とあるバーニーの秘密
「繋がった? モーフェイ、あなた生きているの?」
通話符文からフローラの声が聞こえてきた。その口調には、本気の驚きが滲んでいた。
「いいえ。今あなたと通話しているのは幽霊です」
「本当にあなたなのね! なんてこと、霧の災厄から生き延びたなんて! 聖女様でさえ重傷を負ったと聞いたわ。どうやって切り抜けたの?」
「んんっ、お嬢様。まさか俺を心配して、わざわざ連絡してきたんじゃないですよね?」
「だ、誰があなたの心配なんてしたのよ。あなたが死んだり逃げたりしたら、また別の人間を探して製品を処理させなければならないでしょう。それが面倒なだけよ」
モーフェイは内心で舌を巻いた。まさに古典的なツンデレだ。
「と、とにかく。無事なら、あたくしのところへ来なさい。用があるの」
「お嬢様」モーフェイは疲労カードを切った。「俺はたった今、何度も大きな戦いをくぐり抜けたばかりで、休息が必要──」
「10金貨。今すぐ来なさい」
「はい喜んで。親愛なるお嬢様、どちらにいらっしゃいますか?」
通話符文は数秒ほど静かになった。相手がここまで滑らかに切り替えるとは、さすがに予想していなかったらしい。
「……工房まで馬車を出すわ」
「ええと……」
モーフェイは周囲を見回し、自分が下城区に着いたばかりだと確認した。
「わかりました。ただ、まだ外にいるので、できるだけ早く戻ります」
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大通りを通って工房へ戻るには遠回りになる。そこでモーフェイは、路地を抜ける近道を選んだ。
このあたりの路地は薄暗く狭い。頭上では物干し紐が網のように交差し、石畳の隙間には黒ずんだ染みが溜まり、空気にはいつも湿り気と塩臭さが混じっていた。
足を進めるにつれ、市井の喧騒は分厚い土壁の向こうへ少しずつ遮られていく。
モーフェイは人目につかない隙間へ曲がった。この近道は二棟の古い建物の影に隠れており、ほとんど一人が通るのがやっとの狭さで、衛兵でさえ巡回を面倒がる放置空間だった。
壁際には欠けた小皿がいくつか散らばり、食べかけの干し魚の欠片も残っていた。
にゃあ──
どこかから低い鳴き声がした。モーフェイは気にしなかった。だが角を曲がった先の光景に、その場で硬直した。
「鉄手」バーニーが壁の隅に縮こまっていた。大柄で頑丈な体が、理解に苦しむ形に折りたたまれている。
彼の機械の右腕が膝の上からゆっくりと動き、小皿に盛られた干し魚をそっと前へ押し出した。その慎重さは、触れただけで砕ける何かを運んでいるかのようだった。
彼の前には四匹の子猫がしゃがんでいた。子猫たちは一塊になって寄り添い、目の前の大男をまったく怖がっていない。少し離れたところでは、一匹の黒猫がこちらを見ていた。
「……ゆっくり食え。誰も取らねえから」
バーニーの声は普段の半分ほどまで抑えられていた。少しでも大きな音を立てれば、何かを怯えさせてしまうとでもいうように。
この光景の中で、機械の義肢は何とも言えないほど場違いだった。冷たい光を放つ金属が、毛玉のような小さな子猫たちに向かって動いている。その仕草には、不器用なほどの注意深ささえあった。
モーフェイは、この光景を消化するには少し時間が必要だと感じた。
彼は半歩後ずさりし、音もなく立ち去ろうとした──
その時、プロトタイプ1号が配達箱から顔を出し、子猫たちの注意を引いた。
さっ──
四匹の子猫はほとんど同時に毛を逆立てた。小皿は横から蹴り飛ばされて壁際へ転がり、猫の爪音が石の隙間に散ったかと思うと、瞬く間に姿を消した。
その場には、プロトタイプ1号を観察する黒猫だけが残った。プロトタイプ1号は何かを察したように、すぐ箱の中へ引っ込んだ。
バーニーが勢いよく振り返った。
機械の右腕が反射的に軋み、握り締められた。だが相手を見た瞬間、その動きは止まった。
