第085話 武器屋での相談・前編
翌日の午前。
ユイはクラウン全員を集めていた。
「今から全員で武器屋へ行く」
「武器屋ですか?」
カイルが尋ねる。
「装備の点検を頼む」
「点検…ですか」
リリアが少し意外そうに首を傾げる。
「ああ。昨日、気になることを聞いた」
ユイは短く説明する。
「最近、装備の損傷率が高いらしい」
「そうなんですか?」
セリスが驚いたように声を上げる。
「確認しておく必要がある」
「了解です!」
カイルが力強く答えた。
全員で市街の東側へ向かう。
目的地は「鋼鉄の爪亭」。
クラウンの行きつけの武器屋だった。
扉を開けると、金属を叩く音が響いている。
「よう、クラウフォールの連中か」
奥から声が聞こえ、店主のゴードンが姿を現した。
50代の男性で、がっしりとした体格。元冒険者らしい貫禄がある。
「ゴードン、久しぶりだな」
ユイが短く挨拶する。
「ああ、久しぶりだ。どうした?」
「装備の点検をお願いしたい」
「ほう、珍しいな」
ゴードンが少し眉を上げる。
「いつもは自分でやってるのに」
「気になることがあってな」
「そうか」
ゴードンは頷き、作業台を指した。
「じゃあ、武器を並べてくれ」
カイルが大剣を外す。
「お願いします!」
リリアが杖を丁寧に置く。
「よろしくお願いいたしますわ」
アイリスがナイフの束を置く。
「頼むよー!」
セリスが水晶杖を置く。
「お願いします!」
エルザが短剣を静かに置く。
「…」
ハンスが大型ハンマーを置く。
「…そうだ」
セイラが氷の杖を置く。
「…頼む」
最後にユイが双剣を置いた。
「見てくれ」
ゴードンは一つ一つ手に取り、確認を始める。
まずカイルの大剣。
刀身を光に透かし、表面を指でなぞる。
ゴードンの表情がわずかに曇る。
次にリリアの杖。
先端の宝石を見つめ、魔力の流れを確認する。
さらに表情が厳しくなる。
アイリスのナイフ。
刃を一本ずつ確認し、刃こぼれを確かめる。
セリスの水晶杖。
軽く叩き、内部の響きを聞く。
エルザの短剣。
刀身を確認し、少し驚いたように頷く。
ハンスのハンマー。
柄を握り、強度を確かめる。
セイラの氷杖。
魔力結晶の消耗具合を確認する。
最後にユイの双剣。
刀身を見て、ゴードンが感心したように頷いた。
全てを確認し終え、ゴードンは深く息を吐く。
「…お前ら、これ、かなり傷んでるぞ」
空気が一変する。
「え、そんなに傷んでるんですか?」
カイルが驚いて尋ねる。
「ああ。特に杖と剣がひどい」
リリアが不安そうに杖を見る。
「私の杖は…」
「宝石に曇りが出てる。魔力伝導率が落ちてるな」
「そんな…」
「私のも…ですか?」
セリスが恐る恐る尋ねる。
「ああ。水晶にヒビが入ってる。交換した方がいい」
「ヒビ…」
「やっぱりねー」
アイリスが軽く笑う。
「最近、切れ味悪いと思ってたんだ」
「刃こぼれが多い。研磨が必要だ」
「了解ー」
「柄が劣化してる。巻き直しだな」
ゴードンがハンスのハンマーを見て言う。
「…承知した」
ハンスが低く答えた。
「魔力結晶が消耗してる。補充が必要だ」
セイラの杖を見てゴードンが告げる。
「…理解した」
エルザの短剣を持ち上げ、ゴードンが言う。
「これは問題ない」
「…当然だ」
「手入れが完璧だ。見習え」
「エルザさん、すごいですね!」
カイルが目を輝かせる。
「…普通だ」
最後にユイの双剣を見る。
「これも問題ない。完璧だ」
「昔からの癖でな」
ユイが短く答える。
ゴードンは全員を見渡した。
「いい装備を持ってるのに、手入れが追いついてない」
その言葉に、カイルが深く頭を下げる。
「申し訳ありません…」
リリアも静かに頭を下げる。
「反省しますわ…」
セリスも小さく頭を下げた。
「ごめんなさい…」
ゴードンは少し考え、口を開く。
「素材集めが必要だな」
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