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愛する







「ここ、来たかったんだよね〜♡」



葉子と腕を組んだまま、入り口から緑が溢れる美しいカフェに着いた。わぁ……店内も壁から天井まで植物でグリーン一色、まるで温室にいるみたい……。空気も澄んでいる気がして、スーハーしてたら羊のような姿の動物人間さんが2人お席からニコっと微笑まれて、あ、どうもと会釈したらこっちへやって来た。



『HISUIさんですよね?お会いしたかったです♡』



「え〜ファン?嬉し〜♡」って即ハグしていくの葉子、さすがだ……この者たち人なのかも不明だけど。するとどこからか〈こんにちは♪〉という声も聞こえて。え?イルカさん?とは違う感じだ。なんだろう。



お店の奥へ行くとバーもあり、すぐ隣に照明に当てられたグランドピアノと屋内なのに大きな木が生えていて……はぁ♡おしゃれだし癒されるぅ♡その近くの席に座り、飾られている季節のお花を愛でながら私はハイビスカスとアップルのアイスティー、葉子はレモングラスとバタフライピーのソーダを、それからチョコミントのワッフルを店員さんにお願いした。前回と違ってここは明るいお店だ……何だか安心する。



葉子に『さっきの見たことない動物みたいな人たち、人間じゃない感じだけどお話ができるよね?この前のイルカもそうだけど不思議だね。』と言うと「彼らはさ、もしかしてだけど私たちと同じ、人間とかそういうのを超えたものなんじゃない?」なんてカッコよくスマイルをする。はぁ……♡って、ええっ?!私、人間超えたの??人間じゃないってこと??急に言われてイチゴのデトックスウォーターを横に倒しそうになった。



「そんなびっくりする?新しい世界になったのなら、私たちも旧型人間から新しい何かになってるでしょ。物を生み出したりもできるしさ?イルカ達もきっと、イルカ以上の何かだよね。遠い海からライブ会場に呼んだら来てくれたから、能力的には私たちと同じものを持ってる仲間だし、ともだちなんだって私は思ってるよ♪」とか、やっぱりスケール大きいな、すごいよ……さすがHISUI。

 


夢世界にも、動物の顔と姿をした人間みたいな人はいたけどさ、イルカさんとか、ここで会う人たちの方が個性というよりも癒しを感じて、優しい。そういう、場所によって出会う相手が違うのかもしれないな………とか、葉子と同じワッフルをモグモグ食べながら考えていたら「にゅ〜、クリームついてるよ♡」って取ってイタズラっぽく舐める少女マンガが始まったのだが?あおいならガラスが割れるほど高い声で叫ぶだろう、いや衝撃波か。 



恋愛とかに疎い私だからこの程度で耐えてるけどさ、本当に破壊力がすごいでしょこれ………それはまあ、一撃必殺を持つ秋葉やあおいもなんだけど。

……葉子は、そうやってみんなの心を奪っていたんだね。えーと、葉子はさ、男とか女とか関係なくみんな好きなの?とか、ガールズトークの続きを始めてみたら「うんうん、みんな好きだけど特にね、にゅ〜みたいな最高に美しい女の子には絶対振り向いてほしいって思う♡大好き♡」なんてさっそく告白され、笑顔で手を握られ。

 


いや……キュートとクールが混ざるのは強すぎる。心拍数を抑えるために冷たいお洒落ティーを飲むけど全然変わらないよ。これは魔性だね、秋葉の言う通りフェロモンの悪魔だね。 



ちょっと踏み込んだ質問をしたくなって『あ、あおいがさ、葉子が女優さんとかとすごく仲良くしてたって言ってたけどさ……』なんておそるおそる話すと「知りたい?」と聞いてきて。私が素直にうなづくと、誰も聞いてないのになぜか私の耳に向かってヒソヒソと………………え、ええっ!?し、知ってるよ?その人もその人も!!最近ネットでドラマ見てたから………えっ……こ、恋人だったってこと?と聞くと「ともだち♡」とか言うから「エッチな?」などと問うと「時々エッチな……かな?」って言う方がリアルなんですけどっ!! 



