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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第12章 素材集めへの準備

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第090話 リリアの魔法講座

朝食を終えたクロウフォールの拠点には、穏やかな時間が流れていた。


リリアは自室で魔法理論の整理をしていた。机の上には羊皮紙が広げられ、複数の魔法陣が描かれている。緑の瞳が一つひとつの式と線を追っていた。


「この魔力循環を少し整えれば、無駄な消費を抑えられるはず……」


コンコン。


扉をノックする音が響く。


「はい、どうぞ」


扉が開き、セリスが顔を覗かせた。


「リリアさん、今お時間ありますか?」


「ええ、大丈夫よ。どうしたの?」


セリスが部屋に入り、その後ろからセイラも静かに姿を現す。


「魔法のことで、少し相談があって……」


「座って。どんな話かしら」


セリスは椅子に腰掛け、セイラは壁際に立った。


「水魔法を、もっと効率よく使えるようになりたくて。回復魔法を使うと、どうしても魔力の消費が大きくて……」


リリアは頷いた。


「それは制御の問題ね。理論を理解すれば、同じ効果でも消費は抑えられるわ」


セイラが低く言った。


「……氷の制御についても、聞きたい」


「もちろん。氷魔法は水魔法の派生よ。ただし、温度変化を伴うぶん制御が難しい」


リリアは羊皮紙を広げ、指先に魔力を集めた。空中に淡い光の線が浮かび、円を描く。複雑な魔法陣が静かに形を成した。


「魔法陣は、魔力を安定させるための“型”よ。空中に展開して使うのが基本ね」


セリスが息を呑む。


「……きれい……」


「でも、形は人それぞれ。理解の仕方が違えば、陣も違う」


セイラが指先を上げる。白い光が走り、氷属性に特化した魔法陣が浮かび上がった。


「……私の陣」


「ええ。性質がはっきり出ているわ」


リリアはセリスを見る。


「あなたの水魔法の陣も見せてくれる?」


セリスが頷き、魔法陣を展開する。リリアは真剣な表情で観察した。


「……ここが少し歪んでいるわね」


「えっ」


「この線が乱れているから、魔力が漏れてしまうの」


「そんなところまで……」


「戦闘中は特に崩れやすいの。焦りや感情も影響するわ」


セイラが呟いた。


「……暴走の原因か」


「その可能性は高いわ。感情が陣を歪めるの」


その時、扉が開き、アイリスが顔を出した。


「なにこれ、勉強会?」


「魔法講座よ」


「へぇ、面白そう!」


続いてカイルも姿を見せた。


「魔法の話ですか?」


「興味があるの?」


「はい。使えなくても、仕組みは知っておきたくて」


リリアは微笑んだ。


「良い姿勢ね。座りなさい」


簡単な図を描きながら、リリアは説明を始める。


「魔法は、魔力を意図した形に変換する技術。その補助が魔法陣よ」


カイルは真剣に聞いている。


「魔力は誰にでもある。ただ、使い方が違うの」


「……俺にも?」


「ええ。あなたは魔力を身体強化として使っている。無意識にね」


カイルが目を見開いた。


「無意識で……?」


「剣を振る時、盾を構える時、体内で魔力を循環させているの」


アイリスが感心したように言う。


「なるほどねー」


セイラが静かに尋ねた。


「……暴走を防ぐには」


「感情の制御が鍵ね。消す必要はない。ただ、流されないこと」


セイラは小さく頷いた。


その後、エルザが無言で入室し、壁際に立つ。


「……興味がある」


「歓迎するわ」


廊下にはハンスの気配もあったが、彼は入らず静かに聞いていた。


「知識と訓練、両方が必要よ」


「もっと学びたいです!」


「……制御を身につける」


「俺も強くなります!」


リリアは全員を見渡し、穏やかに言った。


「焦らず、一歩ずつね」


廊下でハンスが小さく頷いた。


その様子を、通りがかったユイが静かに見ていた。


――みんな、前に進もうとしている。


それは、クロウフォールにとって確かな成長だった。


リリアの魔法講座は、夕方まで続いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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