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IL FALCO NERO 〜黒い隼〜  作者: 新駒直胤
飛行場の記憶
25/28

肉と屑

「アレは、満更でもなかったけど、もう少し、情緒が、ねぇ………」

 薄明でぼんやり明るくなったホテルの一室。

 窓際のテーブルには、空けられた酒瓶が二、三本。部屋の大半を占めるベッドの脇には、衣類が二組、乱暴に脱ぎ捨てられている。

 部屋の匂いは何処と無く生臭く、その原因と思わしき塵紙は、ベッドの周囲に散乱していた。

 夜間に激しい情交が行われたことが判る。

 まぐわった(・・・・・)男女は、まさに精根尽きた様子でベッドに横たわっていた。

 ロマーナ系特有の小麦色の肌の美しい女性は、小柄なれども屈強な身体つきをした黄色人種の男の腕の中で、何とも言えぬほど充実感に満ちた表情でスヤスヤと眠っていた。


 先に目を覚ましたのは男の方、篠塚弘道(しのづかこうどう)もといファルコ・ネーロ(黒い隼)だった。

 目を覚ましたファルコは、頭痛、腕に重みを感じ、胸元に豊満な柔らかさと絡みつく感覚を覚えた。ああ、そういえば、あの後こういう状況に発展したんだったな。

 ふと、女、モニカ・フェラーリンの顔を観る。とても幸せそうな寝顔だったが、同時に罪悪感が込み上げた。思えば、こいつとは身体だけの関係のようなものになってしまっている。こいつは何時も俺のことを深く愛していてくれているというのに。

 まるで情婦じゃないか。これでは。

 初めは純粋な、淡い、ただの相思相愛の仲だった。このまま一緒になれたなら、と思っていた。

 だがその人生で最も幸せだった日々に終止符をうったのは、他でもないこの俺自身だった。

 まだモニカと一緒に住んでいた頃、とある出来事があり、俺は部屋に籠ってひとりひどく沈んでいた。そんな俺をモニカは励まそうとしてくれたのだろう。そっと俺の部屋に入り込んで来た。

 そして俺は犯した。己の哀しみ全てをぶつけるが如く、一匹の獣と化し、彼女を押し倒し組み付いた。もちろん、お互い初経験だった。背徳感が勝り、快楽など感じもしなかった。

 最悪の初経験だった。

 それから少しして、まるで尼寺に入るかのように、彼女は空軍に入った。

 その後も何度か再会しては、身を重ねた。モニカはその都度幸せそうだったが、俺は未だに背徳感が勝る。

 俺は屑だ。正真正銘、真の屑だ。

 せめてもの罪滅ぼしに、今回のモニカの話は素直に受けたほうが良いのだろうが、どうしても俺のチンケな自尊心と信念が邪魔をする。やはり屑だ。

 この状況を打開する策として、思い浮かんだのは一つ。逃げよう。モニカには申し訳ないけど、逃げよう。

 ファルコは口を歪めた。もう自己嫌悪には笑うしかない。俺はどう足掻こうが屑だからな。

 逃げるため、まずは服を着ようと、ファルコはベッドから出ようとした。しかし、モニカがそれを許さなかった。ファルコが出ようとした瞬間、モニカは更に強く彼を抱き締めたのだ。そして彼の罪悪感に訴え掛けるような寝言を吐いた。


「行か………ない…でぇ……」


 よく観ると、モニカの美しい顔に、二筋の涙の跡があった。

 尋常なき罪悪感が一瞬彼を襲ったが、彼はそれをぐっと嚙み殺し、軽く指で涙を拭いてやり、起こさないよう細心の注意を払いながら、モニカの腕を解いた。しなやかな筋肉だった。

 猿股(パンツ)を履き、床に散乱した自分の衣類を掻き集め、音を立てぬよう静かに着替え、軽くシワを伸ばした。それから洗面所に行き、静かに顔を洗い、口を濯ぎ清めた。

 そして少ない手荷物をポケットにしまうと、未だ安らかに眠るモニカの側に立った。


「こんなキザな真似、したかねぇんだがな……」


 一言断った後、ファルコはモニカにそっと接吻した。それは彼なりの謝罪であった。


「じゃあまたな」


 そう言ってファルコは退室した。




 モニカが目覚めたのは定刻。普段起床喇叭がなり響く時間。彼女の身体はそういう風に出来上がっていた。

 目覚めた瞬間、モニカは異変に気付いた。最愛の人がいない。愛の限りきつく抱き締めていた彼が何処にもいない。

 異変に気付いて三秒後、彼女は理解した。


「逃げられたかぁ〜」


 そう吐いて悔しがりながら、彼女はベッドに大の字になって倒れ込んだ。やっぱり一筋縄じゃいかないな、黒い隼(ファルコ・ネーロ)は。

 少しすると、外で何やら音がした。

 ふと、耳をすます。聞こえる。あの音が。懐かしいあの音。大好きなあの音が。

 ベッドから飛び起きたモニカは、窓辺に行き、外を覗いた。


「フフ………、やっぱり」


 視線の先の空には、朝の眩しい日光を受け、黒く輝く一機の戦闘機。空中で大きく輪を描いている。

 今回は負けたけど、次、キッカケさえあれば、その時は逃さないわよ。そして教えてあげるわ。女の意地ってやつをね。


「さぁてと、何か食べに行こっと。せっかくの休暇、楽しまなくっちゃね!」


 モニカはぐんと伸びをした。その表情は、太陽のように朗らかであった。



 美しき、アレッサンドロ海。

 その上空を、今日も黒い隼(ファルコ・ネーロ)は飛び続ける。



 to be continued……

とうとうクソ童貞を晒したクソ作者です。どうも

いわば、「やっちゃった」な回ですよ。童貞丸出し回なんて。せめてヤってから書けってなもんですよ

でもまぁ、初めてこういう艶なシーン書いたけど、結構楽しいわね。コレ

ファルコは怠惰な男ですので、屑にしてしまいました

見捨てないでね。まだマシだからね。あるところをSPAMだらけにしたことあるような男だけど、マトモだからね

それでは、別れ

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