とにかく、私でも知っているたくさんの有名な方と仲の良いともだちだったようで。あのあおいも嫉妬させちゃうんだもん、すごいよ………と、ワッフルをほおばる超絶美人を眺めていたら「私よりさ、にゅ〜のこと教えてよっ、告白たくさんされてたんでしょ?それはそうだよ〜、だってそれこそ私の知ってるともだちが教室にいるようなものだもん。ドラマの撮影ですか?みたいな?あははっ!ねぇ〜私も告白したかった〜♡」なんて言われて返答に困るけど嬉しいから、はは……と笑ったら「いや〜っ♡もっと笑顔ちょうだい♡葉子好きだよ♡って言って〜?」とかスマホを構えられて『葉子♡好きだよっ♡』みたいに気合いを入れたら良いものが撮れたようで。「はぁ♡これ、ここちゃんに見せびらかそ〜♪」ってそれは面倒事になるのでやめてっ。



「そういえば、にゅ〜のこと、ここあが告白王とか言ってたもんね。」……うん、そういうことは確かにあったんだけど、私ね、告白そのものが、あんまり意味が分かんなくて。昔から自分のこと『子どもなのかな?』って思ってるんだ……とぶっちゃけると「でも……ここちゃんとは付き合ってるよね?」なんて言われ。え?



……まあ深い親友みたいな?と返すと「時々エッチな?」って、全然違う!ニヤニヤしないでっ。



「ここあはね、にゅ〜といるようになってからすごく自信がついてるみたい。小さい頃から人見知りで弱気なところがあったけど……変わったよ。まさに愛の力だね♡」なんて言われてもね、何とも……そ、そうなんだ……と返事したらニマニマ笑ってて何なんだ。「で、保健室で毎日逢瀬をするようになったの?」って違うよ!必死に説明をする間も「はぁ……♡」とかさ、あおいみたいになっててなんかどうしたらいいんだっ。助けて秋葉っ!



放課後の保健室エスケープのことを話すと「だからここあは部活ないのに帰ってくるのが遅かったんだ。」と納得し「彼氏ができたのかと」って笑うので、まあいてもおかしくないよね?とか言うと「いや、その頃は既に、にゅ〜にベタ惚れだったから。」なんて葉子は話し出す。



「ここちゃんは、私とちょっと性格違うしさ。ともだちとか、そういうの大丈夫かな〜?って思ってたら入学式があったその週から「可愛い子いた。」って何だか嬉しそうでさ♪さすがだな〜、似るな〜って♪あははっ!」



えぇ…………そんな早くから知ってたの?秋葉は秘密にしていることが多すぎる。今度、たくさん葉子ジュースを飲ませて聞き出そう……と計画してたら「ハマっちゃった?このハーブみたいに♡」なんて問うから「クセはあるけどね?」ってふざけたら「毒草かもよ?」2人で笑った。


 


「なんか一曲歌っちゃおうかな♡」


 

  

葉子はソーダを飲み終えると、ピアノの椅子に腰かけて白いアコースティックギターを創生する。そばにいるマスターは無表情だけど、先ほどの羊さん2人がギターの音を聴きつけて後ろから〈えっ見たいです!見てもいいですか?〉って、あおいみたいに瞳を輝かせながらやってきた。「どうぞー♪」と葉子は静かに奏で、伸びやかに澄んだ高音を響かせる。




 

The last day   作詞・作曲 一夜 マナ




キラキラの恋 すべて隠して 未来明日どこへ行くの?

偽りの距離 言い訳ばかり 冷めることに慣れた君


今日が 私たちのお別れの日だって

分からなかったね いつまでも笑っていた


溢れてこぼれる ふいに想う君がヒカリだったと

the last day 閉じた日に


たとえば心に 大事なものを失くしたとしても

探して 取り戻してあげる


夢の中でも会えなくていい 素敵だったそのまま

悲しみごと包みたいよ 君をもっと見ていたい、見ていたい……




 

え?………雰囲気が違う…………HISUIの優しくてカッコいいとはまた別の、なんかかわいくて切ないような………新しい一面が見えてドキッとする。



「……ありがとう♡」と葉子が歌い終えると私と羊さんは素晴らしいっと拍手して、彼女達は〈初めて聴いた歌でしたけど素敵でした♪今日会えたので、また会えますね♪〉と喜んで葉子とお話して握手して、お店から外へ出ていった。一体どういう意味なんだろう?一度会うとLINE交換みたいなのをしたことになるのかな?



