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第89話 ニコラスの継承者

「ニコラスの継承者?」


大広間に、密やかなざわめきが幾重にも広がった。少し聞き慣れないその呼び名に、ほとんどの賓客は困惑を浮かべ、互いに顔を寄せてその人物の来歴をつなぎ合わせようとしていた。


ドゥカはビズネス商会専用の席へ戻り、赤ワインのグラスを揺らしていた。口元には、依然として見下すような冷笑が張りついている。


何だよ、その継承者って。まるであの爺さんがもういないみたいじゃないか。

墨飛は心の中でそう突っ込みながら、議論の声の中で高台へ上がった。


「師ニコラスの代理として、城主閣下のご生誕をお祝い申し上げます。」墨飛は卑屈にも傲慢にもならず口を開き、懐から目立たない祝いの箱を取り出した。「錬金術の価値は守ることにあります。これは守護のペンダントです。ささやかな心ばかりの品ですが、お納めください。」


ドゥカの目に宿る嘲りは、さらに濃くなった。この小僧が露店のガラクタを取り出し、会場中に嘲笑されて、狼狽しながら高台を下りる滑稽な場面を、彼は楽しむつもりでいた。


墨飛は留め金を外し、箱の蓋を開けた。

箱の中には、一枚の盾形のペンダントが静かに横たわっていた。星辰銀の素材は宴会場の灯りの下で控えめな微光を帯び、補修を受けてはいるものの、骨董特有の歳月の痕跡をなお残している。


城主夫人は、箱の中の銀の光と符文を見た瞬間、目を鋭く凝らした。無意識に身をわずかに前へ傾け、すぐそばの侍女へ小さく合図を送る。


侍女は命を受けて前へ出ると、墨飛の手から祝いの箱を受け取り、夫人の前へ捧げた。


それを見て、人々は次々と静まり、好奇心に駆られて首を伸ばした。


夫人は間近で見つめた後、しばらくためらい、なんと細い指を伸ばしてそのペンダントをつまみ上げた。


「本当に精巧な古代守護ペンダントです。」城主夫人の穏やかな声が、静まり返った大広間に広がる。「古代陣紋の技術を復元しているだけでなく、内部の安定したエネルギー循環によって、物質的衝撃と精神的衝撃を自律的に防ぐこともできる。この技術と心遣いには、驚かされます。」


人々が見守る中、彼女はそのペンダントを自ら首にかけた。淡く光る盾形が礼服の胸元に収まり、古代陣紋が温かな微光を一筋走らせる。


大広間に、ひときわ大きなどよめきが爆ぜた。主賓席の数人の貴族は顔を見合わせ、組んでいた脚を無意識に下ろす。そのペンダントへ向ける視線には、すでに熱を帯びた探究心が宿っていた。


「物質的衝撃と精神的衝撃を防げる古代道具だと? 競売に出せば、開始価格は間違いなく50金貨を下回らないぞ!」商会の鑑定士が、衝撃を隠せず低く声を漏らした。


ドゥカの顔に浮かんでいた冷笑は、完全に凍りついた。こめかみに薄い汗がにじみ、噛み締めた顎がかすかに震える。手は水晶杯の縁をきつくつかみ、持ち主の動揺に合わせて杯の赤ワインが波紋を広げていた。


城主がわずかに手を上げ、静粛を促した。


「諸君の中には、『ニコラス』という名に馴染みの薄い者もいるだろう。」城主の低く荘重な声が、再び響いた。「先の、この都市を狙った巨大な陰謀において、事前に正確な警告を発してくれたのがニコラス閣下だった。我々はそのおかげで対応の時間を得て、危機を回避することができた。彼は深い知恵を備えた預言者であり、この都市の影の英雄でもある。」


城主は一度言葉を切り、視線を墨飛へ落とした。

「そして、今ここにいる墨飛殿こそ、その英雄の唯一の継承者である。」


たちまち、大広間には先ほど以上の激しいざわめきが巻き起こった。


先ほどのペンダントが財力と錬金技術を示すものだったとすれば、今の「英雄の継承者」という身分は、墨飛を各大勢力の代表と同等の高さへ一気に押し上げるものだった。


アルバート院長は半月形の眼鏡を押し上げ、探るような光を瞳に宿した。開発局の支局長は何かを考えるように顎を撫でる。ブランドは相変わらず無表情だったが、その視線は墨飛の上に数秒長く留まった。


