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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第8章 新たな力

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第061話 超重装甲の男

「あなたの力が必要です」


ユイの言葉に、ハンスは無表情のまま立っていた。

沈黙が数秒続く。


「俺の力?」


低く、重い声。


「はい」


ユイははっきりと頷いた。


「私はユイ・セイラス。クロウフォールという組織を率いています」


「クロウフォール」


ハンスがその名を繰り返す。


「聞いたことがない」


「まだ小さな組織です。ですが、あなたのような人材を必要としています」


カイルも一歩前に出た。


「僕はカイル・ヴァルディス。前衛を担当していますが、正直に言って、重装甲の守護者がいない状態です」


ハンスは2人を見た。

視線は動くが、表情は変わらない。


「守護者」


低く、その言葉を呟く。


「はい。あなたのような超重装甲の前衛がいれば、クロウフォールの戦力は大きく変わります」


ユイが続ける。


ハンスは盾を地面に立てかけた。

巨大な盾。厚さは10センチ以上ある。表面には無数の傷が刻まれているが、亀裂はない。


「俺は守護者だ」


ハンスが口を開いた。


「だが、完璧ではない」


「それは誰も同じです」


ユイが即座に答える。


「俺は動けない」


ハンスは淡々と続けた。


「この装甲は、動きを犠牲にしている。細かい位置調整も苦手だ」


「それでも、あなたの防御力があれば」


「防御だけでは勝てない」


声が、わずかに低くなる。


「俺は守ることしかできない。攻撃は他者に任せるしかない」


カイルが口を開く。


「それで良いんです。僕たちには攻撃役がいます。あなたには守ってほしい」


ハンスは少しだけ視線を逸らした。


「守る」


その言葉を、もう1度繰り返す。


ユイは静かに見つめていた。

何かがある。

この男は、何かを抱えている。


「ハンスさん」


ユイが呼びかける。


「俺には、過去がある」


ハンスが言った。


「守れなかった過去が」


空気が重くなる。

カイルも黙って聞いていた。


「俺は守護者だ。だが、守れなかったことがある」


声は変わらない。低く、重く、抑揚がない。

だが、その言葉には確かな重みがあった。


「仲間を守れなかった」


ユイは息を呑む。


「俺は指示がなければ動けない。判断が遅い。それでも良いのか?」


ハンスが2人を見る。

赤い瞳に感情は浮かんでいない。

だが、その奥に何かがある。


ユイは1歩前に出た。


「それでも必要です」


「なぜだ」


「あなたのような防御力を持つ人は、他にいません」


ユイは真っ直ぐに見つめる。


「そして、指示があれば動けるなら、私たちが指示を出します」


「指示を出す」


ハンスが繰り返す。


「はい。判断はこちらでします。あなたには守ってもらいます」


カイルも頷いた。


「僕も前衛ですが、正直、守り切れないことがあります。あなたの防御力があれば、もっと安定します」


ハンスは黙っている。

数秒の沈黙。


「一緒に依頼を受けてもらえませんか?」


ユイが提案した。


「依頼?」


「はい。一度だけで構いません。実際に組んでみて、それから考えてください」


ハンスは盾を見た。

巨大で、傷だらけの盾。

何年も使い続けてきた盾。


「1度だけなら」


低い声が返ってくる。


「分かりました。では、明日、クロウフォールの拠点に来てください」


ユイが場所を伝える。


ハンスは頷いた。


「分かった」


「ありがとうございます」


ユイとカイルは頭を下げた。


ハンスは何も言わず、盾を持ち上げる。

そして再び、訓練場の隅へ戻っていった。


ユイとカイルは訓練場を出る。

門をくぐり、南部の通りに戻った。


「すごい防御力でしたね」


カイルが言う。


「ああ」


ユイは頷く。


「だが、何かを抱えている」


「守れなかった過去、ですか」


「そうだ」


ユイは空を見上げた。


守護者が守れなかった。

それは、どれほど重い経験だろうか。


だが、だからこそ必要だ。

過去を背負っても、立ち続ける強さ。

それがハンスにはある。


「拠点に戻ろう」


ユイが言う。


「はい」


2人は王都を抜け、拠点へ向かった。


広間に戻ると、セリスが待っていた。


「お帰り! どうだった?」


「1度だけ、共闘することになった」


ユイが答える。


「本当? すごいじゃん!」


セリスが嬉しそうに笑う。


「まだ加入が決まったわけではない」


「でも、1歩進んだね」


「ああ」


ユイは頷いた。


次は、実際に組んでみる。

ハンスがどう動くのか。

どう守るのか。


それを見極める。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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