  

天井からの植物とお花に包まれたウッドなテラス席へと私たちは移動し、道行く人や空に流れる雲……を眺めながらラベンダーアイスティーのシロップをカラカラと混ぜて。レアチーズケーキもつついて最高に幸せだ、葉子があ〜んと要求するので一口あげて私も食べる。うん、くどくなくて上に乗ってるレモンピールが爽やか。



『葉子、さっきみたいな曲をさ、歌ってたなんて私知らなかったよ、なんか……恋愛?みたいな曲は好きじゃないってここあが言ってたから。すごくHISUIとはまた違う、女の子らしいというか身近な感じがあって素敵だったよ。』って伝えると「そうだね〜確かにね、こういう曲は以前は書かなかったよ。でも……最近は色々作ってみて、みんなと自分の気持ちを見るのが楽しかったんだ♪」なんて、珍しくちょっと照れた感じだから『かわいい〜♡』とか言ったら「うん……ありがと♡」なんて両手で頬杖つくの、神美少女すぎるんだが?雑誌なの?雑誌だったね?………写真を撮りたくなったから撮った。 



「……面白いよね、人って。変わったり、変わらないところがあったり。『歌で平和や私の愛を伝えられるなら』という気持ちは、昔からのまま。ただ……前よりも変わったなと思うのは、HISUIの活動を通して自分を愛そうって気持ち、それから目の前の人を愛そうって気持ちが強くなったこと。心境が変わると作る曲にも幅が出てきたし、そうやって生きることもね、結果的に全体の幸せにつながるんだって信じてるよ。」 



……本当に、愛の人だ。秋葉は、こんな葉子を物心つく頃からずっと見てきて愛を考えるようになった、愛の美人姉妹だね………なんてうっとりしてたら、いきなり手の甲にキスをされる。……なに?少女マンガ第2話?というかこのカフェでも実は口説いてた??とか色んな顔をまたしていたら「あははっ♡楽しいね♡こんなことこれまでできなかったから♡」って屈託なく笑うのやめて?もうHISUI王子って呼ぶぞ?



……まあ確かに、何にも気にせずこんなことをしたり笑ったりするのはこれまでの都内であれば特に難しかったでしょうね………って、葉子何してるの?ストローの紙で作った小さいリングを…………私の薬指に…………「やったあ♡にゅ〜と結婚できたよ♡」お揃いの指輪写真を撮るなぁっ!


 

「目の前の人を愛するって言ったでしょ♡好きだよ、にゅ〜♡結婚、したね♡」などと、あらゆるファンにブン殴られることをおっしゃられているので『あおいにスマホの角で殺られるよ?』なんて警告をすると「彼女は怒らないよ♡私たち2人を愛してるから♡」って………どういうこと?私が見てた一般的なドラマみたいな展開にはならないってこと?と聞くと「そうそう♡あおちゃんはね、私たちが仲良くすることをむしろ嬉しいと歓迎する人だから。」って本当かな?……まあ確かにそうかも。


 

これまで、葉子が私にイチャイチャと話しかけて色々やっていた時も、あおいは横で喜びながら録画して興奮していた。彼女は葉子を推し……というけれども、その想いにはかなりの恋愛的な好意も含まれているでしょうから、これはあまり『ふつう』の反応ではないよね。



「私たちがセックスしててもさ、彼女にお願いしたら一緒に輪の中に入ってくれる位には優しいよね?」とか突然言わないで?何言ってるの?ケーキむせたわっ。



「あはは!たとえだよ♡」とか、ここで誰も聞いてないからって好き放題すぎる。「あ♡想像した?」とか聞くなっ、ふつうに恥ずかしい。



……葉子が言ったことを否定したいところだけどさ、あおいは………うん、あおいに関してはそれはあり得そうだよね。確かに彼女は優しいから、嫉妬みたいなものがあるとしても、それよりもみんなが悲しくならない自分の気持ちと行動を優先して選ぶよきっと。それでもし、私たちの喜びがあおいの幸せであるなら、私たちがね、喜びのために一緒に抱き合おう?って誘った場合はそうしてくれるって話でしょ?とか、本人いないところで何を喋ってるの?私も狂い始めたよこれ。


