第049話 樹木の巨人
アイリスを先頭に、6名は森の奥へと進んだ。
足元には枯れ葉が厚く積もり、踏みしめるたびに乾いた音が響く。木々が空を覆い、森の中は薄暗い。
「もうすぐよ」
アイリスが声を落として言う。
やがて、視界が開けた。
そこに、それは立っていた。
フォレストトレント。
高さは6メートル。幹の太さは3メートルはある。灰褐色の樹皮は岩のように硬そうで、何本も伸びた枝が、風もないのにゆっくりと揺れている。
根は地面に深く食い込み、土を盛り上げていた。
「でかいな……」
カイルが思わず呟く。
「推奨レベルは24だけど、これは大型個体ね」
リリアが冷静に分析する。
「どうしますか?」
カイルがユイを見る。
ユイは魔物を観察した。動きは鈍い。だが、この巨体と樹皮の硬さは明らかな脅威だ。
「カイル、引きつけて。全員、側面から攻撃」
「了解です」
カイルが盾を構え、前に出る。
「おい、こっちだ!」
叫び声に反応し、魔物の枝がゆっくりとカイルへ向いた。
カイルが突撃する。盾を前に、地面を蹴った。
枝が振り下ろされる。
カイルは盾で受け止めた。轟音が森に響く。
だが、次の瞬間。
カイルの体が後方へ吹き飛ばされた。地面を転がり、木の根に背中を打ちつける。
「カイル!」
セリスが叫ぶ。
「大丈夫です!」
カイルはすぐに立ち上がった。盾の表面には、深い傷が刻まれている。
「硬い……!」
魔物が再び枝を振るう。今度は横薙ぎだ。
「散開!」
ユイの指示で、全員が左右に跳んだ。
枝が空を切り、風圧が頬を叩く。
ユイとエルザが側面から接近し、短剣を振るう。
刃は樹皮に食い込むが、深くは入らない。
「硬いな」
エルザが低く呟く。
ユイも同感だった。前世で戦ったフォレストトレントより、明らかに防御力が高い。
魔物が枝を振り回す。2人は距離を取って後退する。
「セリス、動きを鈍らせて!」
「はい!」
セリスが水晶の杖を掲げる。
「水よ、流れよ!」
青い光が放たれ、魔物の足元へ走る。地面が濡れ、根の周囲に水が広がった。
だが、効果は薄い。
魔物の動きは、ほとんど変わらなかった。
「水魔法だけじゃ足りないわ」
リリアが即座に判断する。
「アイリス、継ぎ目を探して!」
「了解ー!」
アイリスは素早く走り、魔物の周囲を回りながら根元を観察する。
魔物が再び枝を振るう。
カイルが盾で受け止めるが、また大きく後退した。
「くそ、止めきれない!」
ユイは前世の記憶を辿る。
フォレストトレントの弱点は、根の継ぎ目だ。
だが、この個体は大型で、継ぎ目が分かりにくい。
「見つけた!」
アイリスの声が響く。
「どこだ?」
「根の付け根、左側!」
ユイが視線を走らせる。確かに、左側の根元に、わずかな隙間があった。
「エルザ、そこを狙って!」
「分かった」
エルザが影のように動き、左側へ回り込む。
だが、魔物が反応した。
枝が大きく振り上げられる。
「まずい!」
カイルが前に出る。盾を構える。
枝が振り下ろされた。
カイルは受け止めたが、衝撃で膝が地面に沈んだ。
「カイル!」
リリアの治癒魔法が放たれ、光がカイルを包む。
それでも魔物は止まらない。
枝を振り回し、地面を叩きつけた。
土煙が舞い上がり、石が砕ける音が響く。
ユイは息を整えた。
このままでは、埒が明かない。
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