赤鷲
「パーパの親莫迦ぶりは、今思えば病気だったわ。ほとんど」
ほぼ全身を破廉恥なほど真っ赤に塗装され、両翼には白いストライプが走り、唯一白く塗装された尾翼には何を意味するのか、赤い猛禽類の絵が施された飛行機の愛称は「隼」。しかし、機首側面には「IL AQUILA ROSSO(赤鷲)」と白い字で堂々と書かれている。
そんな不思議な飛行機から降りて来た男の背丈は平均よりやや高いぐらいの170cmほど。体つきはかなりがっしりとしている。肌の色は日焼けのため浅黒くなっているが、目を凝らせば元は黄色であることが伺える。しかし、顔を見ると、黄色人種にしてはかなり彫りが深く、ロマーナ系と言っても差し支え無いような顔立ちをしている。眼光炯々とした、容姿魁偉な偉丈夫であった。
そんな男を迎えたのは、メカニック風の小柄な中年男であった。
「よぉ、どうだった?」
「いつも通りだ。『生かさず殺さず』。それなりの報酬は出るだろう」
男は飛行帽とマフラー、手袋を外し、中年男に渡すや否や、突如辺りをキョロキョロと見回し始めた。
「あれ? モニカは? まだ戻って来てないのか?」
最愛の一粒種を探すため、不審なぐらいキョロキョロする男を見ながら、中年男は呆れた表情をして、言った。
「まだだ。そろそろ戻って来るだろうよ」
中年男はついでに「まったく親莫迦を絵にしたような人だな」と小声で呟いた。確かに正しい表現である。本人もそれを認めている。
そして、海岸方向から、幼く、高い音程の声が聞こえて来た。
「おーい! パーパー! おかえりなさーい!」
「モニカ‼︎」
男は情けない顔をしながら、娘の声のする方を向いた。嗚呼、振り返った先には最愛の娘、我が天使がいる。おおモニカ、愛する娘よ、パーパの胸に飛び込んでおいで‼︎
だが、男の顔は一瞬で驚愕の表情に変化した。
最愛の我が天使が、男を連れて来たのだ。
「も、モニカ! おと、お父さんは、けけけけけ結婚には反対ですッ‼︎」
「いや早とちりにもほどがあるだろ」と、中年男はすかさずツッコミを入れた。もはや病的な親莫迦である。マトモな精神病院があればすぐにぶち込んでやりたい、(頭の)衛生兵と叫んでやりたい気分だ。
親はともかく、子はしっかりしていた。おそらく、何か訊きたいことがあるのだろう。彼女は、最愛の父親が何か変な状態であると直ぐに判断し、対象を中年男に絞った。
「ねーねー、スガワラのおっちゃん。この子気付かないうちにいて、それでわたしの言葉が通じないみたいなの。だから何もわからないの。おっちゃん物知りだから、この子のこともわからない?」
スガワラはモニカが連れて来た少年を眺めた。肌は黄色い。切れ長の目、さほど高くもない鼻、平均して平たい顔。服はあまり汚れていない(というよりか見たことないデザインの服だ)。頭髪もさほど乱れていない。身体もさほど汚れてはいない。
まさかとは思うが………
スガワラは少年の前にしゃがみ込み、好意的な表情を浮かべ、彼なりに優しく話し掛けた。
「ボウズ、お前、日本人だな?」
少年の表情が変わった。驚愕の色を浮かべていた。スガワラの発した言葉が、明らかに自分のよく知る言語の言葉そのものだったからである。念のためスガワラはもう一度モニカに確認をとった。
「お嬢、この子はお嬢が気が付いたら居たんだな?」
「うん」とモニカは頷く。なるほど、やはりそうか。スガワラの疑問は確信に変わった。このボウズは俺たちと同じだ。
色々話を聞きたいが、まずは警戒心を解いてやらねばならんな。スガワラは少年に何か安心するような一言を言ってやろうと思ったが、なかなか浮かばない。はてさて。
スガワラがああでもないこうでもないと悩んでいると、いつの間にか正気に戻っていた男が近づいて来て、少年の頭をわしゃわしゃと力強く撫で、少年のよく知る言語で言った。
「よし、飯にしよう!」
そう言うと、男は愛娘と少年を抱き上げ、豪快に笑いながら滑走路脇にある建物に向かって歩き出した。
師匠となる男が登場しましたね
赤いキ43の色のイメージは、スキップ・ホルム氏の〈ダゴレッド〉をイメージすれば、(ダゴレッドは液冷だけど)何とかいけるはず。知らない人はグーグル先生で「スキップ・ホルム_ダゴレッド」か「ダゴレッド_リノ」で調べれば出てくるよ!
「マンガ図書館Z」で松田未来先生の「アンリミテッド・ウィングス」を観ても出てくるよ!
今思うと、配色結構違うな……
まぁいいや!




