↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/16

創生キャンプパラダイス その1






葉子達をだいぶ待たせてしまったので、私は秋葉と白い絨毯のらせん階段を早足で下りて一階へと急ぐ。「鍋とか見てくる……」と言って彼女は廊下から右のキッチンへと向かい、私は左のリビングルームのドアを開けて入った。



葉子はおらず、あおいがソファで「フンフン♪」と美しい鼻歌を歌いながら小さなカエルのぬいぐるみをウェットティッシュで丁寧に拭いている。それに軽くキスしたところで私と目が合ったから「にっ、丹海さんっ!」って立ち上がったところをすぐに手で肩を押さえて一緒に座った。もう、ほんとに愛らしい。



ごめん、すごい遅くなっちゃって……と謝ると「いえいえっ、私も荷物整理してましたからっ!あ、これ食べますか?作ったんですけどっ」と、茶色いハート型のクッキーのようなものをキュートな小袋でもらったのでバレンタインかな?なんて聞いたら「そうですねっ♡」って言われちゃったよ、はぁ……ごめんねファンのみんな、結婚しちゃった♡だってこんなプライベートなスイーツをもらえる仲になったんだもん♪とか喜んだら「もうっそんな!」みたいに照れちゃって本当に天使♡



さっそくお菓子を一つ頂く。あっ!ザクッとしてておいしい!チョコ味?って感激すると「それはですね、キャロブという豆の粉を使ってるんです♪バニラエッセンスを入れてチョコに似せてるんですよ♪」え?すご………絶対言われるまで分かんないよ、ねぇ私も作りたいな♪と言ってみたらすぐに大きめの付せんをバックから取り出し、銀のボールペンでスラスラとレシピを書いてくれた。


 


チョコ風 オートミールクッキー


・クイックタイプオートミール 70g

・アーモンドを砕いた粉末 15g

・キャロブパウダー 10g

・ベーキングパウダー 2g

・水 40g〜適量

・砂糖 5g 

・バニラエッセンス 6滴程度




これをですね、全部混ぜて2ミリ位に薄く広げてオープンで焼くだけですっ♪美味しいですよっ♪と渡される。……すごいよ、ありがとう!え……付せんとか持っててカッコいいね、仕事のできる女だね!……って言ったら「あ、これはいつでも出かけた際に良いお話がひらめいたらですね、忘れないようにとりあえず書いてたんですよっ♪」とか言うから『お話?』なんて尋ねると「…………えーと……」って目が泳いでるのなに〜っ?気になるっ!



気になるけど………何だかあまりそこについて突っ込んで欲しくなさそうだからとりあえず違う話題を振った。……あっ、このカエルのぬいぐるみ、すごい愛嬌あるね〜、あおいの手作り?とか聞いたら「可愛いですよね!この子は……私が事務所でのお仕事をやめる際に葉子さんにもらったんです♪『これを私だと思ってね。』って♪」



葉子………乙女な趣味だ………と思ったけど彼女の部屋にぶら下がっていたカマキリを思い出して訂正した。あれから腕を上げすぎてしまったのか………でも、何かを作ってプレゼントするって素敵だな。何でも手作りってすごいよね。



『……そうなんだ。じゃああおいは、葉子より先に引退……をしたの?』って細かく聞くと「はいっ、その時たくさんアドバイスを頂いて。本当にすごい人です姫はっ!」と、尊敬の表情で目を光らせた。葉子が3年で事務所をやめた理由は知ったけど……そうなるとあおいもかなり短い活動だったよね、何だかそこが気になる……でも聞きづらい。



私もみんなもそうだけどさ、人って色んな体験してるから、過去のことって割とデリケートだよね……なんてことを考えていたら、隣に座るあおいが「?」という風にずっと小鳥の首かしげでこちらを見つめていて。私は、ふっと目線が合った瞬間に言葉を忘れて彼女に見入った。………こっ、この人………やっぱり、とんでもなく可愛い。目が綺麗すぎる。



清楚、可憐、上品って言葉がよく似合うな……こんな真面目で美しい子がクラスにいたら私、一日中見ちゃうかも……というような想像をしていたら「丹海さん?どうかしました?」って、その声も綺麗すぎっ!『も〜あおい、全部かわいいよ〜』なんてぎゅっとしたら「ひゃっ!」とか耳の上をちょっと赤くして。………そういえば、あおいは私に好意を持っている……などとあの植物が言ってたな………というか、それをやっと思い出した。