 

「そうそう、だからね、素敵なんだ彼女も。にゅ〜もあおいも、ここあも好きだ、愛を持っている者同士に隔たりはないよ。身近な人を大切にする、これが平和そして新しい現実への入り口なんだ。にゅ〜、好きだよ♡」



もう結婚したもんね?と指を見せると「ふふ♪」とイケメン微笑をして「ここちゃんに悪いなぁ、でも、にゅ〜も私のこと好きだから仕方ないよね♡」などと宣わり。何にも告白してないが?と思ったら〈素晴らしいです♡〉ってたくさんの声がして。葉子も気づいてニヤっとした。



「ねぇ、植物のみんな、にゅ〜は私のことどう思ってるの〜教えて〜?」とか葉子が質問を始めたら、私の指先にシュルシュルとツタが伸びてきて……これなんのファンタジー?テーブルに飾られた花がこっちを向いて妙な音波を頭に流している感じがする。ん?これは……まさか………と思ったらどこからか植物がミニホワイトボードを持ってきて〈はい、丹海さんは葉子さんのことを好きです。〉とか何なんだっ、どういうことっ?



葉子は笑いをこらえながら「じゃあ植物さん、にゅ〜のそれはエッチがしたい好きってこと?」なんて問うた。おいっ、何を聞いてるんだよっ!私の頭の中はぐらぐら揺らぎ、指先はどんどん汗ばんで、それを感知しているのかホワイトボードは〈混乱していますが、はい、それは可能だという答えが出ています。〉とかやめてよっ、私がエッチな女みたいじゃん!と怒ってたら〈混乱していて測定できません。〉みたいに逆ギレしてて葉子は爆笑した。


 

「次はさ、ここあとエッチなことをしたのか、教えて?植物さん♡」



なぜそんなことばかり聞くんだ。世界平和に向かう方法とか他にあるだろっ、と思ってたら〈はい、身体的な接触はしています。秋葉さんは性的な友人だという認識を50%持っており、一方で親愛の証として口の端にキ……〉



ブチッ!と絡まれていたツタから離れ、ホワイトボードにハートを撃ち込んで植物を黙らせたら葉子はおなかを抱えてヒィヒィ苦しくなるまで笑っていて。もう!私ばっかり何なんだ。………テーブルのお花が怯えていたので『大丈夫、殺さないから。その代わり、この人がどのくらいの女の子を口説き落としてきたか正確に教えて?』と半分脅しながら依頼すると葉っぱをシュルシュルと彼女のおでこに伸ばし〈200人以上です。〉とか言うから固まった。「あはっ♡嘘だよ〜そんなの♡」なんて嘘じゃないだろっ、魔性の女恐ろしすぎる。



『もうっ、あおいは私がもらうよ、葉子にはもったいない。』とか怒りながらふざけたら「なんでっ、やだ〜!私の方があおちゃん好きだもん!」って一般的ドラマ始まったね。じゃあ……と思ったら葉子も同じことを考えていたようで「ねぇ〜あおちゃんは私とにゅ〜のどっちが好きなのか教えて?お花さん♡」と言われたので、黄色い可憐なお花は両手を天井へ伸ばしてゴソゴソした。



もしかして……本人を触ってるの?あおいのホラー映画みたいな叫びが聞こえて来そうで笑いをこらえてたら〈彼女は、あなたがたどちらにも好意を持っています。尊敬の値は葉子さんの方がわずかに多く、しかし同じです。〉って解答が来て「え、じゃあさっ、どっちとエッチしたい?って本人を調査してみて♡」とかまたとんでもないこと頼んだからゴソゴソしたけど〈混乱していて測定できません。〉とかそうなるよ、今頃あおいの絶叫が響いているだろう。



