第77話 組織の影
シャドウ・ヴェールの拠点。翌日。
広間に、10数名の観察者が集められていた。
全員が黒いローブを纏い、フードを被っている。その中には、選ばれた者たちがいた。
精鋭戦闘員。
組織の中でも、特に実力のある者たちだ。
広間の奥に、上司が立っていた。深いフードに顔は隠れている。だが、その低く威圧的な声だけで、空気が張り詰める。
「北の森の奥、廃墟に幻モンスターの反応がある」
ざわめきが広がる。
「幻モンスター……」
「本当なのか」
「まさか……」
上司が手を上げ、静寂が戻った。
「カオスナイトと呼ばれる存在だ」
空気が一変した。
その名を知らぬ者はいない。幻モンスター。決して倒せぬ存在の1つ。
だが、実際に目撃した者はいない。
「我々も動く。精鋭15人を選抜する」
前列に立つ男が一歩前へ出た。
ガルス。40代前半、精悍な顔立ちの男だ。重装鎧を纏い、腰には大剣を下げている。上司派の筆頭として、長年組織を支えてきた存在だった。
「了解しました」
迷いのない声。
上司が名を読み上げていく。
ガルス。そして彼に続く9名の精鋭。
さらに3名。ザイン、ミラ、ドレイク。
最後に2名。レイナ、ユーリ。
選ばれた15人が前に出る。
残った者たちは、緊張した面持ちでそれを見守っていた。
選抜が終わり、上司は広間を後にした。
残された15人は、それぞれ準備を始める。
ガルスは部下に指示を出し、レイナとユーリは装備を確認していた。
一方、ザイン、ミラ、ドレイクの3人は人目を避け、拠点の外れへ向かう。
古い倉庫の裏。誰も来ない場所だ。
ザインが周囲を確かめてから口を開く。
「またか」
短く、冷たい声。
ミラが髪を1つに束ねながら言った。
「あの上、まだ現場に出る気らしいわね」
ドレイクは無言で頷く。
「この機会に、整理できるな」
ザインの言葉に、ミラが薄く笑う。
「カオスナイト相手なら、事故に見えるわ」
「上司派の主力が揃っている。ガルスもいる」
ドレイクが低く言った。
「……計画通りに」
「ああ」
視線が交わる。
言葉は少ないが、意図は一致していた。
「あの連中、気づいてないわよね」
「ああ。レイナもユーリも、何も知らない」
ドレイクが大剣の柄を握る。
「……利用する」
「当然だ」
3人は倉庫を後にした。
別の場所では、レイナとユーリが話していた。
「カオスナイトって、本当にいるんですね……」
レイナの声は不安を含んでいる。
「俺たちも選ばれたんだ。頑張ろう」
ユーリは明るく言い、弓を背負い直した。
「みんなで力を合わせれば、きっと」
「ガルスさんもいるしな」
レイナは小さく頷いた。
「ザインさんたちも一緒ですし」
2人は知らない。
すぐ傍で、裏切りが進んでいることを。
再び広間。
15人が揃い、ガルスが前に出る。
「我々は、世界の均衡を守る者だ」
重い声が響く。
「幻モンスターは、再び世に放ってはならない」
上司派の者たちが応える。
「了解しました」
ザインたちも表向きは従う。
「……了解した」
「承知しました」
ドレイクは黙って頷く。
だが、ザインの内心は別だった。
これで上司派は削れる。次は――組織そのものだ。
ガルスが剣を抜く。
「出発する」
15人が広間を後にした。
北の森の奥、廃墟へ。
カオスナイトが待つ場所へ。
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