つかの間の任務
翌日、シクルにとって初めての任務がきた。通常、2日に1度戦場にでる。その他は練習や任務を行っていた。任務といっても簡単なことだ。住民の書類を整理し、司令塔に持っていくことだった。役所の階に行き、大量の書類をわけていく。出産、死亡、結婚、離婚...いろんな書類がある。分けながら箱に入れていった。
「見てよ。生まれた子の名前、パピ、プヘ、ポポだって。1年前にも5匹生まれてるからって適当すぎるだろ」
ジャンがそう言って笑っていた。
「失礼だよ」
アサヒが持っていた書類で優しく頭を叩いた。その横でリヨンが笑うのをこらえている。シクルはこの光景を見てほっとした。山のようにあった書類が、箱の中にすべて収まった。
「シクル、この箱を司令塔に持っていってくれないか」
アサヒが死亡者と書かれた箱に手をのせ言った。シクルはうなずき、箱を持って外にでた。
司令塔に行き、受け付けに向かった。
「書類持ってきました」
「わかりました。お待ちください」
と言って受話器を取り、どこかに電話をかけた。何かを話し電話をきると
「エレベーターにのって9階の司令官室に行ってください。これはエレベーターのカードです。これを持ってると乗ることができます」
と、カードを渡された。"司令官"そう言われるだけで緊張する。
エレベーターの前につくと、チンと音が鳴り、開いた。中に入ると声が聞こえた。
「何階に行きますか」
女性のカタコト声が響く。
「9階にお願いします」
そう言うと、扉が閉まり上に動いた。
再度、チンと音が鳴り、止まって扉が開いた。長い通路が見える。歩いてくと、窓が両側についていて部屋の中が見える。今日は休みなのか部屋の中が薄暗かった。カプセルが並んでいて、中にニンゲンが入っているのがうっすら見えた。
奥に進むと司令官室と書かれたドアを見つけた。ここは、最初に来た部屋だ。なのに、初めて来たような感じがした。ノックをしてドアを開けると、司令官が筆を動かしながら仕事をしているのが見えた。司令官はシクルが入ってきたのに気づき顔をあげた。
「いらっしゃい。ここに置いてくれない?」
そう言うと、再度書類に目を向けた。シクルは移動し、司令官の隣の台にゆっくりと置いた。ちらっと司令官の方を見た。書類に判を押していた。机の上にはたくさんの書類が置いてある。シクルはあるものに目がとまった。写真だ。木の枠に写真がいれられている。若い女性と小さな子。女性は白い布に包まれた赤ちゃんを抱っこしていた。
『誰だろう』
そう思っていると、目線に気づいたのか、司令官は写真立てを見えないように伏せた。
「いつまでそこにいるの。元の場所に戻りなさい」
と冷たい目を向けられながら言われた。
「はい。申し訳ございません」
と頭を下げ、すぐさま部屋をでた。司令官はやっぱり恐ろしいヒトだな。
エレベーターを待っていると、チンと音がして扉が開いた。そこには、リゼという子が体に穴があいているニンゲンの肩を持って立っていた。リゼはシクルに気がつき軽く会釈する。シクルもお辞儀した。
「ほら、あと少しだから頑張って」
とリゼは声をかけながら、シクルの横を通り過ぎていった。シクルはエレベーターにのり扉が閉まる間、リゼの背中を見ていた。
部屋に戻り、ソファーに座った。
「ありがとう。重かったよね」
アサヒがコップをさしだした。
「いえ。ありがとうございます」
受け取り、1口飲む。
「司令塔で何かあった?」
アサヒが隣に座り、シクルの顔をのぞき込んだ。アサヒには隠し事できないな。そう思う。
「リゼに会いました」
「そっか。また、仲間を直しに?」
シクルはうなずいた。
「私には理解できないな。私たちはガングと戦うためいる。直したからといって、今まで通り動けるわけじゃない。新しい機械に身体があえば良いが、そうじゃないときは用なしだ。だったら、新しいニンゲンをいれた方がいいと思うね」
アサヒの言ってることは正しい。シクルはそう思った。リゼはなぜ直してもらおうとしているんだろう。
「さて、明日はアズキ島に行くだろうから。早く寝ようか」
アサヒはのびをして、立ち上がった。シクルも立ち上がり、2人で部屋に戻った。




