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第53話 開門料、銅貨10枚

モーフェイは乾いた咳を一つし、顔に残るひりつく熱を無理やり押し込めた。


「何か準備しておくものはあるか?」

「道中に閉鎖法陣がある。錬金術で処理する必要がある。」

「閉鎖法陣の等級は?」

「行けば分かる。」

「……」


モーフェイはヴァルクを数秒見つめ、相手がわざと情報を隠しているわけではないと悟った。


彼はその現実を無理やり受け入れ、質問の方向を変えた。

「報酬は?」

「約束だ。」

「約束は通貨なのか?」

「お前が借りている。俺ではない。」


その一言は、値切る余地を正確無比に断ち切った。


モーフェイは長いため息をついた。

あのときスリックハンドを追いかけて頭を抱える羽目になったが、たしかにヴァルクの追跡術があったからこそ、彼は間に合って捕まえられた。この借りはさすがに踏み倒せない。


「分かった。」彼はそれ以上あがくのをやめた。「いつだ?」

「六時。街の西門だ。」

言い終えると、ヴァルクはそのまま背を向けて去っていった。扉が閉まるときでさえ余計な音一つ立てず、その効率の高さは、次の約束に急いでいるのではないかと疑わせるほどだった。


モーフェイは空っぽの工房にしばらく立ち尽くし、紙を一枚取り出して装備リストを書き始めた。


---


深夜、彼が荷造りをしていると、工房の扉がまた叩かれた。


彼は顔を上げ、窓の外の真っ黒な空を見て、それから扉へ目を向けた。胸の中に、非常に嫌な予感が浮かぶ。


今日は夜訪問が流行ってるのか?


扉を開けた彼は、その場で固まった。


入口に立っていたのは、濃い色のビロードのマントに身を包んだ人影だった。大きなフードが顔の大半を覆い隠し、月明かりの下で不自然なほど白い尖った顎だけが見えている。

顔立ちは分からない。だが、骨の奥からにじみ出るような高慢な気配だけで、モーフェイは相手の正体を察した。


「……夫人?」モーフェイは探るように尋ねた。


相手はわずかに顔を上げた。フードの陰から、血走った、明らかに寝不足で不機嫌な目がのぞく。


やはり城主夫人だった。


「ヴィクトルは?」彼女は誰かに聞かれるのを恐れるように、声を低く抑えていた。


「数日前に出ていきました。しばらく身を隠すと言っていました。」


夫人はわずかに間を置いた。視線が工房の内部を一巡し、ヴィクトルが本当にいないことを確認すると、その顔に複雑な色がよぎった。怒りと失望のあいだにあるような表情は、最後には抑制された平静へと収まる。


「どこへ行ったか知っている?」

「知りません。」


また沈黙が落ちた。


夫人は数秒うつむいて考え、それから視線をモーフェイへ移した。頭のてっぺんから足先まで彼を眺め、まるで道具の信頼性を測るようだった。


「あなたは彼の何?」

「俺は彼の……大家です。」

「ただの大家?」

「ええと……一応、協力相手でもありますかね?」


彼女は小さくうなずき、すぐに一つの容器を取り出した。


「これを預かって。」彼女は容器をモーフェイの手のひらに水平に置いた。「ヴィクトルが戻ったら、すぐ彼に渡しなさい。」


モーフェイは手の中の物を見下ろした。本能的に「中身は何ですか」と聞きたくなったが、夫人の目が、聞くべきではないことは聞くなと告げていた。

「……分かりました。」


それから彼女は肩掛けを整え、背を向けて去っていった。足音は石畳の道に、すぐ消えていく。


モーフェイは入口に立ったまま、中身の分からない容器を抱え、深夜の冷気を感じながら、心の中でそっと一言残した。

外に『開門料、銅貨10枚』って掛けておくべきか?


---


早朝、街の西門。


空はまだ完全には明るくなっていなかった。配達箱を背負ったモーフェイは、遠目にもヴァルクがすでにそこにいるのを見つけた。

相手は道端で最後の装備確認をしていた。動きは落ち着いていて無駄がない。腰には幻獣瓶が下がり、瓶身から青白い電弧が透けて見える。最初から最後まで顔を上げなかったが、モーフェイが近づいていることには明らかに気づいていた。


「来たか。」

「来た。」モーフェイは答え、自然にヴァルクの横へ視線を流し、そこで一瞬止まった。


ヴァルクの隣には、背の高い女性が立っていた。暗い色の革鎧をまとい、腰には外装が少し過剰に改造されたルーン銃を下げている。

彼女はちょうど顔を伏せ、手の中の小さな算盤を「ぱちぱち」と弾いていた。


モーフェイがこの人は誰だろうと考えていると、相手は顔を上げた。視線が合う。彼女は慣れた手つきで算盤の珠を一つ弾き、そのまま口を開いた。

「あんたが例の錬金術師? 聞きたいんだけど、あんたくらいの技術支援って、今回の危険手当はいくら? 時間単価? それとも階層ごとの歩合?」


その口調は誠実で専門的だった。初対面の挨拶というより、同業者と相場を照合しているようにしか聞こえない。


モーフェイは二秒ほど固まり、今回の隊の基本的な空気が、自分の想像していた「熱血冒険」とはかなり違うらしいと悟った。


「俺は……」彼は道端に座っているヴァルクを見た。「彼女は?」


「カミラ。」ヴァルクは顔も上げず、いつも通り淡々と言った。「もう一人、雇った傭兵だ。」


「ああ。」モーフェイはうなずき、あらためて「早く相場を教えろ」と顔に書いてあるカミラを見て、正直に答えた。「俺はこいつに借りを返しに来ただけだ。無料で。」


カミラの算盤を弾く手がぴたりと止まった。もともとの職業的な笑顔は一瞬で崩れ、市場破壊者を見るような嫌悪の目に変わる。

彼女は歯が痛そうな「ちっ」を漏らし、算盤を強めに裏返すと、ぱちんと胸元へしまい込み、反対側へ歩いていった。


モーフェイはほっと息をつき、隊の反対側へ数歩移動して、配達箱を地面に置き、出発を待った。

ヴァルクは折り畳んだ地図を取り出し、低い壁の上に広げ、地下城内の経路を指でなぞった。カミラがのぞき込み、何かを密かに計算しているようだった。

三人はそれぞれ別のことをしている。現場は、まだ確定していない会議を待っているような静けさだった。


モーフェイは空を見上げ、そろそろ時間だろうと思った。ちょうどそのとき──

街の西門の外から、急ぎもせず、遅くもない足音が聞こえてきた。


まず目に入ったのは、無駄のない黒甲冑だった。続いて腰に添えられた杖が、朝の光を受けて冷たい線を反射する。


ロックが西門の影へ足を踏み入れた。視線はまずヴァルクへ落ち、続いてカミラをかすめ、最後にモーフェイの顔で止まった。


二人の視線が真正面からぶつかる。


空気が突然、静まり返った。


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