『あの……あおい、お部屋にいたら変なこと起きなかった?』っておそるおそる聞いてみると「そ、そうなんですよっ!お部屋で怪奇現象があったんですっ!すごい怖かったですよっ、私おばけとかダメなんでっ!」……あー本当に申し訳ない、私が葉子と変なノリになったばかりに。はは………



「……あのっ、床からですね!突然ツタみたいのが伸びてきてっ、その時私いちご大福を食べてたんですけど叫んだらいちごを落っことしちゃって!!今度は私ねるねるねるねを作ろうと思ってたんですけどその時にまたツタが現れて!今度は頭と手を触ってきたからそれどころではなくなっちゃいました!!」  



『………えーと……ごめんね、あおい。実はね、私と葉子が魔法の実験みたいなことをしちゃっててさ、あおいをびっくりさせちゃったんだ。お詫びに何でもするから……許してくれない?』とエッチなガールズトークの話は伏せて伝えると「そうなんですかっ?い、いえいえっ!特にそれだけのことだったんで何にも大丈夫ですからっ。」なんて、本当に気づかいの人だな………葉子はあおいのこういうところに惹かれたんだろう。



「……えっ?あっ?何ですか?」



彼女の髪の毛に小さい紙くずのようなものが付いていたので取ってあげようとするんだけど、なかなか取れなくて。手がちょっと顔に触れてしまったら『すごい、スベスベだね?』とか言ってつい撫でているのは私が葉子から人たらしの何かを伝染されたとしか思えない。その間、なぜかあおいはされるまま静かにしていた。あ、ごめんねっと離れると「いえっ!……あの、なんだか……気持ちよかったので……」って………え?なに?この雰囲気。恋人同士?


 

「あおいは、私のこと好き?」なんて、突然聞いちゃったりする。「えっ!好きですよっ!」って即答だし、ピュアな目にキュンとする。葉子はいいのか。



どこが好き?とかさらに聞いちゃったりする。「そ、そんなっ、どこなんて…………も、もちろんっ、丹海さんの美しく笑った顔もそうですけどっ、優しくて、私のお話を聞いてくれて、親しみやすくて、あのっ、なんか不思議に居心地が良くて安らぐというか、ずっと一緒にいてもいいくらい癒されますっ!」と完璧なプロポーズを頂いたので、手を握って「しようか、やっぱり、結婚。」とか持ちかけたら「私もした〜い♡しよっ♡」なんて葉子もハグしてきて「ひ、姫っ!!」ってあおいはかなり焦ってて時代劇みたいになってるから笑った。



「にゅ〜♪遅かったね♪愛しのここちゃんとイチャイチャしてたの〜?」



そ、そ、そんなことないよ〜ははは………みたいに笑うと葉子はニマニマしてからはぁ………とため息をついて「いいなぁ〜、私もあおちゃんとイチャイチャしたいなぁ〜?」とかダイレクト攻撃魔法をいきなり繰り出すから「えっ!?」なんて、あおいはかなり遠ざかったけど葉子はぐっと近寄って「あおちゃん〜♡」って手をスリスリしたら「よ、葉子さんっ、あのっ、ちょっとっ」と困っており。………この距離を縮めるのってどうすればいいんだろうね?



「……一応、キッチン関係のもの持ってきたよ。あと必要なものは葉子が創生する。魔法の冷蔵庫は……面倒だし、いいか。」



秋葉もリビングにやってくるとすかさず「ここちゃん♡」と葉子は走ってハグを試みる。秋葉は嫌そうにスッと避けたが、素早いターンで後ろから捕まったのでいつもの「離して!」とか「離さない♡カッコいいね♡ここちゃん……♡」からの「うるさい!」が始まって、あおいと『はぁ……美女と美女の愛はいつ見ても素晴らしいね、尊いね♡』「そうですねっ♡」ってうなづき合った。





どこに行くの?と葉子に聞くと「キャンプ?」ってそれは知ってるけど………とか言ってる間に景色が変わったら、周りに何もないただの平面の無人島に着いたではないか。「これは……」と秋葉がつぶやき「すごいです!何にもないです!」とあおいは謎の喜びを見せ、葉子はわぁ〜っ!と海へ走りだしてからバシャバシャ足で水遊びを始めた。


 

