第069話 力の確認
翌日の朝。
8名は王都南部の訓練場へ向かった。
ユイが先頭を歩き、リリア、カイルが続く。アイリス、セリス、エルザ、ハンス、セイラも黙って後に続いた。
訓練場は広い。屋外のスペースに、模擬戦用の区画と的が設置されている。
朝の空気は澄んでいた。
「まず、私から」
ユイが中央に立つ。
全員が見守る中、ユイは短剣を抜いた。
「風刃斬」
短剣に風を纏わせる。刃が淡く青白く光った。
木製のダミーへ振るう。
刃は届いていない。だが、風の斬撃がダミーに到達した。
木が裂ける。
射程は約3メートル。
「これが私の基礎技の1つです」
セイラが眉をひそめた。
「射程を伸ばす技か」
「はい」
ユイは頷く。
次に、ユイは気配を消した。
足音が消え、存在感が薄れる。
「影歩」
訓練場を静かに歩く。
約10分間、気配を消し続けられる。
セイラが目を細める。
「偵察用か」
「はい」
ユイは気配を戻した。
「これが、私の使える基礎技です」
ハンスが低い声で言う。
「派手ではないが、実用的だ」
「ありがとうございます」
ユイは短剣を鞘に収めた。
「次は、カイル」
カイルが前に出る。
大盾を構え、剣を抜いた。
「守護の盾」
盾を前に出す。
リリアが魔法で小さな石を飛ばす。
石は盾に当たり、弾かれた。
中程度までの攻撃を、完全に防ぐ。
「次は、これです」
カイルは剣を両手で握り、力を込めて振り下ろした。
「剛力斬」
剣がダミーに叩き込まれ、ダミーが大きく揺れる。
威力は高いが、動きは遅い。
カイルが苦笑した。
「威力はありますが、遅いです」
セイラが腕を組む。
「前衛としては悪くない」
カイルは盾を下ろした。
「次は、リリアさんです」
リリアが前に出る。
杖を掲げ、魔力を集めた。
「癒しの光」
淡い光が放たれる。
カイルの腕には、先ほどの訓練で付いた浅い傷があった。
光がその傷を包み、ゆっくりと塞いでいく。
対象1人の傷を癒す。
「ありがとうございます」
カイルが頷く。
リリアは続けて、別の魔法を展開した。
「魔力増幅」
別の光が放たれ、カイルを包む。
「対象の魔力を約1.5倍に増幅します。持続時間は約5分です」
セイラが興味深そうに見る。
「支援魔法か」
「はい」
リリアは杖を下ろした。
「これが、私の基礎技です」
ユイは頷いた。
「ありがとうございます」
3名の技が確認できた。
「次は、アイリス」
アイリスが元気よく前に出る。
「はーい!」
小柄なフェアリスの少女が、軽装で立つ。
「私の技、見せるね!」
息を整え、
「気配消し」
存在感がふっと消えた。
姿は見えるが、気配はほとんど感じられない。
持続は約5分。
ユイの影歩より短いが、偵察向きだ。
気配が戻る。
「次は、これ!」
投擲ナイフを取り出し、約10メートル先の的へ投げる。
ナイフは的の中心に突き刺さった。
「投擲術だよ!」
ハンスが小さく頷く。
「偵察役として、十分だ」
「ありがとー!」
アイリスは戻った。
次は、セリス。
水色のローブを纏い、水晶杖を手に前へ出る。
「私の技、見てください」
「水の癒し」
透明な水が流れ出し、カイルの腕を包む。
小さな擦り傷が癒えていく。
中程度の回復だ。
「ありがとうございます」
セリスは続けて、
「水弾」
水の弾が放たれ、約15メートル先のダミーに命中した。
威力は低いが、射程はある。
「これが、私の技です」
ユイが頷く。
「ありがとうございます」
次は、エルザ。
黒い軽装鎧に身を包み、無言で前に出た。
「……影潜み」
姿が影に溶け込み、訓練場の影へ完全に隠れる。
持続は約10分。ただし、強い光の下では使えない。
姿を現し、短剣に毒を塗る。
「……毒刃」
刃がわずかに緑色に光る。
毒の持続は約30分。
「……以上」
ハンスが頷いた。
「暗殺者として、申し分ない」
エルザは無言で戻る。
ユイは全員を見渡した。
6名の技が確認できた。
「次は、ハンスさんとセイラさんです」
ハンスが巨大な盾を構える。
2.5メートルを超える巨体が、訓練場の中央に立った。
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