しかし、城主の話はまだ終わっていなかった。


「それに加えて、もう一つ皆に告げたいことがある。」城主の視線がサンクトゥス教廷の席へ向けられる。「先日、城外において、墨飛殿と聖女猊下が力を合わせ、終焉熵教の幹部を撃退し、彼らの都市侵入の陰謀を打ち砕いたのだ!」


その言葉は重い爆弾のようだった。大広間にいる全員の視線が、一瞬で教廷の席へ集中する。無数の驚愕と探る視線の中で、純白の祭服をまとった聖女は静かな表情のまま、ただ軽くうなずいた。


会場の賓客たちは三度、心を揺さぶられた。続いて、堰を切ったような拍手が爆発する。


墨飛は耳をつんざく拍手の中で高台を下り、自分の席へ戻った。


ドゥカのひどい顔色と、周囲の軽蔑的だった視線が畏敬へ変わったのを見て、たしかに胸のすく思いがした。


めちゃくちゃ気持ちいい。でも、ちょっと目立ちすぎた気がする。墨飛は苦笑した。しばらく落ち着かない日が続きそうだな。


主だった賓客の献上は、これで一段落した。ここからは一般の賓客による献上となり、大広間の空気は比較的穏やかな交際の場へと移っていく。

残りの賓客が順に祝いの品を献上する合間に、悠揚な管弦楽が再び鳴り始めた。給仕たちは人々の間を行き交い、賓客たちの杯へ濃厚な赤ワインを注いでいく。


少なからぬ貴族や商会代表が、この機会に声をかけようと近づいてきた。熱心に集まってくる人々を見て、墨飛は困ったように椅子の中へ少し身を縮める。

隣では、フローラがシャンパングラスを手に、眉を上げて冷淡に口を開いた。「皆様、墨飛様は商会のパートナーですわ。業務委託がございましたら、まず商会秘書室へご予約くださいませ。」

執事のセバスがちょうどよく半歩前へ出て、礼儀正しくも冷ややかな微笑みで人々を隔てた。彼らは気まずそうに愛想笑いを浮かべ、引き下がるしかなかった。


耳元の騒がしさが、ようやく遠のいた。墨飛は柔らかな椅背にもたれ、長く息を吐く。

彼は注がれたばかりの赤ワインを手に取り、つかの間の安寧を味わおうとした。


その時も、高台での献上はまだ続いていた。ただ、もう注目している者は多くない。


「終火商会代表より、祝いの品を献上!」儀典官は賓客名簿に目を走らせ、続けて高らかに唱名した。


深灰色の礼服をまとった男が、人々の端から歩み出た。両手で黒い祝いの箱を抱え、まっすぐ高台へ向かう。


同じころ、後方の席から突然、陶器が砕ける甲高い音が響いた。侍従の一人が、装飾用の水晶杯の塔を誤って倒したらしい。数人の婦人たちの悲鳴と罵声が重なり、大広間は一時的な混乱に陥った。


人々は突然の騒ぎに注意を引かれ、視線を次々と後方へ向けた。


誰も気づかなかった。すでに高台のすぐ下まで来ていた灰色礼服の男が、ゆっくりと顔を上げ、口元をぎこちない弧に引きつらせたことに。


彼は黒い祝いの箱を儀典官へ渡さなかった。代わりに、親指を箱の側面の留め具へ押し当てる。


「終焉のために。」彼は低くつぶやいた。


カチリ。


燃えた炭と腐った血肉が混ざったような生臭い悪臭が、一瞬で漏れ出した。周囲の空気が粘つくように冷え、全身の肌を総毛立たせる。


墨飛が口元へ運びかけていた杯が、ぴたりと止まった。瞳孔がぎゅっと縮み、ほとんど反射的に立ち上がろうとする。


しかし、もう遅かった。


濃密な灰霧が箱の中から狂暴に噴き出し、一瞬で高台全体を呑み込んだ。


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