いやほんと、木すらない島ってある?なんて思ってたら「なんだか『あつ森』みたいですねっ♪」とあおいは笑って。



「……『あつめろどうぶつの森林』は、葉子が好きなゲーム。彼女も私もそうだけどキャンプなどしたことない……だから葉子のキャンプといえばこれ。ここはそのゲームから多分イメージ創生されている。つまり半分以上夢世界……半霊薬なしで行けるのは、葉子の精神が常に酔っているからなのか……私たちも連れていける能力……悔しいけどすごい……」



そうだ、どこかで見たと思ったら。私もそのスマホ版をちょこっとやってたわ。じゃあここで適当に過ごせるのか、何だか面白そうだ。私たち寝ることはないけど、とりあえずテントとか張らないのかな?何にも持ってきてないみたいだけど……と思ったら島の端の方に一軒の小さな家が出現し、そこからタヌキがノソノソ出てきたから私たちは『あ〜!あつ森のタノキチだぁ!』と興奮した。



彼はボソボソと〈ボクはここの管理者ダヌ、君たちキャンプしにきたの?〉なんてダルそうに言うので、あ、はいと返事をすると4人用のテントセットを貸してくれた、優しい。と思ったら〈その代わり、ここでちょっとイベントがある時に手伝ってほしいんダヌ。〉とか言うから仕方なく了承する。秋葉とあおいがタノキチの頭やおなかやしっぽをナデナデしているので私も加わったら〈ちょっと!気安く触らないでダヌっ!お金とるよっ!〉って怒りだして、ごめんごめんと3人で爆笑しながら謝ったら彼はプンプンで自宅へ戻ってその家ごと消えた。いや……モフモフかわいすぎる♡



「はぁ……あつ森のキャラクターに触れてお話できるだなんて……島でキャンプできるだなんて最高ですっ♡って……な、なんですかっ?!姫っ?!」



「ねぇ〜あおちゃん♡泳ご〜よ〜♡」



あおいの腕を引っ張る葉子は、いつの間に白いビキニ姿になっていた。黒く長い髪が太陽に反射し、輝きの中に佇んでいて…………え〜と、これは………お金を払わないといけないやつですよね??あまりにもまぶしい美脚と美貌に見惚れちゃうんですけど。



「早く〜♪みんな泳ご〜よ〜♪」って私の腕も引っ張るけど……いやキャンプはどうした。「今テントを張るから……」と秋葉が呆れながらつぶやいていたら、そこに突然茶色のブタさんがやってきて〈俺が張ってやるよ!おめぇ初心者だろ?俺は旅のベテランだからさ♪がははっ!〉なんて笑い出すからぎょっとした。どこから出てきたんだ?



じゃあ……とか、ベテランブタさんにお任せして、葉子から渡された水着を仕方なく持って私たちは着替え…………するような場所なんて全くないが? 



「葉子……奔放すぎる……野生児………」



彼女はライブの経験者だし、早着替えでもしたのか、違うか。……う〜ん、もしかしたら3人で何か創生できるかもしれないよ?と秋葉たちに話してみる。みんなでお店に置いてあるような試着コーナーをイメージしようよ!と提案して念じたら………なんとしっかりおしゃれな黒い箱が出現した!から拍手した。すごいっ!やればできるんだよ私たちっ!



さっそくあおいから着替えた。「あ、あの………」と、おずおずと扉を開けて登場し、私と秋葉は釘付けになる。え……これも出演料払わないとダメなやつですよね?というほどのセクシーで透明な輝きに圧倒され。柔らかなライトパープルカラーがよく似合う……すご……きれい………って言ってたら「水着……あんまり着てなくて慣れてないんですけど……」とつぶやくから「いやいやっ、こんなあおいを見たらみんな好きになってナンパとかすごいことになっちゃうから!うん!もうかわいすぎ!」なんて私はアガっていて若干意味不明なコメントをした。秋葉は胸見すぎだろ。



次は私が着替える。改めて水着を広げると、なっ……なんだこれは………シャイニーなターコイズブルーの花柄の、かなり布面積の小さい三角ビキニで固まる。うぉいっ!葉子っ!なんで私のはやたらエッチで派手なんだよ!もう……こんなの着たことないよ助けて……と、まともに鏡を見ないまま扉を開けると「キャーッ!!素敵ですっ!!」なんてあおいがすぐに叫び、その声で葉子が飛んで来る。



