第056話 拠点での夜
拠点に戻ると、すでに夜になっていた。
全員が広間に集まる。
セリスが厨房で簡単な食事を用意する。スープとパン、焼いた肉だ。
テーブルに並べると、全員が席についた。
「いただきます」
六名が食事を始める。
しばらく、誰も口を開かない。
ただ黙々と食器の音だけが響く。
やがて、セリスがふっと笑った。
「今日は疲れたね~」
その一言で、張りつめていた空気が少し緩んだ。
「本当にな」
カイルが苦笑する。左腕には包帯が巻かれており、まだ完全には治っていない。
「でも、退屈じゃないよ!」
アイリスが明るく言った。
「むしろ、楽しかった」
「楽しい、か」
エルザが短く呟く。
「悪くない」
その言葉に、アイリスが笑う。
「エルザも楽しんでるんだ」
「楽しいとは言っていない」
即座に否定するが、表情はどこか柔らかい。
リリアがその様子を見て微笑んだ。
「皆、少しずつ打ち解けてきたわね」
「そうですね」
ユイも頷く。
食事が進むにつれ、自然と会話が途切れがちになる。
やがて、カイルが真剣な表情で口を開いた。
「でも、もっと強くならないと」
全員が顔を上げる。
「今日の戦いで、俺は盾を壊された。吹き飛ばされた」
カイルは拳を握る。
「もっと強ければ、防ぎきれたはずだ」
「装備も見直す必要があるわね」
リリアが静かに言う。
「盾は新しいものを用意しないと」
「そうですね」
ユイが頷いた。
「それだけじゃない」
今度はセリスが口を開く。
「私の水魔法も、火力が足りなかった」
「私の光魔法も同じよ」
リリアが認める。
「核を砕くのに、時間がかかりすぎた」
ユイは全員を見渡した。
今日の戦いで、はっきりしたことがある。
クロウフォールには、足りないものがある。
「明日、会議をしましょう」
ユイが言った。
「現状の課題を、全員で確認します」
全員が静かに頷く。
「今後の方針も決めましょう」
リリアが続ける。
「そうね。このままじゃ、次の依頼も苦戦するわ」
「だね」
アイリスも同意する。
「でも、今日はもう休もう」
セリスが笑った。
「さすがに疲れたし」
「そうだな」
カイルが立ち上がる。
「おやすみなさい」
それぞれが自室へ戻っていく。
ユイも部屋へ向かい、ベッドに腰を下ろした。
装備を外し、短剣を丁寧に磨く。
窓の外を見ると、月が昇り、森を静かに照らしている。
今日の戦いを振り返る。
フォレストトレント、ストーンゴーレム。
討伐には成功したが、決して楽な戦いではなかった。
カイルは負傷し、リリアとセリスは魔力を使い果たした。
全員が限界まで消耗している。
これで相手にしたのは、通常の魔物だ。
幻モンスターではない。
今のままでは、幻モンスターには勝てない。
もっと戦力が必要だ。
もっと、強くならなければならない。
ユイは短剣を鞘に収めた。
明日、会議で全員と話し合う。
横になり、目を閉じる。
体は疲れているが、心は不思議と落ち着いていた。
翌日、六名での初めての正式な会議が開かれることになる。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、
ブックマーク・評価・感想などで応援していただけると、とても励みになります。