彼の表情は素早く変化した。最初は怒り、次に愕然、最後には照れ隠しの怒りへと変わった。
バーニーはゆっくり立ち上がった。
彼は壁際にひっくり返った皿と、まだ半分ほど残っている干し魚を見た。その表情に、さらに一分ほどの落胆が加わった。
「てめえ!」
モーフェイは標準的な両手上げの姿勢で降参を示した。「兄貴、俺はただ通りかかっただけで──」
「失せろ!」
「はいはい、俺は何も見てません」
「当たり前だ」バーニーは彼を睨み、機械腕がぎしりと鳴った。「このことを半言でも外に漏らしたら、てめえを錬金炉に突っ込んで、道端の街灯に錬成してやる」
「はいはい、わかりました。よくわかりました」
モーフェイは三歩下がった。視線が壁際の皿へ流れ、また戻ってくる。およそ二秒ほど堪えたが、やはり発作を抑えられなかった。
「兄貴、その手って猫の毛を梳くためのものなんですか?」
バーニーは何も言わなかった。ただ機械の手を握っては開き、金属が擦れる軋みだけがはっきりと、ゆっくり響いた。
モーフェイは、今が立ち去るべき時だと判断した。
「ええと……本当に行きます。兄貴、お元気で」彼は後ずさりし、足取りは軽かった。「何も見てません、何も目撃してません……」
モーフェイは壁際から抜け出し、足を速めた。背後に誰もついてきていないと確認してから、ようやく心の中で長いため息をついた。
これはプロモコードより衝撃的だ。
角の向こうでは、バーニーが結局、子猫たちを呼び戻したのだろうと彼は思った。
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工房へ駆け戻ると、入口にはすでに一台の馬車が停まっていた。車体は質素だが、側面にはビズネス商会の紋様が焼き印されている。
「モーフェイ様ですか?」
「俺です。待たせました」
「いいえ。どうぞお乗りください」
モーフェイが車内に入ると、中は広くはないが、柔らかな座席が敷かれていた。
彼は配達箱を下ろして脇に置き、プロトタイプ1号がのそのそと這い出してきた。
「とぼけるな。お前、猫を怖がらせただろ」
プロトタイプ1号の黒豆のような目は、いかにも無実そうだった。
「あとで少し控えめにしろよ。お嬢様を怖がらせるな。わかったか?」
プロトタイプ1号は返事をしなかった。ただ黙って配達箱の中へ戻っていった。
馬車はゆっくりと動き出した。車輪が石畳を踏み、規則正しいカタカタという音を立てる。
モーフェイは車壁にもたれ、城主のもとで得た情報を頭の中で考え続けた。
彼は懐から折りたたんだ羊皮紙を取り出し、広げてもう一度読んだ。
回帰者、それで? あんたはいったいどこへ何を処理しに行った? あとどれくらいかかる? あんたが言っていた、ひどい景色の終点って何なんだ?
車内の揺れは揺りかごのように規則的だった。思考は深く絡まり、疲労感が骨の隙間からじわじわと湧き出し、まだ回っていたすべての考えをゆっくり覆っていく。
羊皮紙が手のひらから滑り落ち、彼の太腿の上で止まった。
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「モーフェイ様、到着しました」
モーフェイははっと目を開けた。反射的に膝へ手を伸ばし、羊皮紙の角に触れてようやく意識が戻る。彼は紙を再び懐へ差し込み、馬車の扉を押し開けた。
馬車は庭の中央に停まっていた。周囲には極めて整然と刈り込まれた低い生け垣があり、石畳の道は門から正面玄関の階段までまっすぐ伸びている。
庭そのものは巨大ではない。だが敷石の一つ一つが丁寧に配置され、手入れも隅々まで行き届いていた。落ち葉一枚すら見当たらない。
玄関は堂々たる石造りの扉で、金の装飾がはめ込まれている。その中央にはビズネス商会の紋章があり、線は清潔で、一分の乱れもなかった。
ここは、フローラ・カレンシーの別荘だった。




