第052話 情報収集の依頼
拠点に戻ると、リリアが言った。
「赤目の魔物……調べた方がいいわね」
ユイは頷いた。
「情報を集めます」
翌朝、ユイはギルドへ向かった。
掲示板には新しい依頼が張り出されている。
「王都の裏通りで魔物の目撃情報を集めてほしい。報酬は銀貨15枚」
情報収集の依頼だった。
ユイは依頼書を受付へ持っていく。
「これを受けます」
ソフィアが内容を確認する。
「情報収集ですね。危険は少ないですが、裏通りは注意してください」
「分かりました」
拠点に戻り、全員に伝える。
「今日は情報収集です。裏通りで魔物の目撃情報を集めます」
「裏通り?」
セリスが首を傾げる。
「これ、私の得意分野!」
アイリスが目を輝かせた。
「情報屋の本領発揮だね」
リリアが微笑む。
「ユイ、アイリス、エルザの3名で行きます」
ユイが決める。
「了解」
エルザが短く答えた。
3名は王都の裏通りへ向かった。
昼間でも路地は薄暗く、建物が密集しているため日が差し込まない。
「この辺りに情報屋がいるんだよね」
アイリスが先を歩く。
やがて、小さな酒場の前で足を止めた。看板は古く、文字も擦れている。
「ここ」
アイリスが扉を開けた。
中は薄暗く、数人の男が座っている。3名が入ると、視線が集まった。
アイリスは気にせずカウンターへ向かう。
「情報が欲しいんだけど」
カウンターの男が顔を上げる。無精髭の中年だ。
「何の情報だ?」
「魔物の目撃情報。特に赤目の魔物」
男の目が細くなる。
「赤目、ねえ」
「知ってる?」
「知ってるよ。だが、情報には対価が必要だ」
アイリスが銀貨を2枚、カウンターに置く。
男がそれを掴んだ。
「北の森で出たらしい。それと、南の湿地帯でも目撃情報がある」
「本当?」
アイリスが身を乗り出す。
「ああ。商人が見たって話だ」
だが、男の視線が泳いだ。
ユイは気づく。
嘘だ。
次の瞬間、エルザが男の襟首を掴んでいた。
「嘘をつくな」
低い声。殺気がにじむ。
「ひっ……」
男の体が強張る。
「本当のことを言え」
エルザの手に力がこもる。
「わ、分かった! 言う、言うから!」
男は観念したように叫んだ。
エルザが手を離す。
男は咳き込みながら口を開く。
「赤目の魔物が、北の森と東の街道で増えてる。それは本当だ」
「他には?」
ユイが尋ねる。
「夜になると街道に出るらしい。群れで動いてる」
「数は?」
「分からない。だが、増えてるのは確かだ」
男は震えながら答えた。
「ありがとう」
アイリスが笑う。
「ちょろいね~」
3名は酒場を後にした。
「良い情報が取れましたね」
ユイが言う。
「エルザ、ナイス脅迫!」
アイリスが楽しそうに笑う。
「嘘は嫌いだ」
エルザは短く答えた。
その後も数人の情報屋と接触し、似た内容の証言を集める。
夕方、3名は拠点へ戻った。
広間では、リリア、カイル、セリスが待っている。
「どうだった?」
リリアが尋ねた。
「赤目の魔物は、北の森と東の街道で増えています。夜、群れで行動しているようです」
ユイが報告する。
「やっぱり増えてるんだ……」
セリスが不安そうに呟く。
リリアは地図を広げ、印をつけていく。
「北の森……あの封印陣があった場所ね」
ユイは頷いた。
「関係があります」
かつて封印陣を調査した際、赤目の狼と遭遇した。
封印陣の破壊と、赤目の魔物の増加。偶然とは思えない。
「どうするの?」
アイリスが尋ねる。
「情報を集め続けます。今は、まだ動くべきではありません」
ユイは静かに答えた。
「明日、ギルドに報告して報酬を受け取ります」
全員が頷く。
夜、ユイは自室で地図を広げていた。
北の森、東の街道、西の街道。
赤目の魔物が確認されている場所。
封印陣は、他にも存在する。東の山脈、南の湿地、西の砂漠、中央遺跡。
もし、すべてが破壊されたら何が起こるのか。
ユイは地図を閉じた。
まだ分からない。
だが、確実に世界は動き始めている。
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