表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第10章 シャドウ・ヴェール

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
76/120

第076話 影の監視者

王都ティリアスの夜は静かだった。

月明かりが石畳を照らし、建物の隙間を風が抜けていく。通りには人影がなく、遠くで犬が吠える声だけが響いていた。


建物の影に、一つの人影が潜んでいた。

黒いローブを纏い、フードを深く被ったその人物は、通りの向こう側にある冒険者ギルドの入口を見つめている。手には小さな手帳が握られ、時折、迷いのない動きで書き込みがなされていた。


ギルドの扉が開く。

中から数人の冒険者が姿を現す。


人影は身を低くし、さらに影の奥へと沈んだ。


8人。

先頭に立つのは黒銀の軽装鎧を纏った若い女性、ユイ・セイラス。その後ろに盾を背負った青年、長剣を腰に下げた戦士、弓を持つ女性、そして他の仲間たちが続く。


短い会話を交わした後、一行は通りを進み始めた。声は届かない。だが、装備と隊列から、高難度の討伐任務であることは明らかだった。


人影は手帳に走り書きする。


また、動き出したか。


ユイたちは闇の中へと消えていった。

完全に姿が見えなくなるまで見届けてから、人影は静かに立ち上がり、王都の裏路地へと身を滑らせた。


人目につかない古い建物が並ぶ一角。

表向きは廃屋だが、その裏には地下へと続く隠し通路が存在している。


人影は建物の裏手に回り、壁の一部に手を当てた。魔力が流れ、石壁が音もなく開く。地下へ続く石段が姿を現した。


足音を殺し、慎重に階段を降りる。


地下には広い空間が広がっていた。石造りの壁、薄暗い通路、点在する魔法灯。そして、同じ黒ローブを纏った複数の人影。


人影は通路の奥へ進み、一つの扉の前で立ち止まる。軽くノックした。


「入れ」


低く、威圧感のある声。


扉を開けると、広い部屋が現れた。壁にはエターナル・リアルム全体を示す地図が貼られ、各地に色分けされた印が刻まれている。


部屋の奥、椅子に腰掛けた人物がいた。

深いフードに顔は隠れているが、その存在感だけで、この組織の中枢に立つ者だと分かる。


人影はフードを外した。

中年の男性だった。短く刈り上げた髪に鋭い眼差し。長年、現場を渡り歩いてきた者の雰囲気がある。


「報告します」


静かな声が部屋に響く。


「ユイ・セイラスが、再び行動を開始しました」


椅子の人物は動かない。


「詳細を」


「冒険者仲間8人と合流し、ギルドを出発。目的地は不明ですが、装備から判断して高難度討伐の可能性が高いかと」


沈黙が落ちる。


やがて、低い声が返ってきた。


「引き続き監視を続けろ。必要と判断すれば、こちらも動く」


「了解しました」


男性は一礼し、部屋を後にした。


廊下には別の観察者が立っていた。

同じ黒ローブを纏った女性だ。フードを取ると、若い顔が覗く。


「また、あの冒険者?」


小さな呟き。


「上は、何を警戒しているの?」


男性は肩をすくめた。


「分からん。ただ、彼女の周囲で異常が重なりすぎている」


「偶然、とは思えないってことね」


「だからこそ、我々がいる」


二人は拠点の中央広間へと向かった。

長い机の上には報告書が並び、壁際には各地の記録が積まれている。魔法灯が淡く室内を照らしていた。


男性は棚から一つのファイルを受け取る。

表紙には名前が記されている。


ユイ・セイラス。


中には最近の行動記録、依頼内容、その結果。

そして、異常事象に関する報告。


北の森での異変。

封印陣付近での接触記録。

幻モンスターの出現地点への接近。


どれも単体なら偶然で済む。

だが、重なりすぎている。


男性はファイルを閉じ、壁の地図に目を向けた。

赤い印が、各地に打たれている。


封印が緩んでいる。

それは疑いようのない事実だった。


だが、その原因は分からない。

彼女が関与しているのか、それとも、ただ巻き込まれているだけなのか。


男性は手帳を開き、今日の報告を記す。


判断するのは、上だ。

我々は観測し、記録し、命じられた通りに動くだけ。


地下拠点に、再び静寂が戻った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