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IL FALCO NERO 〜黒い隼〜  作者: 新駒直胤
ゴミどもの宴
17/28

宴の終宴

宴のラストは、やっぱり花火でしょ!

ドーンと一発、ドデカイのやってやろう!

 燃料からがら、隼と狂犬は元の飛行場まで帰還した。整備を担当するポルチェニーノに言わせると、


「あと10秒遅かったら、アンタら今頃魚のエサだった」


 らしく、その激闘のギリギリぶりが伺える。

 激闘の後、互いに死力を尽くし合った猛者がやることといえば、単純、お互いを讃え合う。


「いやぁ〜、『こっちに来てから』本気を出したのは久しぶりだったよ。それでも墜とせないんだから、君はやっぱり噂通りの男だったよ。認めよう、君は強過ぎる。またやりたいね」


「ケッ、よく言うぜぇ。はじめっからその気なら、ものの五分で俺を墜とせたってのによぉ。悪いが、テメェたぁ、二度とやりたかねぇ」


 敗者であるカーネはニコニコしていたが、勝者であるファルコは渋い顔をしていた。それもそのはず、本来ならば、自分が敗者で、目の前でヘラヘラしてる敗者が勝者だったハズだったのだ。それが何故か、自分が勝者で、勝者が敗者になっている。そんな顔になるのも、無理はない。


「ああ、そうそう。『何で絶対的優位だった僕が、いきなり降参したのか』って、思ってるでしょ?」


 げっ、と思い、下に向けていた目線を前に戻すと、カーネの美しく整った顔が、目の前に迫っていた。ファルコは、優男に口説かれる小娘の気分が何となく判った気がした。


「あれね、弾切れだったんだ」


「え?」


 衝撃の事実。ファルコの口は開いたまま塞がらない。確かに、自分は撃たれ続けていた。コイツは撃ちまくっていた。嘘だろ。まさかそんな理由で。


「決闘の掟に『弾切れした場合は、状況がどうあれ降参せねばならない』ってあるだろ? それを遵守したのさ。僕の射撃を巧みに躱し続けた、君の技術の勝利さ」


 嘘だ。少なくとも、コイツが本気を出した後すぐの攻撃、それで俺は墜されていたハズだった。どういうワケか当たらなかったのは、ただの運だ。技術なんかじゃない。


「アレは技術なんかじゃない。ただの運だ」


「運も実力の内って言うだろ?」


 そう返されれば、後は何も言えない。正論だからだ。認め難いが、どうしても勝ったことにせねばならないらしい。

 畜生め。こんな勝利は嫌いだ。もっとハッキリしたものが良かった。


「あー、ファルコ君? ちょっとはだけさせて貰うよ? 少し苦しいものでね」


 この優男、あんな不服な形で負けたことを気にしてねぇのか? 大物だな。しかし、苦しいって何だろう。よほどあのパイロットスーツがキツイのか?


