第094話 ギルドでの情報収集・後編
マリアが新しい書類を開いた。炎、氷、雷の紋章が並んでいる。
空気が、わずかに張り詰めた。
「まず、再生石はマッドゴーレムから入手できます」
「マッドゴーレム?」
セリスが首を傾げる。
「泥で構成されたゴーレムです。湿原に出現します。推奨レベル22、討伐ランクはB」
「湿原……」
リリアが静かに呟く。
「足場が悪いですね」
「はい。戦闘中に足を取られる危険があります。引きずり込まれる報告もあります」
カイルの表情が引き締まる。
「接近戦は慎重に、ですね」
「その通りです」
マリアは次の項目に視線を落とした。
「元素核と雷結晶は、サンダーエレメンタルから入手可能です」
「雷……」
セイラが低く呟く。
「雷原に出現します。推奨レベル27、討伐ランクはB。高い瞬発火力と広範囲攻撃を持っています」
「27か……」
アイリスが小さく口を尖らせる。
「一気に難易度上がるね」
「エレメンタル系は総じて危険度が高いです。物理攻撃が通りにくい個体もいます」
リリアが小さく息を吐く。
「属性対策が必須ですね」
マリアはさらにページをめくる。
「火精核はフレイムエレメンタルから入手できます。溶岩帯に出現。推奨レベル28、討伐ランクはB」
「溶岩帯……」
カイルが眉をひそめる。
「装備も消耗しそうですね」
「耐熱対策が必要です。水属性が有効とされています」
セリスが背筋を伸ばす。
「任せてください」
その声は明るいが、決意が混じっていた。
「最後に、氷精核はアイスエレメンタルから入手可能です。氷洞に出現。推奨レベル28、討伐ランクはB」
静かな沈黙。
セイラが口を開く。
「……氷なら、私が前に出る」
マリアが頷く。
「氷魔法を扱える方がいるなら、有利です。ただし油断は禁物です」
ユイが全体を整理する。
「エレメンタル系はすべてランクB。推奨レベル27以上」
「はい」
「場所も、湿原、雷原、溶岩帯、氷洞。どれも過酷な環境だ」
ハンスが低く言う。
「……環境が敵になる」
「その通りです」
マリアの表情が少し曇った。
「それと……最近、モンスターの出現頻度が上昇しています」
全員の視線が集まる。
「活発化、ですか」
リリアが静かに尋ねる。
「はい。通常より攻撃的になっているという報告もあります」
ユイの胸に、わずかな違和感が走る。
前世では、こんな時期に活発化はなかった。
「……原因は分かっていないのか」
「現時点では不明です」
静かな重さが場に落ちる。
アイリスが小さく言った。
「なんか、嫌な流れだね」
「だからこそ、計画が必要」
エルザが短く言う。
「……焦るな」
セイラも低く続ける。
ユイは頷いた。
「この資料、写しをもらえるか」
「はい、少々お待ちください」
マリアが奥へ向かう。
待つ間、誰も軽口を叩かなかった。
やがて写しが手渡される。
「お気をつけください」
「ありがとう」
ユイが受け取る。
ギルドを出ると、外の光がまぶしかった。
だが胸の奥は晴れない。
帰路。
「どこから回りますか?」
カイルが問う。
「拠点で作戦会議をする」
ユイは即答した。
「優先順位を決める必要がありますわね」
リリアが続ける。
「地図は私が準備する」
アイリスが軽く言う。
「湿原からか、森からか……」
セリスが考え込む。
「装備の補修も同時に進めないと」
エルザが静かに補足する。
ハンスが頷く。
「……守る」
セイラは短く言った。
「……早く決めよう」
ユイは歩きながら資料を見つめる。
湿原、雷原、溶岩帯、氷洞。
そして活発化する魔物。
前世にはなかった兆候。
だが――
今は1人ではない。
ユイは小さく息を吐いた。
「まずは、作戦だ」
全員が頷く。
晴れた空の下、クロウフォールは拠点へ戻っていった。
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