第048話 初依頼の朝
朝日が窓から差し込み、部屋を淡く照らす。
ユイは目を覚ました。体が軽い。昨夜はよく眠れたようだ。
ベッドから降り、窓を開ける。冷たい空気が流れ込み、意識がはっきりする。拠点の外には、朝靄に包まれた森が静かに広がっていた。
今日は、クロウフォールとして初めて受ける依頼の日だ。
装備を確認する。黒銀の軽装鎧を身につけ、短剣を腰に下げる。風の補助装具を固定し、回復薬を3本、ベルトに差し込んだ。
部屋を出ると、すでに広間には全員が揃っていた。
カイルは新調した盾を手にしている。銀色の表面が朝日を反射していた。
リリアは緑金のローブを整え、長杖を静かに構えている。
アイリスは黒紫のレザー装束で、腰のナイフを一本ずつ確かめていた。
セリスは水色の軽鎧に身を包み、水晶の杖を胸元に抱えている。
エルザは黒い軽鎧のまま、気配を薄くして壁際に立っていた。
「おはよう」
ユイの声に、全員が顔を上げる。
「おはようございます」
カイルが穏やかに答えた。
「準備はできてる?」
リリアが確認する。
「はい。今日はフォレストトレント討伐です」
ユイは依頼書を広げ、全員に示した。
「王都近郊の古森に出現。推奨レベル24、討伐ランクC、レア度R」
「樹木型魔物ね。動きは遅いけど、防御力が高い」
リリアが補足する。
「火が効くんだよね?」
セリスが確認する。
「そうだ。樹皮が硬い。火を通せば、倒しやすくなる」
エルザが短く答えた。
「役割を確認します」
ユイは全員を見渡す。
「カイルが盾役。私が側面支援。リリアとセリスが回復。アイリスが偵察。エルザが奇襲」
全員が無言で頷いた。
「馬車で移動します。古森までは半日の道のりです」
拠点を出ると、馬車はすでに用意されていた。御者に挨拶を済ませ、6名は乗り込む。
馬車が動き出し、車輪が石畳を転がる音が響く。
「初めての全員任務だね!」
セリスが明るく声を上げた。
「緊張する?」
アイリスが笑いながら尋ねる。
「少しだけ」
カイルが正直に答える。
「油断するな」
エルザが短く釘を刺した。
ユイは窓の外に視線を向ける。王都の街並みが遠ざかり、やがて木々の影が増えていく。
前世では、いつも一人だった。
依頼も、戦いも、判断も、すべて一人で背負っていた。
今は違う。
ここには6名がいる。それぞれに役割があり、それぞれに得意分野がある。
「ユイさん、大丈夫ですか?」
カイルが気遣うように尋ねた。
「大丈夫です。ただ、考えていました」
「何を?」
「仲間と戦うのは、久しぶりだということを」
リリアが静かに微笑む。
「私たちも、全員で動くのは初めてよ」
「だから、協力しよう」
セリスが明るく言った。
「そうだね。連携が大事」
アイリスも頷く。
エルザは何も言わないが、拒む様子はなかった。
馬車は森へと近づいていく。道は次第に細くなり、木々が迫ってくる。
「もうすぐ到着します」
御者の声が響いた。
馬車が止まり、6名は地面に降り立つ。
目の前には、深い森が広がっていた。古い木々が空を覆い、薄暗い空気が漂っている。
「ここが古森ね」
リリアが杖を構えた。
「アイリス、偵察を」
ユイが指示を出す。
「了解ー!」
アイリスは軽やかに走り出し、森の奥へと姿を消す。
残りの5名は、その場で待機する。
カイルは盾を構え、ユイは短剣を抜いた。
リリアとセリスは杖を握り、エルザは周囲の気配に意識を向ける。
数分後、アイリスが戻ってきた。わずかに息が上がっている。
「見つけた」
「どこだ?」
カイルが即座に尋ねる。
「森の奥。でも……」
アイリスは一度、息を整えた。
「想像の3倍デカイ」
全員の表情が、自然と引き締まった。
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