CANE ARRABBIAT
絶望に駆られ、静まり返った部屋に、通信が入る
「今雲の上に出た。凄い、素晴らしい! まるで水晶のようだ!」
この通信を最後に、勇者はそのまま星空に消えた
アレッサンドロ海の片隅にある、小さな島の小さな飛行場。
利用する者といえば、たまに来る郵便屋と、ここを拠点に賞金稼ぎ業を生業とする、ファルコ・ネーロという通り名の黄色人飛行士のみ。
オーナーの老人の仕事は、ファルコが稼いだ金の管理と昼寝。今も飛行場脇の小屋の屋根の下で、ワインボトルを抱いて、イビキをかいて昼寝している。
そしてその隣の、ボロトタン板で造られたハンガーでは、共に油まみれになった肥満体の青年と、珍しくフリーのファルコが、全体真っ黒に塗装された、純正漂流機の、キ43一式戦闘機〈隼〉の整備をしていた。
「どうだ、ポルチェニーノ。こいつの塩梅は? やっぱりアレか?」
ポルチェニーノと呼ばれた肥満体の青年は、外板が剥がされて剥き出しになった発動機、複列14気筒の空冷星型レシプロ発動機、ハ115の塩梅を見ながら、ファルコに言った。
「そっスね。ここんトコほぼ毎日空戦があったせいか、結構キテますね。一度アントン親父のトコに持ってった方が良さそうです」
「あの親父、腕は確かなんだが、余計にぼったくりやがるから、嫌なんだよなぁ……」
ワイルドキャット・ブラザーズを再起不能にした日以来、ファルコの元には連日挑戦者がやって来るようになった。しかも、どれも有名な航空傭兵や各国の撃墜王なのである。
「しかし、一体何だってんだろな。昨日は『旋風のマックス』、一昨日は『コルセアのベン』、三日前なんてあの『オリエントの狼』が来たんだぞ? 流石におかしいだろ」
「さぁ? あまりにもファルコさんが稼ぎ過ぎて、国庫を圧迫し始めたから、各国政府がファルコさんに賞金でもかけたんじゃないですか?」
「ハハハ、そいつは経典なんぞよりよっぽど上手いジョークだ」
くだらない言葉を交わし合いながら、ファルコはポケットから煙草の箱を取り出し、器用に一本咥えて、燐寸を擦って火を付けた。すると、ポルチェニーノが、油やら何やらで汚れたタオルで汗を拭きながら、一服しようとファルコの方に近寄って来た。
「ファルコさん、俺にも一本ください」
ファルコは煙草の箱を下手で投げた。ポルチェニーノはそれを受け取り、嬉しそうな顔して一本咥え、燐寸で火を付け、停止した蒸気機関車のように煙を噴いた。
暫くの間、静寂が続き、飛行場に響く音は、海の音と遥か上空を飛ぶ郵便飛行機のエンジン音のみであった。
飛行機の空を駆ける音が、陽炎立ち昇る滑走路に溶け込む。
数多の飛行機のエンジン音が聞こえて来たが、その中の一機、この辺りではかなり珍しい音が聞こえた。
二人の耳はそれをキャッチしていた。
「ねぇ、ファルコさん。この辺りに、高価な液冷を乗っけたヤツって、いましたっけ?」
「いいや、俺の知る限り、機体を新調出来るほど黒字のヤツぁ、いねぇな」
二人が聞き取ったエンジン音は、この辺りの空賊どもの乗機のオンボロエンジンの音とは全く違う、軽快で、よく整備された、かなりの高品質と思われるエンジン音であった。しかも、それはどんどん降りて来る。
「降りて来るな」
「俺の仕事ですかね」
ポルチェニーノは、たまに緊急着陸して来る飛行機の修理・整備を行うことが本業だった。
ポルチェニーノは煙草を灰皿に置くと、ハンガーから出て、滑走路に向かった。ファルコもハンガーから出た。見ると、細くて美しい機体、洗練された刃物のような翼、見るからに非常に軽量そうだが力強さを感じさせる戦闘機が、主脚を出して着陸態勢に入っていた。
「こいつぁ、珍しい。Bf109か」
着陸したBf109は、ポルチェニーノの誘導に従い、指定位置、ファルコのすぐ近くまで来た。翼の先端が丸みを帯びており、無駄の無い、全体的に洗練された機体だったので、F型と思われる。
Bf109特有の、とても狭い操縦席から出てきたのは、まるで、アレッサンドリアの少女歌劇団の男役のような、長くスラリとした手足に、男すら色を覚えるほどの美しく整った顔をし、黒を基調とした飛行ジャケットを着て、テンガロンハットを改造した飛行帽を被った、一風変わった男だった。
男は操縦席から降り、誘導などを行なったポルチェニーノに「ありがとう」と紳士的に声を掛け、チップを渡すと、真っ直ぐにファルコの方に歩み寄って来た。
「良い飛行機だろ? 純正漂流機のBf109F-4、僕専用の特別仕様さ」
物怖じせず、美しく声で馴れ馴れしく話しかけて来た男に対し、ファルコは煙草を吸いながら、至って平常心で返した。
「噂に聞いた、『狂犬』って二つ名の撃墜王ってのはお前のことか?」
「その通り。この僕こそがかの有名なカーネ・アッラッビアート大尉さ」
「それ本名なのか?」
「まさか、ただのアダ名さ。君の『ファルコ・ネーロ』ってのと同じだよ」
ファルコの眉毛が少しピクリと動いた。何か都合の悪いことだったのだろうか。
カーネは構わず喋り続けた。まさに典型的なアルゲアス軍人、といったところだ。
「ワイルドキャット・ブラザーズを再起不能にし、『オリエントの狼』の愛機をローンだけ残して木っ端微塵に。アレッサンドロ海中のありとあらゆる賊から忌み嫌われる、たった一人の若い賞金稼ぎのことが気になってね。もちろん、賊どもが君に掛けられた賞金がほぼ5割だけど」
賞金? あぁ、なるほど、最近やたら襲われるなと思ったら、賊どもの仕業か。ファルコの優れた直感は即座に答えを導き出した。
一応の確認のため、聞くまでも無いことだが聞くことにした。
「で、『夜の撃墜王』の優男軍人さんが、一介の賞金稼ぎになんの用で?」
ファルコのからかいに、カーネは「違いない」とフフフと愉快そうに笑った。事実、カーネはアルゲアス王立空軍のトップエースとしてだけでなく、方々に「現地妻」がいることでも有名だった。
カーネは一呼吸入れて笑いを抑えると、真剣な表情をしてファルコを見つめ、言った。
「単刀直入に言おう。ファルコ・ネーロ、君に決闘を申し込む」
専門用語入れりゃ良いってもんじゃねぇぞ?
そんなことよりみなさん、大事件ですよ‼︎
なんと次のプリクエルに、かのいらん子中隊が出てくるそうじゃあ、ありゃせんか!
智ビューはたぶんいないだろうけど、二代目淫獣のハルカさんが戦闘隊長になってるそうですよ!たぶん伯爵と意気投合してニパか直ちゃんあたりが食われますよ!
みなさん、こんなクソ小説読んでる場合じゃありません! 今すぐ密林に予約しに行きましょう!




