第059話 次の一手
「拠点に戻ろう」
ユイとアイリスは足早に王都を抜け、拠点へ向かった。
広間に戻ると、すでにリリアが待っていた。机の上には、いくつかの書簡と走り書きが並べられている。
「お帰りなさい。どうだった?」
「聞けたよ。ゴーレム種の冒険者の噂!」
アイリスが少し興奮気味に言う。
リリアの目が細くなった。
「本当?」
「王都の南にいるらしい」
ユイが補足する。
「それは朗報ね」
リリアは頷き、続けて言った。
「実は、私の方にも情報が入ったわ」
「何?」
「ドラゴニュート種の魔法使いがいるらしいの」
「ドラゴニュート?」
アイリスが即座に反応する。
「氷魔法を使う個体よ。かなりの攻撃力らしいわ」
「それ、まさに私たちが探してる人じゃない!」
アイリスが声を上げる。
ユイは少しだけ間を置いた。
ゴーレム種の冒険者。
ドラゴニュート種の氷魔法使い。
どちらも稀少で、単独でも戦局を変え得る存在だ。
「名前は分かる?」
ユイが尋ねる。
「ゴーレム種の方は、ハンスって呼ばれてるって」
アイリスが言う。
「ドラゴニュート種は、セイラよ」
リリアが静かに補足した。
ハンス。
セイラ。
ユイはその二つの名を、確かに心に刻んだ。
夕方、全員が拠点に戻り、自然と広間に集まった。
ユイが前に出る。
「報告があります」
空気が引き締まる。
「ゴーレム種の冒険者、ハンス。王都南部にいる可能性が高い」
「そして、ドラゴニュート種の魔法使い、セイラ。氷魔法の使い手です」
「どちらも、重要な戦力になり得ます」
カイルが頷いた。
「確かに。前衛と後衛、理想的ですね」
「そうだ」
ユイは肯定する。
「この二人を探す」
「場所は特定できていないんですよね?」
カイルが確認する。
「まだだ」
ユイは正直に答えた。
「だが、必ず辿り着く」
「情報屋の繋がりを総動員するよ」
アイリスが即座に言う。
「私は種族の移動記録と文献を洗うわ」
リリアが続ける。
「裏の伝手も使う」
エルザが短く言った。
「私も手伝う!」
セリスが明るく手を挙げる。
ユイは全員を見渡した。
前世では、一人だった。
仲間も、拠点もなかった。
だが、今は違う。
ここには組織があり、仲間がいる。
「ありがとう」
ユイは静かに言った。
「みんなで探そう」
全員が頷く。
「明日から、本格的に動きます」
「了解」
会議はそこで終わり、それぞれが自室へ戻っていった。
ユイも部屋に戻り、ベッドに腰を下ろす。窓を開けると、夜風が入り込んだ。
空には月が昇っている。
その時、窓の外で一瞬、淡い光が走った。
ユイは目を細める。
観測者の気配。
見られている。だが、干渉はない。
排除もされない。
理由は分からない。
ユイは窓を閉め、深く息を吐いた。
明日から、新しい仲間を探す。
ハンスとセイラ。
二人を迎え入れ、次の段階へ進む。
ユイは横になった。
疲労はあるが、心は静かだった。
次の一手は、すでに決まっている。
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