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IL FALCO NERO 〜黒い隼〜  作者: 新駒直胤
飛行場の記憶
23/28

はじめての翼

「彼の原点? ありふれた、よくあり過ぎる話よ?」

 篠塚弘道(しのづかこうどう)が「アクィラ・ロッソ(赤鷲)」こと加藤建夫(かとうたてお)の弟子に無理矢理されてから早一ヶ月が過ぎた。世間は真夏の暑さにお見舞いされる時期になった。

 強制的弟子入れられ当初、当然のことながら弘道は抵抗したが、それはものの一日でパタリと止んだ。おそらく、「前の世界」ではもう自分は死んでしまっているということを悟ったのであろう。

 弘道の驚異的な言語学習能力に眼をつけた加藤は、現地の言葉に堪能なブンタ・スガワラに弘道の教師を務めさせた。結果、ものの二週間ほどで日常的な会話が出来るようになり、一月経った今、ほぼ完璧に(応用の応用として悪い言葉までも)マスターした。読み書きも同様である。

 一ヶ月寝食を共にして行く内に、加藤及びスガワラは、もう一つあることに気付いた。

 弘道は空に並々ならぬ憧れの感情を抱いている。それは普段の彼の行動から判明した。

 ある時は加藤のキ43を長時間じっと眺め続けていたり、いつの間にか勝手に加藤のキ43の操縦席に潜り込んでいたり、またある時は加藤・スガワラの共同書斎に入り浸り、スガワラが「前の世界」から一緒に流れて来たという、弘道がよく知る言語で書かれた航空機に関する本を乱読していたりしていたのである (同時に、彼は「前の世界」でも、大人が読むような本も普通に読めたという驚異的なことが判明した) 。

 そのことに気付いた時の加藤の表情は言うまでもなく満面の笑みであった。そして、弘道を空に連れて行く作戦が実行された。


 ある快晴の日のことである。


「おい、弘道、ちょっと」


 飛行服姿の加藤は弘道を手招きした。


「どうしたの?」と弘道はいつも通りの不機嫌そうな声で答えながら、加藤の元に寄っていく。


「いやなに、ちょっと、モニカを学校に送って行くついでにだな、用事があってな」


「うん」


「それでだな、弘道、ちょっと、お供について来てくれんか?」


「なんで?」弘道は眉をひそめる。「別に加藤さん一人でもいいじゃん」


「いや、俺一人じゃとてもじゃないが出来んことでな。モニカに頼むワケにもいかんし、スガワラは乗っける気なぞないし……な? 君しかおらんのだ」


 ここまで頼み込んで来る加藤をみるのは初めてだったので、弘道はかなり不審に思ったが、状況が状況なので、これは行かねばならんのだなと諦め、「まぁいいけど」と渋々承諾した。

 承諾したは良いが、弘道には物理的な疑問があった。


「で、別にいいとは言ったけど、あの水上機は二人乗りでしょ? 加藤さんとモニカが乗ったらいっぱいじゃないか。どうやって僕を連れてこうっての?」


 確かに、加藤が普段モニカの送迎に利用している、零式観測機(零観)という漂流(ドリフ)機の水上機は基本二人乗りであるため、三人乗るというのはかなり無理がある。

 しかし加藤はまったく問題にしなかった。


「ん? そりゃあ、後部座席に君とモニカに一緒に乗ってもらう。なぁに、二人とも小さいんだ。ちょっと窮屈かもしれんが、大丈夫。振り落とすようなマネはせんよ」


 そう言うと加藤は豪快に笑って、零観が停めてある海岸へと歩き出した。弘道はそれに着いて行く。

 道中、歩きながら加藤は訊ねた。


「弘道、飛行機に乗るのは?」


「乗ったことない」弘道はぶっきらぼうに返した。


「そうか。そうだよな」と加藤は応答した。そしてある程度行った所で立ち止まり、弘道の方に振り返った。


「ならばあれが君の初めての翼だ」


 加藤の指差す方向には、一機の破廉恥なぐらい真っ赤な複葉水上機が鎮座していた。これから空を飛ぶと思うと胸がふくらみ、弘道は後にも先にもその時だけ、配色が気にならなかった。


「おーい!」


 零観の少し手前の砂浜でモニカが大きく手を振っていた。加藤はそれに手を振り返して応じる。


「さ、モニカが待ちくたびれちゃいけない。行くぞ」


 そう言うと加藤は再び歩き始めた。弘道はその後に続いた。

 彼のはじめての空。はじめての翼。

 篠塚弘道の分岐点。ファルコ・ネーロ(黒い隼)の原点。

 それは今に翔ぼうとしている。

色々と削られて来たので、一旦カット

御都合主義的に弘道の言語学習能力がバカ抜けてるという設定。別にいいじゃないの。人間9歳までなら言語は何とでもなるですよ。何とでも

他にも何か言うべきことがあったかも知れませんが、忘れたので、思い出したら活動報告にでも書きますよ。それかTwitterか

あと、これからおそらくかなりの遅筆になります。ご了承ください

ではでは皆さま、次話をお楽しみに!

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