「はぁっ♡にゅ〜、バカンスのジプシー♡歩くみんなすべてを射止めちゃう♡ほらっ私の創作水着♪ここちゃんもなんか感想言ってよ〜♪」



秋葉は、反応がない。私が呼ぶと起きたようで「ふふっ!丹海さんに見とれちゃってますね!」とあおいが笑ったら「ち、違うっ……」って言いながら「………綺麗だね。」なんて、ぼそっと小声で言われ。「きゃ〜ん♡新婚の海っ♡ドキドキの海外旅行っ♡」とか盛りアガってるけど新婚違うが?秋葉は耳が赤いまま試着室へ逃げた。



彼女の水着は、葉子と同じデザインの色違いでネイビーだった。うわっ………もう表情といい、完全にHISUIのクールビューティーなんですけど。しかも彼女はそういう感じのアイドル路線ではなかったはずなので、まるで幻の水着姿を見せてくれているような、特別な気持ちになってありがとう……とキラキラしていたら秋葉に引かれた。



今度は私がぼーっとしちゃうよ。はぁ……キャンプっていいね……って、全然やってないよ?あおいが歓喜でフォトをめちゃくちゃ撮っているから葉子はムッとしている。


……本当に、今に感謝したいなぁって思った。これは間違いなく新現実に移れたからこそできたことで。あの高校生の現実のまま3年に進級しても、絶対にここまでの仲にはならなかっただろう。ちょっと濃度の高い関係になりつつあるけどさ、はは………まあ昔も今も、愛のあるともだちであることに変わりはないから。おおらかでいたいかな。

 


みんなで海まで歩く途中、そっと秋葉に『素敵だね。』って伝えると「ありがと……」と外を向いて言われたから反対側に回りこんで顔を見ようとすると「やめてエッチ……」とかやっぱり言われて笑った。防水ケースに入れたスマホを持ってきたので『写真撮ろうよ?』と誘って撮ってたらあおいも葉子も入ってきて、そのまま水をかけ合ったりする動画も撮っていく。あおいだけのを撮影しようとすると「そんなに撮らないで。」とか秋葉マネージャーが出てきたので『君はセクハラしたから解雇になったでしょ?私がマネージャー兼プロデューサーだよ。』と告げたら真っ赤になってフラミンゴの大きな浮き輪を投げつけてきて葉子も私も爆笑した。



夢世界のせいなのか、潜るとすぐ底が見えるような浅い構造になっている。しかも、しばらく呼吸をしなくても長く水中にいられるから楽しい。ゴーグルを付けて下まで行くと、〈こんにちは♪〉とウツボの家族に挨拶され、私たちはみんなで海底に座って〈今日は天気が良いですね♪ここに初めて来たんですよ。〉とか〈タノキチが海の周りにネットを張ったから、あれが邪魔でねぇ〜〉なんて、彼らと一通り世間話を交わした。最後にラッコが落としたホタテと高そうな真珠をもらったけど……それは気持ちだけもらって返すことにする。



葉子はホオジロザメと意気投合し、青い顔のあおいも一緒に背に乗せて海中を走り回った。優しく泳いではいたけどさすがにスピードで振り落とされてしまったので、葉子は大きな輪ゴムのようなものを創生し、背びれと自分達にくくりつけて馬みたいに乗り回す。秋葉はそれを見て突然頭痛が来たかのように指を眉間に押さえ始めて、そしてさっさと海岸へと上がっていったから私もついて行った。



茶色いブタさんはどこかに消えている。テントがしっかりと張られていたのでそこでゴロゴロした。タオルで身体を拭いてから水着のまま寝そべっていると秋葉が見てきたので「エッチ。」って言ったら「……ほんとにエッチすぎるから。」とつぶやきながら冷たいペットボトルを私の腕につけてくる。ひゃん!とあおい風に叫んで、即座に奪ってから秋葉の顔に付けたら「つめたっ!」とか、こっちが睨まれたからどういうことだ。



起き上がって、秋葉と同じ体育座りになって隣に座り、カルピスウォーターのフタをひねってからゴクゴク飲む。珍しく秋葉がスマホを撮っていて「CM。『一緒に飲む?』って言って?」と要望を言うからアドリブも入れて『今日は、まだまだ遊び足りないねっ。君も飲む?』ってボトルを渡すまでをやったら「完璧じゃない?これは飲みたい。」なんて満足してくれたけど何なのこれ?



