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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第13章 土と牙の試練

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第098話 鱗の壁

岩場に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。


乾いた土と石の匂い。風が岩の隙間を抜け、低く唸る。足場は不安定で、平坦な場所はほとんどない。訓練場とはまるで違う地面だった。


「3体、右の岩陰に。2体、奥」


アイリスが囁く。いつもの余裕は消えている。


「計5体か」


ユイは小さく息を吐いた。想定は3体前後。数が違う。


「カイル、前に出るな。まず動きを見る」


「了解です」


カイルは踏み込みを抑え、大剣の柄に手をかけたまま様子を見る。


岩陰からアーマーリザードが姿を現した。


四足歩行。灰褐色の鱗が全身を覆い、鈍く光を弾く。体長は約2メートル。資料通りの外見――だが、体表の鱗が妙に厚く見えた。


「見るだけだと向こうが先に動く」


アイリスの声と同時に、ユイが決断する。


「行くぞ」


「任せてください!」


カイルが盾を構え、一直線に踏み込んだ。アーマーリザードが即座に反応し、鋭い爪を横薙ぎに振るう。


金属音が岩場に響いた。


カイルの盾が受け止める。衝撃で足元の小石が跳ねる。


そのまま剛力斬を振り下ろした。


刃は確かに背へ届いた――だが、弾かれた。


「……え?」


確実に当たっている。それでも鱗が厚すぎて食い込まない。


「関節を狙え。鱗が薄い」


ユイが叫ぶ。前脚と胴の接合部、後脚の根元。そこまで誘導するしかない。


「どうやって誘導する!」


カイルが盾で連撃を受けながら叫ぶ。押されている。


ユイは即断した。


「セイラ、足元を固めろ。ハンス、体勢を崩せ。エルザ、関節へ差し込め」


3段階の連携。


「……承知した」


セイラが杖を掲げる。氷槍が前脚手前へ突き刺さった。


だが凍結の広がりが浅い。リザードは後方へ跳び、範囲外へ逃れた。


「ハンス、今だ!」


「……!」


ハンスが踏み込み、重撃を振り下ろす。だが巨体はすでに移動していた。空振りの衝撃が地面を叩く。


エルザは強い日差しを見上げ、一瞬止まる。影が薄い。影潜みが使えない。


「……別角度から行く」


岩陰へ回り込むが、連携は崩れた。


奥の2体がこちらへ接近する。


3体同時。


「リリア、後衛を下げろ」


「承知しましたわ」


セリスとリリアが岩陰へ退く。


乱戦になった。


カイルが1体を引き受け、ユイは風刃斬で別の1体を牽制する。しかし直線軌道の斬撃は岩に阻まれ、角度が取れない。


鱗が硬い。攻撃が通らない。


時間だけが削られていく。


ランクCの相手に、ここまで苦戦するはずではなかった。


セイラが深く息を吸い、再度詠唱する。


氷が広がる。今度は前脚を確実に捉えた。


「固定!」


ハンスが即座に跳び、真上から重撃を叩き込む。巨体が揺らぎ、関節部が露出する。


その一瞬。


ユイは踏み込んだ。


風刃斬。


薄い部位へ正確に差し込む。


鱗の隙間を裂き、1体目が崩れ落ちた。


「この流れだ。同じ手順で行く」


声は落ち着いているが、内心は焦っていた。


残り4体。


同じ連携を繰り返す。ただし完璧ではない。凍結までの時間、崩しの角度、日差しによる影の制限。


一つずつ噛み合わせながら削る。


そのたびに、体力も魔力も削れていく。


最後の1体が倒れたとき、岩場は静まり返った。


荒い呼吸だけが残る。


ユイは地面に横たわる5体を見下ろした。


鱗の厚みが違う。


知識は間違っていない。だが、現実がわずかにずれている。


誤差か。


それとも――


何かが変わっているのか。


「全員、怪我の確認。回復はまとめてやる」


「はい……」


カイルが肩で息をしながら応じる。


予定より時間がかかった。消耗も大きい。


この岩場は、ただの素材回収地点ではない。


そんな予感が、胸の奥に残った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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