第051話 平穏な護衛
拠点に戻る頃には、すでに夜になっていた。
全員が広間に集まり、テーブルの上にリリアが回収した生命樹皮と根核が並べられる。
「明日、ギルドに持っていきます」
ユイが言った。
「報酬はどのくらいになりますか?」
カイルが尋ねる。
「銀貨35枚くらいね」
リリアが答える。
「結構もらえるんだね!」
セリスが嬉しそうに声を上げた。
「クラウン費用3割、個人報酬7割で分けます」
ユイが続ける。
「クラウン費用が10枚、個人報酬が25枚。6名で割って、一人4枚と少しです」
「拠点の維持費もあるし、妥当ね」
リリアが頷いた。
翌日、ユイはギルドへ向かい、受付のソフィアに生命樹皮と根核を渡す。
「確認しますね」
ソフィアが素材を確かめる。
「フォレストトレントの素材ですね。状態も良好です。銀貨35枚になります」
「ありがとうございます」
ユイは報酬を受け取った。
拠点に戻り、報酬を分配する。
クラウン費用10枚は金庫へ。残りの25枚を6名で分けた。
「次の依頼を選びましょう」
ユイがギルドの掲示板から写してきた依頼書を広げる。
「護衛、物資運搬、採集……色々あるわね」
リリアが目を通す。
「この護衛依頼はどうですか?」
カイルが1枚を指さした。
王都から隣町までの商人護衛。半日の道のりで、報酬は銀貨20枚。
「危険度は低そうね」
リリアが言う。
「これにしましょう。実戦経験も積めます」
ユイが決めた。
翌朝、6名は王都の東門で商人と合流した。
中年の男性で、大きな荷車を引いている。
「あなたたちがクロウフォール?」
「はい。本日は護衛を担当します」
ユイが答える。
「よろしく頼むよ」
荷車が動き出し、6名は周囲を警戒しながら進む。
前にカイルとユイ、後ろにリリアとセリス。アイリスとエルザが左右を見張った。
街道は整備され、歩きやすい。空は晴れ渡っている。
「いい天気だね!」
セリスが明るく言う。
「平和そうだな」
カイルが周囲を見渡した。
アイリスは上空を警戒し、エルザは茂みに目を配る。
だが、魔物の気配はない。
昼になり、一行は街道脇で休憩を取った。
セリスが商人に話しかける。
「お仕事、大変ですか?」
「ああ、最近は特にね」
商人が溜息をつく。
「最近、魔物増えてません?」
その問いに、商人は頷いた。
「ああ、増えてる。特に夜はな」
「どんな魔物ですか?」
「狼とか、猪とか……でも最近は変なのも見かける」
「変なの?」
「赤目の狼だ」
その言葉に、アイリスが反応した。
「赤目?」
「ああ、目が赤く光ってる。気味が悪いよ」
ユイの表情が引き締まる。
赤目の狼。
北の森で遭遇した魔物だ。前世には存在しなかった。
封印陣の破壊と関係している可能性が高い。
「他の場所でも出ているんですか?」
ユイが尋ねる。
「東の街道でも目撃されてるらしい。北の森でも出たって話を聞いたな」
「増えてるんですね」
「ああ。正直、嫌な感じがするよ」
ユイはその情報を頭に刻んだ。
赤目の狼は、西の街道で討伐した8体だけでは終わらない。
広がっている可能性がある。
休憩を終え、一行は再び歩き出す。
午後も道中は平穏だった。魔物は現れず、無事に隣町へ到着する。
「ありがとう。助かったよ」
商人は報酬の銀貨20枚を差し出した。
「お疲れ様でした」
ユイが受け取る。
6名は王都へ戻る道を歩く。
「平和な依頼だったね」
セリスが笑う。
「でも、赤目の狼の話は気になるわ」
リリアが真剣な表情で言った。
「私たちが倒したのは西の街道。でも、東でも北でも出ている」
「広がってるってこと?」
セリスが不安そうに尋ねる。
「可能性は高いです」
ユイが答える。
全員の表情が自然と引き締まった。
拠点に戻り、リリアが静かに言う。
「赤目の魔物……調べた方がよさそうね」
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