もっとちゃんとした質問したら?と葉子に言ったら「そうだね!どうすれば、あおちゃんともっとキスしたりできるかなっ?」なんて……まあいいか。すると〈彼女は葉子さんを推す活動をしています。通常は不可能です。〉などと断言されてて笑ってしまった。「やだーっ!したいの〜!」って彼女が駄々をこねたら〈そのように、推される立場からの強いお願いで受け入れる可能性はあります。〉とかちゃんと答えてくれるの偉いよ。



でも、それじゃ恋人同士のやりとりになってないよね?って2人で話す。やっぱり、あおいから恋人だという認識を持ってもらわないと無理だねという結論を出して、紫イモのパンケーキを重ねて切ってモグモグしてたら「ねぇ、あおいとさ、しない?」とか言われ…………な、なにを?って問うたら「え………キャンプ♡ここあも誘って♡」なんて唐突だな。「別のこと、想像した?はぁ♡エッチなにゅ〜♡17歳だもの♡」などとニヤニヤするから無視をして『じゃあ、あおいにお土産とか買おうよ』と提案したら「うん♡親愛なるともだちのここちゃんにも買おうね♡」とかもういいよそれはっ、顔よ発熱を止めろっ。





植物さんにさよならをして、お店から外へ、葉子にくっついて大通りの方へ歩いていく。プロデューサー兼カメラマンの指示の通りにガードレールに寄りかかり、風に当たりながら髪を触ったら「いいよ♡すごくいいよ♡」と褒められ「次はあのレンガの壁の前でしゃがんでみようか♪」とか言うのでふつうにピースをしたら「はぁ〜可愛いっ♡それで小学生みたいに笑って?」という謎のお願いもされたから葉子みたいに『あははっ!』ってしたら「それだと幼すぎるのでー」とか言われた。えぇ…… 



ガラス張りのスイーツショップの中へ潜入し、そこに並べられた芸術的なマカロンの一つ一つを興奮と共に眺める。そして全種類を箱に詰めてもらい、素敵な紙袋と共に次のお店へ出発する。あおいとみんなで食べよう、ハーブティーも用意しよう。



それからしばらく歩いて、和菓子屋さんで秋葉に鯛焼きのおまんじゅうを買った。私もあんことか好きだ、和のブレンド茶もキャンプに持っていこう。すべてお買い物を終えると葉子がニコっと手を差し出したから、もはや何もツッコまずに手をつなぎ、秋葉家のリビングへ戻った。




「さぁ♡愛しのともだちが待ってるから会ってきて?私もあおいを誘うからここで集合ね?」と言われたので、2階へ上がり『あきはー起きてるー?』なんてノックしてから彼女のお部屋へ入る。ベッドにはいないようだ……と思ったらシャワーを浴びていたらしく、バスタオルで髪を拭きながら出てきた。



ああ…………そっくり。だけどこの表情、秋葉だぁ………とか近づいてあれこれ喋ってたらいつもの「エッチ……」って、そうそうこれこれ!これですよ秋葉さん!とか興奮して撮影してたら「丹海………大丈夫?だいぶ葉子の毒にやられてる………手遅れ……」なんて酷いだろっ。でも……大好きだよ♡秋葉♡って葉子のノリで抱きついたら無表情だけどちょっと恥ずかしそうにして赤くなった。……かわいいな。



そうしたら秋葉も手を回してきて……私をかなりきつくハグしてきたから少しびっくりした。「葉子と……どこに行ってきたの?」って聞くから『新宿の喫茶店とかカフェ巡りだよ。』と言うと「何話したの?」とか返され、知りたがりですね〜秋葉さん!みたいに微妙にごまかしたら「言えない話か……どうせエッチなんでしょ。」などと言われ。大体その通りなので『はは……』って笑うと「はぁ………」とかため息つかれた。なんだよっ。


  