秋葉も、私のあげたペットボトルを傾けて飲んでいく。耳元で『間接キスだね♪』とささやくと「いらない……」とかすぐに返され。なんだよそれ!って……ん?よく見ると、ドリンクボトルで水を飲む秋葉の頬が日焼けではないピンクに染まっていて。『……まあ、直接キスもしたもんね♪』などとふざけたら予想通り「ブッ!」っと派手に噴いたからゴロゴロ転がって笑った。良かった……捨て身のネタだったから反応がないならそれはそれで恥ずかしい。




そのうち、海岸の方から葉子達が走ってきた。「ね〜!フルーツパーティ♡しよっ?」って葉子は木のピクニックテーブルと果物の樹木を創生し、みんなで立派なぶどう、りんご、桃を収穫する。そして地面からトゲトゲした葉っぱが創生されるとそこからニョキっとパイナップルの実が生まれたので「おお〜っ!」と感動して、慎重にナイフで採ってすべてをテーブルの上に並べた。 



「ねぇ♪みんなでカットして飾っていこうっ♡かわいいピンクの大きなお皿をイメージしよっ♡」



かわいいお皿?どんな?と分からなかったけど、とりあえず私もみんなも想像したらドン!と、ピンククリスタルのとても大きな丸平皿が生まれたから上手くいったようだ。私はりんご、あおいは桃を、葉子はパイナップルをカッティングボードの上でどんどん皮を剥いて適当に切り、秋葉は粒の大きなぶどうの房を持ち上げながら「これは……藤稔。私の好きな品種。」と一言述べて最後にお皿の端に乗っけたら最高に美味しそうなパラダイスが始まった。



葉子がピンクの華やかなノンアルコールシャンパンでポンッ!としてからシュワ〜ッ!とプラスチックのワイングラスに注いで、素敵なキャンプに水着でかんぱ〜い♡をする。……キャンプしてないが?



「はいっ!あおちゃんっ♡あ〜ん♡」って葉子が大きなパインをあげると、甘いものに目がないあおいは比較的素直に口を開けてあ〜んした。この作戦はいけるのでは?というか葉子は既に計算済みかもしれない。「あっ!あまいっ!おいひ〜れすっ♪」とあおいは満面の笑みで、見てるこちらがジューシーな気持ちになるよ♡うんうん……とかやってたら「はい……丹海。」なんて向かいに座る秋葉もりんごをくれたからパクっと食べた。



「これは……ふじ。私の好きな品種。」



なるほど、かためで風味と甘みがあって、私も好きだよ♪と感想を伝えると「ちょっとそこ〜?好き〜♡とかすぐにイチャイチャしないで〜?」とか葉子がふざけて言うから、あおいが大胆に切った桃をフォークであげて静かにしてもらう。『そうだ、愛してるゲーム一回やってみたかったんだ、やらない?』なんて私が提案をすると、パインを3つ串刺しして食べるあおいが「いいですねっ♪面白そうですねっ♪」って乗ってくれた。こういうのはノリノリなんだね、葉子と同じく意外と読めない性格だ。



「じゃあ〜まずは夫婦で♡見本を見せてみて〜?」



などと葉子はニヤっと笑うから、何を言ってるんだ……という風に、秋葉と普通にやっていく。『愛してるゲーム』は交代制で、片方が『愛してる』と言ったその時にお互い笑ったりリアクションしたらアウトというものらしい。秋葉が「丹海からやってよ……」なんて言うので、葉子が「告白スタートっ!」ってふざけた瞬間『愛してるよ秋葉っ♡』と恥ずかしくなる前に速攻魔法を発動させると「フゥッ……!」とか息を吹いて笑って一瞬でテーブルに撃沈した。


 

「ちょっと、ここちゃん弱すぎ〜ちょろい〜♡じゃあ今度はにゅ〜とやる〜♡」



葉子が秋葉と席を代わり、彼女からゲームスタートする。結構身構えていたけども、スッと真剣なまなざしに変わって顔を近づけながら「丹海。ずっと、愛してるよ。」とか………絶対無理でしょこれ。あおいも天を仰いでるぞ?どこへ行くんだ。



「あははっ!にゅ〜はこういうのに弱いよね〜♡」って弱点にされてるし。別に、私はクール系とかが好きとか、そういうのがあるわけでは………あるのか?ふと、無の表情でシャンパンを流し込んでいる秋葉を見て少し顔が熱くなってくる。恋心とか好みとかよく知らないけど……とにかくそういう何かが自分にもあるかもってことは何となく分かって。大きな桃を食べたくなったからブスっと刺してほおばった。



