表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第11章 束の間の日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
83/119

第083話 街への買い物・中編

リリアとセイラは、市街西側にある魔法触媒専門店へ向かっていた。


「セイラさん、何か必要なものはありますか?」


リリアが穏やかに尋ねる。


「……氷結晶」


セイラは短く答えた。


「そうですわね。私も魔力結晶を補充しておきたいですわ」


二人は並んで歩く。会話は少ないが、歩調は揃っていた。


魔法触媒店「蒼月の欠片」は、落ち着いた佇まいの店だった。扉を開けると、魔力を帯びた鉱石や結晶が棚に整然と並んでいる。


「いらっしゃいませ」


店主が声をかけてきた。中年の女性で、魔法使い特有の落ち着いた雰囲気を纏っている。


リリアは丁寧に会釈した。


「失礼いたします」


セイラも無言で軽く頭を下げる。


リリアは店内を見渡し、魔力結晶の棚へ向かった。


「この結晶は……純度が高いですわね」


手に取って光に透かし、内部の流れを確認する。


「魔力の伝導率も安定しています。杖の補修にも使えそうですわ」


理論を口にしながら、必要な数を選んでいく。


一方、セイラは迷いなく氷結晶の棚へ向かっていた。青白く輝く結晶を前に立ち、ひとつずつ手に取る。


結晶から、かすかな冷気が指先に伝わる。


「……これ」


短く呟き、一つを選び取る。


店主が興味深そうに近づいた。


「氷魔法使いかい。珍しいね」


セイラは視線だけを向ける。


「……問題ありますか」


「いや、ないよ。ただ最近は見なくなったからさ」


店主は穏やかに笑った。


リリアが言葉を添える。


「氷魔法は高度な制御が求められますもの。とても希少ですわ」


セイラは何も言わず、結晶を見つめている。


リリアは他の触媒にも目を向けながら、淡々と説明を続けた。


「この光粉末は、治癒魔法の効率を高めるのに有効ですわね。魔力純度を整えることで、回復速度が安定します」


「詳しいね」


店主が感心したように言う。


「研究の延長ですわ」


リリアは微笑んだ。


セイラは別の氷結晶も手に取り、冷気の強さを確かめている。一つずつ、慎重に。


その様子を見て、リリアが声をかけた。


「セイラさん、その結晶で大丈夫ですか?」


「……問題ない」


「そうですか。ですが、もし制御に不安が出たら、いつでも相談してくださいね」


「……理解している」


短い返答だった。


リリアはそれ以上踏み込まず、静かに頷いた。


二人は必要な触媒を選び終え、会計へ向かう。


「ありがとうございました。またどうぞ」


店主が言う。


「ええ、ありがとうございました」


リリアは丁寧に会釈した。


セイラも無言で頭を下げる。


店を出ると、リリアが改めて尋ねた。


「他に必要なものはありますか?」


「……ない」


「では、少し街を見て回りましょうか」


「……そう」


二人は再び並んで歩き出す。


リリアは時折、魔法理論について語る。


「氷魔法は水魔法の応用ですが、温度制御が加わる分、難易度が高いですわね」


セイラは答えず、ただ聞いている。


少し間を置いて、リリアが控えめに尋ねた。


「……何かあれば、無理をなさらないでくださいね」


「……分かっている」


それだけで、会話は終わった。


二人は静かに次の通りへ向かう。


リリアの胸には、わずかな懸念が残っていた。

セイラの力は強い。だが、その強さは、制御と隣り合わせだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