第055話 火力不足の実感
ユイは呼吸を整えた。
このままでは勝てない。
核を壊すには、もう一度倒す必要がある。だが、4名では厳しい。
ゴーレムが腕を振り上げる。
ユイは後方へ跳んだ。
腕が地面を叩きつけ、石が砕け散る。
「セリス、まだ魔力は?」
「少しだけ!」
セリスが杖を掲げる。
「水よ、纏え!」
水がゴーレムの足元へ向かう。
だが量が少ない。動きは鈍るが、決定打にはならない。
「エルザ、足を!」
「了解」
エルザが影のように動き、足の付け根へ短剣を突き立てる。
ゴーレムの体が軋む。
だが、倒れない。
その時、後方から声が響いた。
「ユイ!」
カイルの声だった。
振り返ると、カイルが立っている。左腕を押さえているが、足取りは確かだ。隣にはリリアが杖を構えている。
「治療が終わりました!」
リリアが叫ぶ。
「カイル、無理するな!」
ユイが叫ぶ。
「大丈夫です。盾は壊れましたが、剣はあります」
カイルはそう言って前へ出た。
「胸の核を狙います!」
ユイが指示を出す。
「もう一度倒す。セリス、リリア、魔力は?」
「まだいけます」
リリアが即答する。
「私も、もう少しだけ」
セリスが頷いた。
「全員で攻撃します。核を破壊するまで止まりません」
ユイの言葉に、全員が頷く。
カイルが剣を振り上げ、ゴーレムの足へ斬りかかった。
刃が岩を削る。
反対側からエルザが足の付け根を狙う。
ゴーレムの体が大きく軋み、バランスが崩れた。
巨体が傾く。
「今だ!」
ユイが叫ぶ。
セリスとリリアが同時に魔法を放つ。
「水よ、押し流せ!」
「光よ、貫け!」
水と光が足元を直撃する。
ゴーレムが地面へ倒れた。
地響きが走る。
「核を狙う!」
ユイが前へ出る。
全員が倒れたゴーレムの胸部へ集まった。
赤く光る核が露わになっている。
ユイが短剣を振るう。
エルザも同時に斬りかかる。
刃が岩に当たり、わずかに削れる。
カイルが剣を振り下ろす。
岩に亀裂が走った。
「リリア、セリス!」
「光よ、砕け!」
「水よ、貫け!」
光と水が核へ集中する。
岩が削れ、内部が露出する。
「もっとだ!」
ユイが風魔法を放った。
「風よ、圧せ!」
圧縮された風が一点へ叩きつけられる。
岩が砕け、核が完全に露出した。
「今だ!」
ユイが短剣を突き立てる。
エルザも同時に刃を叩き込む。
核にヒビが走る。
リリアが光魔法を放ち、ヒビが広がる。
セリスが最後の魔力を振り絞った。
「水よ、砕け!」
水の刃が核を直撃する。
核が砕け散った。
赤い光が消える。
ゴーレムの動きが止まり、巨体が崩れ落ちる。
岩が砕け、重い音が山に響いた。
全員がその場に膝をついた。
カイルは地面に座り込み、荒く息をつく。
リリアは杖で体を支え、肩で呼吸している。
セリスは魔力を使い果たし、倒れそうになった。
エルザの額にも汗が滲んでいた。
アイリスも地面に腰を下ろす。
ユイは短剣を鞘に収め、深く息を吐いた。
「終わった……」
カイルが呟く。
「時間がかかりすぎたわ」
リリアが静かに言う。
「強力な攻撃魔法があれば、もっと早く終わっていた」
その言葉に、全員が無言で頷いた。
ユイは立ち上がり、崩れたゴーレムを見る。
魔石と硬岩が残されている。
「ドロップを回収します」
リリアが魔石を拾い上げる。
「報酬と合わせて、銀貨40枚くらいね」
「でも……」
セリスが言葉を濁す。
「正直、きつかった」
アイリスが苦笑した。
全員が消耗していた。
カイルは盾を失い、左腕も完全ではない。
リリアとセリスは魔力を使い果たした。
ユイ自身も体力を削られている。
「帰りましょう」
ユイが言った。
全員が頷き、山道を下り始める。
拠点への帰り道、誰も口を開かなかった。
ただ黙々と歩く。
ユイは仲間たちの背中を見つめる。
疲労、消耗、そして実感。
足りないものが、はっきりした。
重装甲の前衛。
強力な攻撃魔法使い。
この二つがあれば、戦いはもっと楽だった。
カイルが吹き飛ばされることもなかった。
核をもっと早く破壊できた。
ユイは前を見据える。
次の仲間を探さなければならない。
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