「ねぇ、あおちゃん♪…………やろ?」



えぇ…………葉子の目がハンターみたいになってて怖いよ。あおいはかなり遠慮気味に断っていたが、隣に座る葉子から両手をつながれると黙って彼女を見つめている。ゲームをやる雰囲気だったから私が『それでは、告白スタートっ!』とか勝手に言うと、葉子は「……あおちゃんから言って……?」なんて急に乙女モードに切り替わり。あおいは動揺して「えっ?!そんな……あのっ!」と抵抗をするけど「あおいさん、ゲームなので……」って秋葉っ、ナイスアシスト!『……そうそう、ゲームだよあおい〜』と言ってあげると、ロールプレイに慣れている彼女は役に気持ちが入ったのか、スゥ……と息を吸い。

 


「……愛していますよ、葉子さん。」



はぁ……少しお姉さんな感じで喋るあおいも素敵ぃ……みたいに惚けてたら「大好き……♡あおちゃんっ♡」って葉子が即ハグし「ギャアァッ!!姫ぇっ!!ちょっとっ!!」と、水着の触れ合いによってあおいはプテラノドンみたいな叫びを発した。「というかゲームになってない……」って秋葉が指摘し、今度は葉子がすることになり。嬉しくルンルンで告るのかと思いきや



「あ、あのね………?」



で、出たぁっ!親子で顔面距離がおかしい!両手を握られたあおいは『ほぼゼロ距離告白』に硬直している。『……秋葉も、私に言うときあんな感じでやってきたからびっくりしたよ。まんま似てるじゃん。』と小声で伝えると「そうだっけ……?」なんて自覚がないようだ。



えぇ……やっぱりキスの距離だよこれ……とか眺めてたら「あおちゃん、私のこと好き……?」って、ゲームじゃないのが始まった。そんな、まつ毛を数えられるような至近距離で言われても頭真っ白になるよ………葉子がウルウルとした瞳で見つめる中、あおいはしばらく何も言えずに放心している。



あまりに沈黙が続くので「あおいさん、ゲーム……」と、秋葉が無理のあるアシストをしたら「ゲームじゃないもん……」なんて葉子は膨れていたが、あおいは「そ、そうですよね!」とかなぜか納得をして「す、好きですよっ!とても好きですっ!」って至近距離で見つめ合って強くお返事をした。うわ……すご……プリンスとプリンセスって感じで超絶美し………動画撮ろ〜……と思ったら葉子がすかさずあおいの頬にキスしたから「ギャアァァッ!!」って古代の大絶叫が島に響いて、私と秋葉はテーブルの下で必死に笑いをこらえた。



「なんでそんなっ、するんですかっ!!軽すぎですっ!!姫っ!!」



キスにやたらキレているあおいが葉子に問うと



「え……だって……あおちゃんが好きだから……」 



強烈なカウンター来たっ!あおいは正面から食らって、マンゴーより熟した顔で絶句している。それからちょっとヤケ気味に「わ、私もっ!!私も尊敬してますし好きですけどっ!!いきなりキ……キスしたりとかはダメですよっ!!」………この話、どこかで聞いたね?と思ったら「じゃあっ!する前から言えばいいっ?『あおちゃん、キスしたいけど』って言えばいいっ?」なんて葉子が食い気味に問い始めたから何だか思い出して恥ずかしくなってきた。秋葉も横を向いている。



「あおちゃんは、キスしたくないの……?」



葉子の最大攻撃魔法が出たぁっ!あおいの全身に巨大な火柱が上がってそのまま辺りは煙に包まれる。うつむいたまま顔が見えないけど、シュウウ……って激しく発火する音に紛れて『………し……いですよ……』という声が私には微かに聴こえて。それからあおいは静かに葉子を抱きしめた。



「私は…………私のせいで、姫を悲しませたくはないですから…………葉子さん、いつも……ごめんなさい。これ以上はどうしたら良いか分からないですけど…………」



と、つぶやいたと思ったら、ものすごい勢いで葉子の頬にチュッ♡とキスを仕返して「ふふっ♪」とか笑って……………え、えええっ!?あ、あおいっ!?