「構わんぞ。別に」


「へへ、じゃあ、遠慮なく」


 カーネは手早くスーツを脱ぐと、下に着ていたシャツのボタンを外した。ここでファルコは、奇妙なものを見る。

 カーネの胸部に、サラシのようなものが巻かれているのだ。そして、その下の膨らみは、明らかに、胸筋ではないのだ。

 おかしいな。コイツは男のハズだ。職業上、脂肪ってこともないだろう。はて。

 カーネは手慣れた手つきで、そのサラシを外し始めた。そこから始まる光景は、まさに森羅万象、摩訶不思議、正気を疑うものだった。

 サラシが緩むと、同時に胸が膨らむ。また緩むと、また膨らむ。さらに緩むと、さらに膨らむ。

 ファルコは自分はとうとうイカれてしまったのだと錯覚した。

 カーネの胸が、それはそれは見事な連山と化したのだ。


「おおおお、お前、おおおおお男じゃなななな、なかったたのか?」


 まさかの事態に、ファルコは軽く腰を抜かしている。一方のカーネは、知らなかったの。といった、不思議そうな表情だった。


「あれ? もしかして知らなかった? 僕は身体は女だよ?」


「ワケが判らん! 『身体は女』? え、え、え?」


 ファルコが落ち着くまで、暫くかかった。

 カーネによると、『元の世界』にいた頃は、普通に男だったそうなのだが、『この世界』に来た途端、身体が女になっていたそうなのである。

 全くワケの判らん話である。


「え? ファルコ君、『元の世界』でも男だったの? じゃあ性転換したの僕だけなワケ? どうして? あっちで女の子と遊び過ぎたから?」


 今度はカーネの気が動転し始めた。


「久しぶりにブンタのクソじじい以外の『転生者』に会えたな。ちなみに、アンタ、あっちじゃあナニやってた?」


 カーネはピタッと正気に戻り、平生になった。そして微笑み、ファルコの問いに答えた。


「あっちでも同じ。戦闘機のパイロットやってた。懐かしいなぁ。北アフリカの砂漠。色々辛かったけど」


「なるほど、大体の検討はついた。アンタのこと」


「結構有名だったんだよ? ファンレターが山ほど来たりとかさ。今でも同じだけどね」


 やっぱりこの優お……優女、気に食わん。キザな野郎だ。


「で、それはそうと、君はナニをやってたの?」


「普通のガキだった」


「あ、そ」


 自分から聞いといてそれか。ホントにいい加減なヤツだ。

 さて、話が逸れたので、本筋に戻そう。


「アンタに聞きてぇこたぁ、2つだ。まず1つ目『何故この世界に飛ばされて来たのか』。何か判ったことはあるか?」


「それは僕も調べてみたけど、サッパリだ。理由なんてないんじゃないかな。もしかして」


「そうか………。ならば2つ目『今回のこの宴の主催者は?』」


「あぁ、それは、ライオネル団の連中だね」


「ライオネルか」


 ファルコの口は歪んでいた。一応のこと、笑みである。


「ナニするか聞かないけど、今の君のキ43じゃあ、明後日でも無理なんじゃないかな?」


 ファルコは更に口元を歪めさせた。


「大丈夫、ウチに飛行機はあともう一機ある。そして爆弾もある。何故か」


 ファルコがやろうとしていることは、ただ一つだった。それを理解したカーネも、口元を歪ませた。









 ファルコとカーネの激闘が行われた翌日の早朝、ライオネル団の朝は早い。今日は近くを通る商船を襲撃する予定があるのだ。

 一番遅くに起きた隊員が、桟橋で立ち小便しながら、ぼんやりと水平線を眺めていた。今日も空は綺麗だなぁ。今日はいくら稼げるかなぁ。などと、ぼんやりと考えていた。

 小便を出し切り、二、三回竿を振って雫を払うと、小汚い(ズボン)に収めた。そして再び、ぼぅっと水平線を眺める。

 まだ眠いんだな。破廉恥なぐらい真っ赤っかな飛行機が飛んでくらぁ。中々低高度だな。郵便か。こんな朝早くに。殊勝なこった。やくざ稼業で稼いでるヤツなんかよりずっと、偉人だよ。皆んな。真面目なんだから。ズルしてねぇんだから。しかし、腹にくっ付けてんの、ありゃ爆弾(ババ)か? なんで郵便屋が爆弾(ババ)ぶらくってんだ? なんだなんだ、水上機のクセに、オレらのアジトの方へ行きやがる。はて。


 その日、アレッサンドロ海最大大手の空賊団・ライオネル団の拠点は、所属不明の赤い水上機による爆撃によって、壊滅的被害を受けた。これにより、ライオネル団も、晴れてローンデビューしたのであった。

 ファルコ・ネーロ合法的抹殺計画も、請け負う賞金稼ぎがいなくなったことや、最大出費者のライオネル団が身を引いたことなどにより、ひっそりと静かに、忘れ去られて行くのであった。



 美しき、アレッサンドロ海。

 その上空を、今日も黒い隼(ファルコ・ネーロ)は飛び続ける。



 to be continued……

爆発エンド乙

まぁ、そこそこ綺麗に締められた気がしますよ

どんどんファルコの素性が判明して来ましたねー

カーネの正体は勘の良い人なら判るでしょ。たぶん

あ、カーネの容姿は、ブレイブウィッチーズの伯爵みたいなモンだと思っといてね。そうそう、胸のついたイケメン

さてさて、まだまだ続きますよ

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