『あ、そうそう、葉子がね、これからみんなでキャンプしよう!だって。下で待ってるって。』



そう伝えると「うん……」とだけ返事して私の首をスンスン吸っている。……親子で何なの?ここからフェロモンでも出てるの?……あ、あのさ、汗かいてるからあんまり……と言ったら「丹海の汗もいいにおいだから……」とか、変なこと言うのやめてよっと離れたようとしたら、さらにぎゅっとして止めなくて。



いや、無視して放置したいけどさ……葉子と同じく、ほんとに美しすぎるんだよこの人は………と至近距離に困っていたらスッと目が合って。「ともだちのキス……していい?」ってお願い顔で聞いてきたが?………予告をするのは、良い傾向ですよ秋葉さ〜ん。……と言ってるそばからほっぺたにしないでっ、まだ何も答えてないじゃん。



まったく。いきなりするの葉子と同じだよね秋葉は………などと、つい口を漏らしてしまったら「……されたの?」とすぐに怖いお顔に豹変し。……もうっ!説明とか色々と面倒くさい!ってなってスマホの待ち受けの耳キス写真を見せた。そしたら目を見開いて硬直したけど、別にいいじゃんともだちだし〜とか答えてたら「私もする…………それ以上を。」なんて秋葉は宣言し、バスタオルをテーブルに投げて私の肩をつかみ……………え?



  

「ともだちだけど………………口に、していい……?」


 


真剣に、聞かれた。これは…………どうすれば………



 

ともだちは……普通、そういうことはしないから聞いてきているわけで。「丹海…………したい。」と言うけど…………本当にどうすればいいか分からない。




私があれこれ考えているうちに、秋葉は下を向いてしまった。その表情を見て、心が痛むのはなぜだろう。…………そうか、これが答えなのか。あの、あおいのお話と同じなんだ。

 



私は……秋葉を悲しい気持ちにさせたくないんだ。

そして、秋葉の喜ぶ顔を見て、私も嬉しくなるってことは分かるから。

  


 

彼女に手を伸ばし、うつむく顔に触れて『いいよ、しよう?』と伝えた。するとこちらを見て「……ほんと?」って目に涙を浮かべていたから、何だかそうしたくなってハグをした。恋愛っていう言葉は分からないけど……今のこの気持ちが、もしかしたらそれに近いものなのかもしれない。



ハグをやめて腕を離すと、今にも泣きそうで儚げな女の子がそこにいて。それでも目をそらさずにゆっくりと顔を近づけるから、私は目を閉じた。

 




 

…………あったかい。


 



 

秋葉から、私を大切にする気持ちが直接伝わってくる……。そっと顔が離れると、なぜか胸が焼けるように切ない。そう見つめた瞬間、顔を深く傾けて食い込むようにキスされた。さっきよりも長くて呼吸を忘れてしまう。


 

息ができなくてお互いに離れた。平静を取り戻そうと秋葉を見ると、彼女は目を閉じながらハァハァと苦しそうで……見たこともない表情で………。「丹海……」と懸命に呼ぶ声に強く揺さぶられ、私は気がつけばキスをしていた。自分から出る声にも気付かないほど夢中になって愛を与え続け、愛を与え続けられて瞳が潤んだ。



そのうち身体の力が抜け、いつか創生した四角いテーブルの上に私が座り込んでも秋葉は離れない。熱いけれど、どこまでも優しいキスに胸が甘くて苦しくてチョコレートのように溶けていく。心の奥にまで熱を流し込まれ、自分がどこにいるのかも分からないまま彼女の首に手を回し、何度も息継ぎしては愛を与え、与えられて………。




 









 


 

 


……時間が存在するのなら、40分以上はしていたぞ。




………………………気まずい。これは………明らかにともだちのキスではない。何をしていたんだ私は。


 


そばに立ったままの秋葉は少し放心していたようだけど、私を見ると葉子のように微笑み「丹海っ!」って抱きしめてきた。

 



「ありがとう…………好き…………」


 

 

う、うん。と返事したけども、まだ秋葉の熱が残っていてかなり上の空だ。一瞬前の、自分の体験に実感が持てない。なんか……ドラマみたいに激しいことをやってしまった気がする。

 



『…………ファーストキス、だったよ。』


 