「あおいさんが……ついに進化をした……」って秋葉っ!プケットモンスターみたいに言わないでっ!とか言ってるそばから葉子が真剣な顔であおいに迫って行くけど、彼女はそれに耐えられずに顔を発火させて遠くへ逃走した。「あおちゃんっ!!」って葉子は秋葉と同等の脚力でダッシュし、すぐにあおいが捕まり、またキスをしようとしたのか悲鳴が聞こえてきたので秋葉がダッシュし、旧マネージャーとして彼女を保護した。なんなのこれ?



〈あのー、盛り上がっているところ悪いんだけど、手伝って欲しいんダヌ。〉



背後からタノキチが水色と黄色のアロハシャツを着て登場したので叫ばないわけがない。「あーっ!!タノキチだーっ!!」葉子は着ぐるみを発見した3歳児のようにこちらへ目を輝かせながら突進し、そっとおなかに触れると幸せな表情でぎゅっとした。あおいはホッとして眺めている。〈ちょっと!やめてダヌっ!〉と太い胴体をいくら揺らしても葉子が離れないので、タノキチは無視をして話し始めた。



〈……えーと、盛夏の頃に、いつもスーパーアーティストを招いてここでライブをやってるんダヌ。これからたくさんのお客さんが金を握りしめて会場に来るから、君達は500人分のテイクアウトフードとドリンクを何か作って提供してほしいダヌ。〉



なにそれ、えぇ………?「だる……やっぱり帰ろう……」と秋葉は立ち上がるけど〈ダメダヌっ!もうここに滞在してるんだから約束は果たしてもらうダヌっ!〉なんて睨みつける。……まあ、ボランティアだと思ってやる?と私が言うと葉子は「別にい〜よ〜」って頭をナデナデして〈じゃあお願いするダヌ!よろしくダヌ!ここはちょっと片付けてね!〉彼はさっさとまた戻って家ごと消えた。



比較的大きなテントの中で、みんなでゴロゴロしながら考えていたら「こんな良いお天気なら、何だかお外でカレーが食べたいですね♪」ってあおいが提案し、自分達も味わう目的でフードはそれに決定する。ドリンクは……ぶどうがあるのでそれを収穫して絞ってみよう♪となった。



結局ライブスタッフみたいなものなので、葉子はツルツルした布の黒いTシャツを4人分創生する。背中には『cocoちゃんカレー♡』という謎の店名がデザインしてあって秋葉は露骨に嫌がったが「え〜?これはもちろん、ここちゃんのカレーが美味しいからだよ〜♡ね〜いっぱい作ろ〜よ♡」って海の昆布みたいにクネクネすると、すぐにTシャツを持って無言で試着室まで歩いていった。仲が良いんだか何だかよく分からない。



とりあえず巨大なカゴを用意し、大粒のぶどうを採れるだけ採ってそこに山積みにする………美味しそ♡現実離れしたすごい景色だ。葉子曰く「創生したものを削除するには、元の状態をイメージするとそうなるよ〜♪」ということらしいので、みんなで樹木とピクニックテーブルのお片付けをする。



……なるほど、秋葉の部屋にあるゴミや要らないものがいつの間にか消えていたりしたけど、私達はそうやって能力で勝手に消去を行っていたのか。そうするとワープの場合は創生ごとに前の景色を消したりしているので、少なくとも2倍エネルギーを消耗しているのでは?突然倒れて気絶することになるのも分からないでもない……と平地を眺めてたら急に客席フェンスとステージ、ライト、スピーカー、それから大画面の液晶ディスプレイが設置される。そして〈こんにちは〜♪〉と小舟に乗った動物人間さん達が少しずつ浜辺に到着して受付に並び始めたので何だか焦ってきた。これ間に合うの?



〈ヘルプを連れてきたダヌ。手伝ってくれるから、どんどん頼んでね。〉って、タノキチが子だぬきを100人位連れてきた。あまりの可愛さにあおいと葉子とスリスリしてたら〈早く準備してダヌっ!〉とか言われる。へいへいやりますよ〜っと。


  

葉子が魔法のスコップを用意して、子だぬきとみんなで海のそばの土地を掘り返して耕した。暖かな陽が当たり、土が柔らかくなったところに葉子はスマホを見ながらジャガイモ、ニンジン、タマネギの苗を創生して「みんなで大きくなるイメージしよ〜!」と呼びかける。念じることを頑張るとニョキニョキと育つまで育ち、どうやら収穫できるようになったようだ。


