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小悪魔令嬢の陥落~正体不明の第二王子に身も心も奪われ、裏切り者たちを奈落へ突き落とす~  作者: 猫野 にくきゅう


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第14話 報復の始まり、番犬の領分(テリトリー)

 毎夜のように、私はあの暗く冷たい塔の牢獄から連れ出されていた。


 仮面をつけられ、薄布一枚の娼婦のような姿で、怪しげな地下の宴や、貴族たちの隠微なサロンの隅へ。そこでカイルにどう扱われたのか、思い出すだけで下腹の奥がズキズキと熱く疼き出す。


 大勢の男たちの下劣な視線に晒されながら、暗がりで強引にドレスを捲り上げられ、容赦なく急所を蹂躙される日々。


(どうして私がこんな目に……でも、あんなに激しく扱われると、頭の中が真っ白になって、息もできないくらい気持ちよくて……)


 快楽にすっかり毒された脳は、もはや令嬢としての常識を完全に失っていた。

 今や私は、あの無骨な革手袋の感触と、獣のような雄の匂いがないと、夜もまともに眠れないほどに調教されきっていたのだ。


 そんなある夜のこと。


 カツン、カツンと、石造りの廊下に足音が響いた。


(カイルが来た……!)


 尻尾を振る犬のように鉄格子にすり寄った私の前に現れたのは、しかし、待ちわびた番犬ではなかった。


「よぉ、王太子の婚約者様。随分といい顔で待ってるじゃねえか」


 ニタニタと下卑た笑いを浮かべて立っていたのは、以前私を襲おうとしたあの小悪党、ベリル・サベージだった。


「ベリル……っ!? どうしてあなたが……!」


「見張りの兵士に少しばかり銀貨を握らせてやったのさ。前回は邪魔が入っちまったが、今日こそはあの時のお仕置きの続きをたっぷりしてやるよ」


(嘘よ! カイルがこんな奴と取引するなんて……)


 ガチャリ、と無造作に鉄格子の鍵が開けられる。

 牢獄の中に足を踏み入れたベリルから、安酒と脂汗の混じった不快な悪臭が漂ってきた。


「ひっ……来ないで!」


 私は咄嗟に後ずさった。

 かつては彼への恐怖で震えていたが、今は違う。


 圧倒的な強者であるカイルの「本物の雄の匂い」と「暴力的なまでの熱」を知り尽くした私の身体にとって、目の前にいるベリルは、ただただ生理的な嫌悪を催す不快な害虫でしかなかった。


「お高く止まりやがって。どうせセドリック殿下に捨てられた泥舟だろうが!」


 ベリルが私の腕を乱暴に掴み、押し倒そうと体重をかけてきた瞬間。


(カイル以外の男に触られるなんて耐えられない! 汚い、汚いわ……! お願いカイル、早く私を塗りつぶして!)


 私が悲鳴を上げるよりも早く、背後の暗闇からヌッと伸びてきた巨大な手が、ベリルの襟首を鷲掴みにした。


「――お前如きに、コイツを渡すわけがなかろう。馬鹿め」


「がはっ!?」


 次の瞬間、ドゴォッ! 

 と鈍い音が牢獄に響いた。


 カイルが無造作に腕を振るっただけで、ベリルの身体は宙を舞い、石の壁に激突して白目を剥いて崩れ落ちた。


 怒鳴り声も、感情の昂ぶりもない。

 ただ「ゴミを排除する」という完全な処置としての、無機質で冷徹な暴力。


 その一切の慈悲もない圧倒的な強さと、彼の背中から立ち上る静かな怒気に触れた途端、私の心は恐怖どころか、狂おしいほどの安らぎと歓喜に満たされていた。


 カイルは気絶したベリルを太いロープで簀巻きに縛り上げると、バケツの冷水を頭から浴びせた。


「ひぎぃっ!? な、なんだ!?」


「目を覚ましたか、ネズミ」


 むせ返りながら目を見開いたベリルの前で、カイルは私を強引に腕の中に引き寄せた。


「よく見ておけ。こいつは、俺の女だ」


 宣言と共に、カイルの大きな手が私の後頭部を掴み、逃げ場のない濃厚なキスが降ってきた。


「んっ……ぁ、んちゅ……っ、ぁあ……っ」


 ただの口づけではない。

 私が誰の所有物であるかをベリルの脳裏に焼き付けるための、圧倒的で支配的な蹂躙。口内を徹底的に貪られ、息継ぎすら許されない激しさに、私の身体はビクンビクンとあられもない反応を返してしまう。


「て、てめぇ……! 一介の兵士の分際で、殿下の婚約者に手を出したと知れ渡れば、ただじゃ済まねえぞ! 殿下に言いつけてやる!」


 拘束されたベリルが、恐怖と屈辱で顔を真っ赤にして負け惜しみを叫ぶ。


 かつて自分を脅かした男に、こんなにも淫らで無様な姿を見せられているというのに。

 ……ああ、どうして。


 『観客』がいるという事実が、強烈なスパイスとなって私の雌としての本能を異常なまでに刺激するのだ。


(言えばいいわ……。私はもう、あの薄情な王子様のものじゃない。この最強の番犬の、ただの雌犬なんだから……っ!)


「ふぁ……んっ、カイル……もっと……っ」


 ベリルの罵声など耳に入らないかのように、私はカイルの首にすがりつき、さらに自ら舌を絡ませて彼との深い口づけに溺れていった。ベリルの小市民的な悪意など、カイルの巨大な支配欲の前では塵芥に等しい。


 私はただ、暗闇の中で私だけを守り、私だけを貪ってくれるカイルの熱い体温だけを求めて打ち震えていた。


 ……翌朝。


 王城の正門前に、簀巻きにされ、猿轡を噛まされた全裸の男が放り出されているのが発見された。


 その首には「ベリル・サベージ」と書かれた札が下げられていたという。

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