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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第9章 真の力と覚悟

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第074話 撤退戦

5体のカオスナイトが、一斉に動いた。


速い。


ユイの目が、わずかな差を捉える。


右から2番目。


動きが、他よりも速い。


「あれが本体です!」


ユイが叫んだ。


だが、その瞬間。


5体すべてが、同時に襲いかかってきた。


「ハンス、石壁を!」


「了解」


ハンスが地面に手をつく。


石壁が隆起した。


最初の分身が壁に激突する。


ガン。


重い音。


だが、壁に亀裂が走った。


ハンスが低く息を吐く。


「……まずい」


続けて、2体目が壁を殴りつける。


ひび割れが一気に広がった。


「カイル、盾を!」


「はい!」


カイルが前に出る。


盾を構え、3体目の攻撃を受け止めた。


ガキィン。


金属音とともに、衝撃が腕を貫く。


盾が大きく凹む。


「くっ……!」


カイルの足が、後ろへ滑った。


分身で、この威力。


本体なら――考えるまでもない。


「リリア、光を!」


「分かったわ!」


リリアが杖を掲げる。


光が放たれ、闇の領域がわずかに薄れる。


視界が、少しだけ戻った。


仲間の姿が、はっきり見える。


だが、完全には打ち消せない。


リリアの肩が上下する。


「……これが、限界よ」


「十分です!」


ユイは短剣を構えた。


4体目が斬りかかってくる。


ユイは風刃斬で迎え撃った。


風の刃が分身を切り裂く。


だが、消えない。


浅い。


威力が足りない。


分身の剣が振り下ろされる。


ユイは横へ跳んだ。


地面が裂け、土砂が舞う。


速い。


「アイリス、エルザ、側面から!」


「了解!」


「……分かった」


2人が影から飛び出す。


投擲ナイフが5体目に突き刺さる。


エルザの毒刃が、別の分身を斬り裂いた。


だが、どちらも致命打にはならない。


分身が振り向く。


2人は即座に距離を取った。


「セリス、回復を!」


「はい!」


セリスの水が、カイルの腕を包む。


痛みが、わずかに和らぐ。


「ありがとうございます」


カイルは盾を構え直した。


だが、盾は限界だ。


次の一撃で、壊れる。


ユイは周囲を見渡す。


5体の分身。


そして、本体。


右から2番目。


だが、動きが見えない。


闇が、濃すぎる。


「全員、下がってください!」


ユイが叫ぶ。


「戦いながら後退します!」


「了解!」


全員が一斉に後退する。


だが、分身が追ってくる。


1体が石壁を砕いた。


壁が崩れ落ちる。


ハンスが大盾を構えた。


「……来い」


低い声。


分身が盾に激突する。


ドン。


ハンスの足が、わずかに後ろへ滑った。


初めてだ。


ハンスが、押された。


「全員、速度を上げます!」


ユイが風魔法を展開する。


風が全員を包み、体が軽くなる。


「今です! 走ってください!」


全員が全速力で後退した。


廃墟の出口へ。


だが、分身が追ってくる。


速い。


こちらよりも速い。


間に合わない。


「セイラ、氷槍を!」


「了解」


セイラが振り向き、巨大な氷槍を生成する。


「行け」


氷槍が放たれ、分身の1体に直撃した。


瞬時に凍り付き、動きが止まる。


「今です!」


全員が出口へ駆け込んだ。


廃墟を抜け、森へ出る。


だが、まだ追ってくる。


2体の分身が森に踏み込んでくる。


ユイは振り返った。


本体は――見えない。


廃墟の奥に、まだいる。


動いていない。


なぜだ。


考える暇はない。


「馬車まで走ってください!」


全員が森を駆け抜ける。


木々の間を縫うように走る。


分身が追ってくる。


だが、徐々に距離が開いた。


動きが、鈍る。


そして。


分身が、止まった。


森の入口で、立ち尽くしている。


それ以上、追ってこない。


ユイは息を切らしながら振り返った。


「……なぜ?」


カイルが尋ねる。


「条件外です」


ユイは即答した。


「幻モンスターは、条件を満たした場所と状況でしか行動しません」


「廃墟から離れた。だから、追ってこない」


全員が立ち止まり、呼吸を整える。


セイラが膝に手をついた。


「……なんとか、逃げ切れたか」


ハンスが低く言う。


「石壁が、ひび割れた」


カイルは歪んだ盾を見る。


「盾も……もう使えません」


リリアは杖に体を預けた。


「魔力が、ほとんど残ってないわ」


アイリスが地面に座り込む。


「はぁ……さすがに、疲れた」


エルザも無言で腰を下ろす。


セリスが水を配った。


「皆さん……本当に、お疲れ様です」


ユイは全員を見渡した。


全員、生きている。


前世では、一人だった。


今は違う。


8名、全員で生きて帰れた。


「拠点へ戻りましょう」


ユイが言った。


全員が頷き、馬車のある場所へ向かう。


圧倒的な脅威。


それを、全員が身をもって理解した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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