  

魔法の苗のようで一回採ってもすぐに野菜が創生されるからびっくりする。そうしてどんどん食材を回収していると今度は「田んぼ作って〜!」とお願いされ。とりあえず魔法のスコップでガシガシと堀を作っていき、みんなでイメージをして水をそこに満たした。すごいね、あっという間だよ。



それから葉子はまたスマホを見ながら米の苗を生み出し、みんなでチョンチョンと等間隔に植えていく。素足でやっているのですごくネチョネチョするんだけど仕方がない。秋葉が転びかけて、私が腕をつかんだら泥がついちゃったから「ねぇ〜!」とか言うけども『全身そうなるよりマシでしょ?』と話しながらとにかく作業に集中した。私たちキャンプしに来たんだよね?



植えたところからどんどん稲は成長し、すぐに穂が黄色く実ったから〈すごいダヌっ!ここまで本格的にやってくれるだなんて、ボクも手伝うダヌ!〉と、感動したタノキチは横4メートル程の大きなブルドーザーみたいのを創生してくれて、子だぬきにそれで収穫をさせた。刈ったところからどんどんまた米が生えて来るので全7台の機械が集めるだけ集めて、とても大きな袋が何10袋にもなったけど作りすぎじゃない?まぁいいか。

 


さらにその袋の中身を、タノキチが創生した巨大な四角い機械に流し込むと見覚えのあるお米がやっとできて、みんなで拍手をした。「これは……7分つき米。ぬかが少し付いているので栄養がある。」私も知っていたので『うん、そうだね。』とうなづきつつ、2人で急いでお米を炊く作業へ移る。子だぬきとタノキチが巨大なボウル創ったのでそこに500人分以上あるだろう米を入れ、水を満たす、捨てるイメージを何回かしてお米を洗い終わった。



私のこだわりだけど……土釜で炊きたいんだよね、とイメージ画像をスマホで秋葉とタノキチ達に見せた。特大のものを一生懸命念じると、ドン!という風に目の前に実物が創生されてワァー!と盛り上がる。お米と水を入れ、そこから火でやっていきたいけど時間がないので、もう既に炊きあがった……と念じると、どうやら何とか完成したようだ。急いで葉子達の方へ合流すると、同じく特大の鍋を用意しており、そこに大量の具材を入れ終わっていて「あとここちゃんよろしくっ!私たちドリンク作るねっ!」と頼まれた。



秋葉は「油を使わない野菜カレーか……何か味が足りないから、子だぬきでも……」とか聞こえない所でひどい冗談を言っていたので「豆でも入れたらいいでしょっ」とひじでつつくとニヤっと笑った。タノキチ達とにんにく、味噌、醤油、砂糖、米粉を大量創生し、ターメリック等のカレーパウダーと一緒に投げ込んでグツグツ煮る……という時間もないので、完成したイメージをみんなで念じて無理矢理、出来上がらせた。



「………うん、まあヘルシーで悪くないよ。」と言うので私も味見する。おお、美味しい。さすが新鮮な材料を大量に使っただけあってシンプルでも味わい深い。野菜を手から直接創り出すよりも、やはり自然なひと手間から収穫したものの方がエネルギーが詰まっていて味が濃いのかも……なんて考えながら『ここちゃんのカレー、美味しいね♡』って感想を述べると「もっと美味しいの作れる……丹海に食べさせてあげたい。」と言うので葉子みたいに『作って♡』とお願いしたら、なぜかハグしてきた。



ちょっとふざけて耳にキスをすると、私を見て真顔で肩をつかんで近づいて来たから『秋葉さん?どうかしました?私の口に何か付いてます?付いてませんよ?近いですよ?』と後ずさりながら警告をすると「丹海がいけない、丹海の顔がいけない……」とか人の顔面のせいにして襲おうとしているので『キャーッ!助けてぇ〜葉子っ!』って呼ぶと彼女がすぐさまダッシュで走ってきて秋葉を羽交い締めし「大丈夫っ?私がこのいやらしい女から、にゅ〜を守るよっ!」みたいな一般的ドラマ始まったからあおいが忙しいのに撮影開始して「いやらしくないっ!!離してっ!!」なんて秋葉がチェリーの如く赤い顔して青空の下で叫んだ。頭がトロピカルなパラダイスはまだまだ続くよ♪私たち……キャンプをしに来たんだよね?


 



 





  

  


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。