リヨンの焦り
翌日、ジャンとアサヒにガングの船を壊したことを説明した。リヨンはシクルが起きたときにはもういなかった。
「そういうことだったんだ」
「すごいな。シクル」
2人は感心していた。
「そういえば、今日行く部隊が少ないって聞いたけど、もしかしてシクルのおかげかな」
アサヒが言う。夜戦う部隊だけでも、楽に戦えればいいと思っていたが、結構影響でてたらしい。
「そうなんですね。よかったです」
と微笑んだ。ジャンが立ち上がって
「シクルに負けてはいられない。訓練するとするか」
とニコニコしながら訓練部屋に入っていった。
「シクルと切磋琢磨できるから、ジャンも嬉しいんだよ」
アサヒが訓練部屋をみながらつぶやいた。
「そういえば、リヨンは今どこに」
「森林ゾーンにいるよ。昨日のことが悔しかったんだろうね」
昨日のことか。リヨンを助けたところを思い出す。あれを1人で倒すのは難しいような気がした。
「でも、前と後ろにガングがいました。あれを避けて倒すのは難しいと思いますが」
聞くと、アサヒが首を横に振った。
「昔はそういう状況になっても、倒せていたんだよ。リヨンは稀にいる天才というやつだからね。だけどこの頃は年季のせいか鈍っているみたいで、今まで以上に頑張らないとって張りきっていたんだよね」
と教えてくれた。
「そういえば、リヨンたちはどれくらいここにいるんですか」
ニンゲンは永遠ではない。気になって聞いてみた。アサヒは悩んで
「たしか、リヨンは20年だね。ここまで長生きはそうそういないよ。大体、それまでに壊れちゃうからね。私は14年で、ジャンは5年だね」
と言った。アサヒもなかなか長生きしている。
「ありがとうございます。行ってみますね」
訓練部屋に入り、森林ゾーンに向かった。リヨンに用があるのは速く走る練習をしようと思ったからだ。遠くからリヨンが素振りをしているのが見える。とても真剣そうだ。リヨンの練習が一息ついたら声をかけよう。それまでシクルは走りこみをした。
リヨンは焦っていた。体が上手いように動かない。速く元の調子に戻さないと。一生懸命剣を振った。視界の隅にちらちらシクルがいるのがわかる。走っているが、たまにこっちをみている。なにか用だろうか。そう思いながら練習していた。
「ごめん。待たせたね。なにか用かい」
シクルが走っていると、リヨンが声をかけてきた。いつの間にかこちらに来ていたらしい。
「よくわかりましたね。ここにいるって」
シクルが驚くと
「あんなに視線をおくれば気づくよ」
と笑った。
「速く走る技をコントロールしたくて。リヨンにポイントとかを教えていただきたいんです」
「ああ、そのことか、良い練習方法があるよ。見てて」
と言って、その場から消えた。頑張って目で追う。木の幹を足場に細かく移動していた。
「こんな感じだ。コントロールの練習はこれがいい。木の並びは不規則だから、先を見て適応する練習にもなる」
シクルは頷いた。
リヨンが見てくれる中、シクルは練習した。リヨンの練習はスパルタだった。休憩が一度もない。マナを少なめに足に込めゆっくりと動き、少しずつ足に込めるマナの量を多くしていった。永遠に続くリヨンの掛け声に、マナの量を心配しながらやっていた。
「リヨン、シクル。食堂に行こう」
アサヒが声をかけてくるまで練習していた。
「2人とも頑張るね。シクルはマナ大丈夫かい」
アサヒが心配そうに言う。シクルは頷いた。まだ、残っている。
「シクル。夕飯終わった後もやろう」
「え..はい.」
驚いたが、上手くなりたいというのもあり頷いた。アサヒはため息をつき、2人の前に立ちふさがった。
「やりすぎ。アサヒ、シクルを休ませてあげて。シクルもすぐに"はい"と言わない」
と2人の顔を見ながら言った。
「いや、やりこみは大事だ。あの技は慣れないと使えるようになれない」
「だとしても休んで。無理をすることによって任務にも支障がでるかもしれない。リヨン。何を焦っているの」
アサヒに腕をつかまれ、はっとしたような顔をした。そして、ふぅと息を吐いた。
「そうだね。アサヒの言うとおりだ。ごめん。シクルも今日は休んでいいよ」
そう言うと、先に行ってしまった。
「どうしたんだろう」
アサヒはつぶやいた。シクルも心配になった。しかし内心、ほっとしていた。マナは寝れば回復するとはいえ、休みは大事だった。




