………キノコと同じ……」 



そんなこと言ってるうちにどんどんあおいの声がエッチに極まって、葉子が床に押し倒して首を舐め始めたからどうするのこれっ?「…………エッチだね。」とか赤くなってる場合じゃないでしょっ!「どうすれば良いのかは分からない……丹海、保冷剤を創生してみよう。」って……なに?熱を冷ますの?



私たちは適度な大きさのものを2つ用意し、すぐさま駆け寄る。葉子は鎖骨を舐めており、あおいはくすぐったく気持ち良さそうに葉子を抱きしめていて。「………邪魔しちゃいけないのかな?」とか秋葉はつぶやいて、葉子の首に保冷剤をつけると「きゃんっ!!」なんて叫んで犬みたいに床に転がった。2人の身体が離れて光は消え、あおいはスッと元の状態に…………戻ってない。



「丹海さん…………♡」



って……どういうことっ!?あおいにグイって腕を引っ張られ、今度は私が覆いかぶさった。助けて秋葉っ!と呼ぶと「やめてっ!!」って、彼女は葉子からのガチキスを必死に手で押さえて抵抗していて…………えぇ……どうしたら………とか思ってるうちに、あおいに『チュッ♡』みたいにほっぺにキスされてイタズラ笑みで『ふふっ♪』なんて笑って…………あれ?私たち恋人だったっけ?はぁ…………可愛い♡じゃなくてっ!



『あ、あおいっ!起きてっ!』って呼びかけたら「んんっ……!」とか……何か私の声で感じててエッチすぎ!…………ん?そうか!感度が倍になっているのなら…………いつかの秋葉に告白した時のことを思い出し、床ドンしている状態であおいの耳元に近づき…………

 


『…………好きだよ、あおい…………愛してる。』



って言った途端にビクッとして………恍惚としている。も、もう落ち着いたかな……?離れようと思ったらガッ!と、強くつかまれ「丹海さん………もっと……くれますか………♡」ってなに〜っ!?とりあえず反対側の耳に回って葉子のマネで『あおい、君のことを離さないよ……生まれ変わっても………好きだ。』とかささやいたら「ひゃああっ!!」なんて叫んで…………気絶のような感じで眠った。…………秋葉は?



2人を探すと……葉子が、秋葉を部屋の隅に追い詰めて覆いかぶさっていてエッチィ!!



「ここちゃん……♡もう逃げられないよ……♡」


「くっ……!この女、ジム室で地味に鍛えてるから……フィジカルは負けるっ………」



はぁ〜ん♡床ドン王子カッコよ〜♡とか私がクネクネしてたら「丹海っ!!早くなんとかしてっ!!」なんて言うけどさ、葉子を恍惚とさせる方法ってやっぱり……あおいとのキスか、愛娘とのキスしかないんじゃない?だから近くにいる秋葉に迫ってるんだよ……と述べると「やめてっ!!」ってめちゃくちゃキレられ。いや、他に思い浮かばない…………あおいと同じようなことは…………あ、そうだ!耳の感度と言えば……音楽か!



あの曲を聴かせるしかないでしょう!と、私はスマホのYouTubeを開いて「踏み出せるから」の公式ミュージックビデオを爆音で再生した。元気なイントロが流れた瞬間、彼女はクルっとこちらを向き、動画に合わせて生熱唱を始めるから秋葉と笑いをこらえる。



『♪恐れることばかり 慣れすぎていた

もう一度 思い出したい あなたの笑顔〜』



ほんと、マイクなしでも上手いから聴き入っちゃう。「♪皆さんも歌いましょう〜!」と肩に手を回されたから一緒にサビを歌う。葉子のビジョンには観客がいるらしく、あちこちに手を振っていて。それから間奏に入り、最後のサビに行く……あれ?このまま歌い終わったら元に戻るのだろうか?と秋葉と不安になり。……怖いな。



予想通り、最後まで歌っても「ありがとうございます!」なんてジャンプしていて興奮状態が収まっていない。あと少しで曲が終わっちゃうじゃん!…………そうだ、あおいの時は葉子にマネたセリフで通用したんだから、葉子にもあおいのマネが効くはず。何を言えば……葉子は、エッチなのが好きだから……なんて考えている内に「あおちゃん……さっきの続き……しよ♡」とか、私のことをあおいだと思っている様子。いいぞ。