秋葉にそう伝えてみたら「私も……」と耳元から返事が来て、キスって素敵なんだな………とぼんやりしていたら「丹海………してる時の表情と声すごかった………一緒にキスシーン撮ってるような気持ちになった」とか突然言うから勝手に顔が大発火した。



『あ、秋葉がすごい長いやつしてきたからでしょっ?おかしいよっ、全然ともだちのキスじゃないし!』って指摘をしたら「それは……丹海がいけない。あんな顔されたら………そこで終わりにできるわけがない………」なんてこと言われてますます耳が赤くなってきたやめようこれ。

 



『秋葉、性欲強すぎ………』


 

私が苦し紛れにそうつぶやくと「まあ……あの人に似ているから否定はできないけど……でも一緒にしてほしくない。」ってちょっと笑ってるの何なんだ。



「性欲も……人間として生きるための大事な一部だから。そこにすべてを奪われるようなことは私は嫌いだけれど………全く無くなるようなことは望んでいない。」



意外な意見が返ってきたから私も真面目に答えた。……そうだね、なんか恥ずかしくなっちゃうこともあるけど、情熱とかそういう、自分が知らなかった力がそこに眠っている気もするんだ、大切だよ、と話すと



「丹海、エッチな人…………嫌い?好き?」



なんて、美しい顔でニヤっと聞いてきて。



はぁ……そういう大胆なところ、ほんと葉子にそっくりだね………とまた余計に口を滑らせてしまったら「そんなこと…………聞かれたの?」とか言うその顔、過去一怖いですよ秋葉さんっ! 



……そ、そりゃガールズトークだし?そ、その質問はなかったけどさ、本当にたくさんお話をしたよっ、みんなでね、仲良く愛し合おうねってこととか、秋葉が入学式の頃から私を見てたこととか、え、エッチな話もあったし……なんて喋ってたら「…………もういい。葉子の話を聞いてると頭が痛くなる。」と秋葉は眉間に指を押さえ始めた。……確かに、そんな気持ちになることはちょっとありますね、みたいに同情したので違う話をする。


 


『あのさ……秋葉、見てたの?私のこと。高1のはじめの時から……』


 


「……見てたよ。」と素直な返事がきて。じゃあ、その頃からずっと私のこと好きだったんだね?とか半分位ふざけて聞いてみたら「うん………」とか、素直にうなづくからドキッとした。私はキスの時みたいに切なくなったから、彼女をぎゅっと抱きしめる。



 

『好きだよ………秋葉。』


 


恋愛なのか、ともだちなのか。そんなことよりも単純に、この人のことが愛おしい。自分にまっすぐで、大好きだ。大切にしたい。笑顔を守りたい。



 

ずっと一緒にいられるんだね……と言うと「そうだよ。丹海のこと、ずっと見れるよ。」って花より美しく笑いかけるから泣いてしまった。



『葉子とあおいとも………一緒だね。』



秋葉に、涙を指で拭われながら話すと「うん……みんな一緒。葉子は余計だけど……」とか言うから『ここちゃん?』って怒ったら「いいよあの人は……」とまた眉間を押さえて、でも口元は少し緩んでいる……かわいい。



  

 

そうだ……葉子待ってるんだ。思い出すのが遅すぎるな。



服を着替えたいけど先にシャワーを浴びたいからちょっと待っててね、と向かおうとしたら「私も……」なんておっしゃり。秋葉は浴びたばっかりでしょ?と問うと



「さっきので汗かいたから……ちょっと………」



とかエッチだなっ!エッチなことをそもそも始めたのは君ですからねっ!と言うと秋葉は赤くなって「これはほとんど丹海がいけない………視線による魅了と直接攻撃は回避不可………クリティカルの一撃必殺狙い…………」みたいなこと言うけど知らないよっ、もういいからとにかく私の裸を見ないでねエッチ!なんてバスルームへ向かって走り出して秋葉も走ってきて脱衣所の扉を開ける閉めるの攻防があって「葉子待ってるんだからっ」と、さっさと脱いでたら後ろからぎゅっとしてきて「丹海……ともだちじゃないキス、してもいい……?」とか笑いながらふざけてくるから『もうしたよっ!』って即答すると「あははっ」なんてさぁ……ほんと葉子にそっくりすぎるよ………などとつぶやいてたら「丹海、キス……されたの?」いや急に真顔になるの怖いって!されてないっ!



