武器を自分のものに
「7時30分になりました。起床のお時間です」
けたたましいベルの音とともに放送で伝えられた。むくりと起き上がり、服を着替えた。動きやすい練習用の服である。カーテンを開けると、アサヒがジャンをおこしているのがみえた。布団をまくり上げ、体を揺すっている。
「起きて。訓練始まるよ」
「もうちょっと」
会話を聞きながら、リビングにいくと、リヨンがソファーに座りながら本を読んでいた。
「おはよう。いつもあんな感じなんだ。慣れてくれ」
シクルに気がつくと苦笑いしながら言った。
数分後、ジャンたちが部屋からでてきた。さっきとはみちがえて、身なりもしっかりと整えている。全員揃ったのを確認したリヨンは口を開いた。
「今日は1日個人練習だ。シクルが入ってきたから、1週間ほどそれが続く。アサヒとジャンは岩場ゾーンでいつもの練習を。シクルは私と。休憩もはさみながらやるように」
「はい」
3人は返事をし、おのおのちらばった。
「シクル、武器を持って、そこに来て」
と指をさした。そこは入り口から正面の部屋だ。リヨンはそう言って、先に入っていった。シクルは武器部屋から手持ち大砲を取り出し、指定された部屋に入った。そこの部屋は訓練部屋という。岩場ゾーン、森林ゾーン、砂場ゾーンがあり、とても広い。
シクルとリヨンは砂場ゾーンにいた。数メートル先には的がある。
「しっかりと腰をおとし、構えて、発射」
リヨンが手本を見せた。鋭く発射された玉はまっすぐと的を貫いた。シクルも構えた。予想以上に重く、狙いが定まらない。発射された大玉はふらふらと地面に落ちた。
「マナの量は多いのに力はないんだな」
とリヨンは微笑んだ。剣の鋭さや玉の大きさは武器に込めるマナの量によって変わる。マナの量はニンゲンによって違い、マナが多いほど刀は良く切れ、玉の大きさは大きくなる。
「よし、腕立てと走り込みだな。武器の使い方は1日やれば慣れる」
リヨンの掛け声とともに、砂場ゾーンを30週、腕立て200回行った。シクルたちは、疲れや痛みはない。その分、筋トレをすると筋肉がついたりする。しかし、体に負担をかけるものはマナが消費されるので休みも必要なのである。
休憩がてら、アサヒとジャンがいる岩場ゾーンにいった。ジャンが玉を発射し、アサヒが素早く避けている。目で追うのが大変だった。
「あれは敵の攻撃を避ける訓練だね。ガングの半数以上が遠距離攻撃できるから、素早く反応できるようにしてるんだ」
と説明してくれた。敵の弾は当たり所が悪いと、ニンゲンの機能が停止してしまう。そのため、できるだけ避けられるように、目と体をならしているのだった。
「シクルもやってみるかい?もちろん低速から始める」
シクルは考え
「お願いします」
と頭を下げた。
リヨンは武器を構え、発射した。初めはのろのろと遅いため、簡単に避ける。だんだんと速くなってくると、避けずらくなってくる。あたっても、シャボン玉のようにはじけるため、身体に問題はなかった。あたる数が多くなってくると、リヨンは撃つのをやめた。
「今日はここまでかな。3日ぐらいは、この練習と筋トレ続けようか」
そういわれ、シクルはうなずいた。
数日すると筋肉がついてきたため、武器を使う練習を始めた。リヨンが言ってたとおり、武器の使い方は1日で習得できた。玉を避ける練習は、毎日やるうちに目が慣れてきた。それどころか、体が自然に反応できるようになってきたのである。リヨンいわく、大型のガングの攻撃ならよけれるだろうということだった。ガングには中型と小型もいる。こちらの方が弾の速さが速いらしい。まだまだ、未熟者だ。
「普通に撃つと、マナの量に比例して玉が大きくなる。だが、使いようによっては小さい玉で撃つこともあるから、練習するといい」
リヨンにすすめられ応用練習を始めたのは、シクルがきてから5日目だった。大砲を構え、マナをためる。そして、大きい粘土をちぎるように、ゆっくりと小さい玉をだしていった。そこからスピードをだして、的に当てる。これを何回も繰り返した。
「やってるな」
後ろから声が聞こえた。振り返るとジャンがいた。
「どうだ。上達したか」
シクルは構えなおし、小さい玉で的に当てた。ジャンはうなずき
「上手いじゃないか。よし、先輩としてポイントを教えてやろう」
と、シクルの前にたった。
「いいか。マナを操りやすい方法はイメージだ。こういう風にしたいと頭の中でえがけば、ほとんどのことはできる。忘れるなよ」
と身振り手振りを交えて教えてくれた。
「ありがとうございます」
シクルは頭を下げた。
ジャンと一緒にリビングに戻ると、アサヒとリヨンが真剣な顔をしていた。
「どうしました?」
武器を床に置きながらシクルが聞いた。すると、アサヒが口を開いた。
「明日、アズキ島に行くことになった。そこでシクルも連れて行こうと思うんだが」
「ですが、まだ実戦形式の訓練をしていません」
普通、新人はこの国で作られたガングに似た機械を使い、訓練をしてから、戦場にいく。戦場にでると、自分で自分の身を守らなければならない。この訓練を通して、攻撃力と身を守る余裕をもってるかどうか、先輩たちに判断してもらうのだった。
足手まといになると断ろうとした。すると
「いいんじゃないか。狙撃の筋はいい。それに避ける練習はしてるんだろ。何事も実戦は大事だぜ」
ジャンがシクルの肩に手を置きながら言った。それを聞いて、リヨンはシクルを見た。
「ジャンもこう言ってるが。どうだ?私たちもシクルが行くのは賛成なんだ」
シクルは考え
「わかりました。行きます」
そう伝えた。アズキ島はガング国との戦闘の場所である。ガングの武力が強くなり、押しきられそうになっているため、休んでいる部隊も急きょ参加することになったという。




