第093話 ギルドでの情報収集・前編
翌朝、クロウフォール全員でギルドへ向かった。
王都ティリアスのギルド本部は、朝から冒険者たちで賑わっている。掲示板の前には依頼を探す者たちが群がり、受付には列ができていた。怒号と笑い声、武具の擦れる音が混ざり合い、独特の熱気が満ちている。
8名で足を踏み入れた瞬間、周囲の視線が集まった。
人数が多い。それだけで目立つ。しかも、装備も種族も統一感がない。重装のハンス、軽装のエルザ、魔法使いのリリアとセイラ、水色の髪のセリス、軽快なアイリス、大剣を背負ったカイル、そして前に立つユイ。
「すごい人だね」
アイリスが小声で言う。
「朝は混む」
ユイは短く返した。視線はすでに受付を捉えている。
受付に向かうと、見覚えのある受付嬢がいた。茶色の髪を後ろでまとめたマリアだ。丁寧な笑みを浮かべている。
「おはようございます、クロウフォールの皆さん」
「おはよう」
ユイが応じる。
「今日は全員でいらっしゃったんですね」
「情報が欲しい」
単刀直入だった。マリアは姿勢を正す。
「どのような情報でしょうか?」
ユイが一歩前に出る。
「装備強化に必要な素材の情報が欲しい」
マリアの表情がわずかに引き締まった。
「素材の情報ですか。どの素材をお探しですか?」
セリスが紙を取り出す。ゴードンから受け取ったリストだ。
「えっと……魔石、硬鱗、鋭牙、魔核、硬岩、再生石、元素核、雷結晶、火精核、氷精核……」
読み上げるごとに、マリアの目が少しずつ大きくなる。
「かなり多いですね。少々お待ちください」
マリアは奥の資料室へ向かった。
待っている間、カイルが小声で言う。
「やっぱり多いですよね……」
「必要なものは必要」
ユイは視線を外さない。
やがてマリアが分厚い資料を抱えて戻ってきた。
「お待たせしました。それでは順番にご説明します」
書類を広げる。そこには魔物名と出現地域、討伐ランクが記されていた。
「まず、魔石と硬岩はストーンゴーレムから入手できます」
「ストーンゴーレム!」
カイルが思わず声を上げる。
「出現地域は山岳地帯。推奨レベルは25、討伐ランクはBです」
空気が少し重くなる。
「ランクBですか……」
リリアが小さく呟く。
「非常に硬い魔物です。通常の斬撃では通りにくく、継続的な火力が必要になります」
セイラが静かに言った。
「……私の氷魔法なら」
「有効だと思います。ただし、単独では危険です」
マリアは淡々と続ける。
「次に、硬鱗と魔核はアーマーリザードから入手可能です」
「アーマーリザード?」
セリスが首を傾げる。
「岩場に出現するトカゲ型の魔物です。鎧のような硬い鱗を持っています。推奨レベル14、討伐ランクはCです」
「Cランクなら……」
カイルが少し安堵する。
「ただし鱗が非常に硬い。斬撃よりも打撃や魔法が有効です」
「……任せろ」
ハンスが低く言う。マリアが微笑んだ。
「心強いですね」
ユイが促す。
「次は」
「鋭牙と魔獣皮はダイアウルフから入手できます」
「狼ですか?」
「魔力を持った大型の狼です。深森に出現。推奨レベル10、討伐ランクはC」
「レベル10なら楽勝だね」
アイリスが笑う。
「油断は禁物です。群れで行動します。単体は弱くても、数が揃うと脅威になります」
「……数が多いと厄介だ」
エルザが短く言う。
「その通りです。偵察と奇襲が有効でしょう」
資料を閉じかけたマリアに、ユイが言った。
「まだある。再生石、元素核、雷結晶、火精核、氷精核」
マリアは頷く。
「それらはエレメンタル系のモンスターから入手できます。少し複雑ですので、別資料をお持ちします」
再び奥へ。
カイルが小声で言う。
「エレメンタル系って、属性持ちですよね」
「ええ。火、氷、雷などの属性を持つ存在よ。対策が必須になる」
リリアが冷静に答える。
「……氷は私が対処できる」
セイラが静かに言う。
「火は?」
セリスが不安げに尋ねる。
「水魔法で抑えられる可能性はあるわ」
「私、頑張ります!」
セリスの声は明るいが、拳は少し強く握られていた。
やがてマリアが戻る。今度は別の資料を抱えている。
「お待たせしました。次はエレメンタル系ですが……」
彼女は一度、全員を見渡した。
「こちらは、少し危険度が高いです」
「分かっている。教えてくれ」
ユイの声は迷いがない。
マリアが書類を開く。
そこには、炎、氷、雷のマークが描かれていた。
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