「あ、丹海のスマホ待ち受け用の写真………撮ってない。じゃあお風呂………」



撮らないよ?裸でツーショとか、さすがの葉子も引くよ?と告げると「そんなことない、そうしたら葉子は対抗してさらに上を行こうとする。常に予想を超える女……」とか絶対やめてその流れ。



お風呂は、元の和風石造り空間に戻った。2人で並んで座り、私が身体を洗っていたらわざとチラチラ見てくるからシャワーを顔にかけたら同じくかけ返してきたけど、私が立ち上がったら「やめて……?」って赤くなって顔をそらした。なんなの、もうキスもした仲だが?



 

汗も汚れも流して気持ちよく着替えていたらふと、気になったから『えーと秋葉、私たちの関係はさ、キスをするような親友ということになるの?』とか聞いてみたら、彼女は下着姿であごに手を当てて考察を始めた。



長い髪つやつやきれいすぎ………ほんとスタイルいい………脚細いんだよ………え、こんな美人と私キスしたの……?本当……?などと惚けながらじっくり見てたら「……エッチ。」と案の定言われたけどその瞬間私の胸元に視線が集中したので『ムッツリエッチ。』とか言い返してて何の話してたのか忘れた、そうだよと思ったら「私たちは……束縛をしない精神的姉妹で、時々キスをするような……キス友。」なんて人差し指を立てて言ったけれども………秋葉さん、多分それは違うよ……って意見したら何も言わず「なぜ?」みたいな顔をする。うっわ、かわいいかよ。



……キス友って、キスとかハグをするただそれだけの関係でしょ?私たちは……恋人かどうかは置いておいて、とにかく告白みたいな想いは伝え合ってるんだからそれに完璧には当てはまらないよ。それから私はそうだけど秋葉は……それ以上の肉体的なものを求めたりしてるからそこに収まってないよね?などと言ってる内におかしくなってきてクスクス笑ってたら彼女は最高に湯上がりピンクに染まって「収まってるっ!」って全力で叫ぶからもうお腹痛いよ助けて。


 

……君が、私の首をしょっちゅう吸うのはスキンシップというキスの領域なので分かるけれども、抱きついてきて胸を求めたりするのは……キス友じゃないよ?と言うと「じゃあエッチな親友でいい。」って、ちゃっかり私もそこに入れるのやめて?なんて抗議をしたら「エッチなキスしてきたでしょ?」『それは秋葉が……』とか、またその話になったので2人共静かに服を着た。






『確かに秋葉の言う通り、細かな言葉が多すぎるのも問題だね、考えちゃって疲れるね………』



これまでの世界の感想を述べつつ、キャンプ用の服やお菓子とかが適当に詰められたバックを持って立ち上がる。



「私は……シンプルが好き。丹海との関係は……エッチな親友。」なんて言うから『じゃあ、あおいとは?』と聞くと「あおいさんとは……特別な親友。」っておいっ、扱い違いすぎるが?



『寂しい時に甘えるともだちだもんね?』って、ほっぺたツンツンしたら最恐に睨みつけてきた。話を変えて『私さ〜みんなで、愛してるゲームやりたいな〜あおいとかすごい癒されそう〜』と提案すると「私もやりたい。」とか秋葉の気分が乗ってきて。



『……じゃ〜行きますかっ♪エッチな親友さんっ♪』なんて言ってたらキスされそうな予感がしたから何もなく離れると、やはりそうしようとしていたようで「……丹海?どうしたの?」じゃないよっ!そんな息を吸うようにしないで?『第2の葉子』って呼ぶよっ!と怒ると「……実際、そんなにあの人、世間をたぶらかしてたのかな?」って気になってるから『知ってる?どれ位の女に愛されたか。』その答えをささやく。





『………201人以上、だって。』





数字が増えてるのは、もちろん最新の調べによるものだからだよ。



  



 






 




 


 


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