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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第12章 素材集めへの準備

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第089話 男たちの筋肉談義

朝の光が中庭に差し込む。澄んだ空気の中、鳥のさえずりが聞こえていた。その静かな時間を破るように、地面を叩く音が響く。


カイルが上半身裸で筋トレをしていた。


銀のプレートアーマーは脇に置かれ、鍛え上げられた体が露わになっている。腕立て伏せを終え、次はスクワット。そして大剣を手に取り、素振りを始めた。


「ふっ、はっ!」


掛け声とともに剣が空を裂く。汗が額を伝い、呼吸が整う。カイルは満足そうに頷いた。


そのとき、巨大な影が中庭を横切った。


ハンスだった。


入口で立ち止まり、青白く光る瞳でカイルを見つめている。視線は、筋肉に向いていた。


「おはようございます、ハンスさん!」


カイルが明るく声をかける。ハンスは無言のまま、じっと見ている。


「ハンスさんも一緒にやりませんか!」


少しの間を置いて、ハンスが装備の留め金を外し始めた。金属と岩が擦れる音が響き、やがて巨体から装甲が外れる。


現れたのは、筋肉というより岩のような体だった。


「おお……すごい筋肉ですね!」


「……鍛えている」


低い声で、それだけ答える。


「やっぱり! 僕も毎日やってるんです!」


二人は無言で地面に手をつき、腕立て伏せを始めた。


「筋肉は……裏切らない……!」


カイルが息を吐きながら言う。


「……そうだ……」


珍しく、ハンスの声にも力がこもっていた。


「この大胸筋! 盾役の要です!」


「……重要だ」


「腹筋も見てください!」


カイルが立ち上がり、腹筋を叩く。引き締まった音がした。ハンスも立ち上がり、自分の腹部を叩く。


ゴン、と鈍い音が響く。


「すごい! 岩みたいです!」


「……岩だ」


「あ、そうでしたね!」


カイルが笑う。ハンスも小さく頷いた。


そこへ、洗濯物を抱えたセリスが中庭に現れた。二人の姿を見て、足が止まる。


「え、えっと……何してるんですか……?」


「筋トレです! 見てください、この大胸筋!」


セリスは顔を赤くし、視線を泳がせた。


「は、はぁ……」


「触ってみますか!?」


「い、いえ! 結構です!」


洗濯物を抱え直し、逃げるように去っていく。カイルは首を傾げた。


「なんで逃げたんだろう」


次に通りかかったのはアイリスだった。状況を一目見るなり、吹き出す。


「何やってんの、あんたら! 朝から!」


「男は筋肉です!」


「……そうだ」


ハンスも頷く。


「ハンスまで本気だし! あはは!」


笑いながら立ち去っていく。


入れ替わるように、リリアが現れた。二人を見るなり、呆れた表情になる。


「……一体、何の儀式ですの?」


「儀式じゃありません! 男の鍛錬です!」


「服を着てからやってくださる?」


冷たい一言に、カイルが肩を落とす。


「はい……」


さらにエルザが通りかかる。


「エルザさんも見てください!」


「……興味ない」


一瞥すらせず、通り過ぎていった。


「えっ……」


セイラも姿を見せる。二人を見るなり、淡々と言い捨てた。


「……理解不能」


そのまま去っていく。


最後にユイが現れた。状況を一目で把握し、短く言う。


「……何をやってる」


「あ、ユイさん! 筋トレです!」


「訓練なら装備を着けろ」


「すみません!」


カイルが慌てて装備を拾う。ハンスも無言で装備を戻した。


「朝食の時間だ」


ユイはそれだけ言って去っていった。


中庭に残ったのは二人だけだった。


「……やりすぎましたかね」


「……そうだ」


「でも、楽しかったです!」


「……そうだ」


短い会話だったが、どこか満足そうだった。


「また一緒にやりましょう!」


「……ああ」


男同士の絆は、確かに深まった。


ただし――

女性陣からの視線は、確実に冷たくなっていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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