 

私は、さっそくふわふわのラグの上にゆっくり押し倒されて………横から秋葉が人を殺すような表情で眺めている…………どこがおおらか、なんだ君は…………ってよそ見しているうちに首をペロ……と舐められて『ふっ……んっ……!』とか言ってしまったじゃないか秋葉っ!……最高に恥ずかしい。すぐに厳しいマネージャーが赤くなって剥がそうとしたから『大丈夫、見てて。』と伝え…………うわ、私の髪を触って「好きだよ……」ってイケメンの微笑みやめてぇ!



それから葉子は耳にキスしようと顔を近づけてきた……チャンスだ。そこで『あ、あの……葉子さんっ、私から一つ、葉子さんに伝えたいことがあって………♡』と、かなりあおいに似せた声で言うと「なに……?聞かせて……♡」って、はぁ〜♡……じゃない、ここでエッチボイスをブッ込むしか気絶方法はないのなら…………葉子の耳元に近寄って、



『……あの、葉子さん……私のこと、触って…………?葉子さんに、たくさん、たくさん触ってほしいな……?あおい、今日も明日もずっと、葉子さんのことしか考えたくなくて………♡大好きなの……♡』


 

とか甘くささやいて、さらにダメ押しで耳に『チュッ♡』なんてやったら硬直して…………倒れた。すぐさま秋葉は葉子を引き剥がし、エッチな夢を見ているかのような彼女の緩んだ表情を見て「はぁ……」と手をおでこに当てて、私の隣にあったクッションにボフっと沈む。




 

……何だか色んなことがあったけど……楽しくて、あたたかな方向へ私たち、行ってるんだよね?って聞くと「……行ってる。手探りだけどね……ふぁ……」とか眠そうで彼女もかなりお疲れだ。……ヒーリング、しようか?なんて冗談で言うと一瞬ピクっ!としてから「………エッチ。」って、ちょっとだけ今考えたでしょ?なんて笑ってたら黙っていて静かだ。



秋葉さ〜ん?と、そっちを見ると目を閉じていた。……まだ、毒は抜けてないんだもんね……私も少し眠いよ……って秋葉さんをハグしてあげるとポゥ……とか黄色い光が輝きかけたからバッと離れ。これは……つまりハグする度にそうなるものなのか……?なんて考えていたら、いつの間にこちらを見ていた秋葉が「相手を癒したいと……強く願うと発動するのかな…………」目をこすり、ぼそっとつぶやき。……そうなのか。……心読んだ?



試しに、単純にハグをしてみる。……確かに、光らない。……へぇ、すごいね、私たちの想いの力って。

 



「丹海、肉じゃが残ってるから…………」

 


全部を言わなくても分かるのは、想いで通じ合っているからなんだ。



『あとで、食べよう?』と言うと「うん……」って私をぎゅっとして。秋葉さんは葉子に似てほんと甘えんぼさんだよね。なんてニヤニヤしてたら「一緒にしないで……」とか笑っていて……なんか可愛いから頭にキスしたら「丹海が葉子に似てきた……」って、それは光栄なことなのか何なのか。



『ここちゃんっ♡ともだちだよっ♡』などとふざけたら「やめて……キスするよ?」って……それ秋葉がしたいだけだよね?なんてさらにふざけると「ほんとに……キスするよ?」とか、やっぱりしたいだけじゃん〜、みたいなことをやってたらロケットさんがいつの間にドアを開けていて



〈……………君たちまだ、毒は抜けてへんみたいやな……まぁ、辛抱強う治すことやで…………〉


 

呆れと哀れみの言葉を残して去っていき、葉子は「あおちゃん……♡そんなに愛されちゃ困っちゃうよ……♡」とか寝言をつぶやき。……もうっ!私たちは治ってきてるんだからっ!



「……どうだか。厄介な不治の毒かも、丹海ポイズンっていう……」



………こめかみにキスしたら、毒はさらに悪化したようだ。熱っぽく見てくるから……そうに違いない。

 












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