第046話 拠点探し
翌朝、ユイはギルドへ向かった。
昨日の討伐報告を終え、ユイとアイリスはDランクに昇格している。これで、クラウン結成に必要な条件はすべて揃った。
ギルドに入ると、受付のソフィアが笑顔で迎える。
「昇格、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
ユイは軽く頷いた。
「拠点について、相談があります」
「はい。ギルドで紹介できる物件がいくつかあります」
ソフィアは地図を広げ、指で一点を示す。
「こちらが王都郊外の空き館です。敷地が広く、訓練場としても使えます」
示された場所に、ユイは見覚えがあった。
前世で、ある組織が拠点として使っていた館だ。
「ただし、長年放置されていたため、修繕は必要になります」
「見学できますか?」
「もちろんです。案内しますね」
ソフィアは立ち上がり、ユイは全員に連絡を入れた。
午後、6名は王都の西門を出て郊外へ向かう。
街道から少し外れ、森の手前にその館はあった。
石造りの2階建て。屋根は一部が崩れ、窓には板が打ち付けられている。敷地は雑草に覆われ、長く使われていないことが一目で分かった。
「ここです」
ソフィアが門を押し開ける。錆びた音が静かな空気に響いた。
敷地は広く、訓練場として使えそうな空間も十分にある。
館の前に立ち、ユイが扉に手をかけた。鍵はかかっていない。
中には埃が積もっていたが、構造自体はしっかりしている。
1階には広間と厨房、倉庫。2階には複数の部屋が並んでいた。
「宿泊設備も問題なさそうですね」
リリアが2階を見上げる。
「はい。6名で使うには十分です」
ソフィアが答えた。
「かなり広いですね」
カイルが周囲を見回す。
「まだ人数を増やす予定があるんですか?」
「今は6名です。ただ、必要になれば増えるかもしれません」
ユイの答えに、リリアが穏やかに微笑む。
「組織は生き物よ。状況に応じて変わっていくもの」
「訓練場、作れるね!」
アイリスが外を覗き込む。
「偵察の訓練にも使えそう!」
「ここで料理もできるね」
セリスが厨房を覗き込んだ。
「周囲に人が少ない」
エルザが短く言う。
「裏の仕事もやりやすい」
ユイは館全体を見渡した。
前世では、遠くから眺めるだけだった場所だ。だが今は、自分たちの拠点になる。
「ここにします」
ソフィアが頷く。
「分かりました。契約手続きを進めます」
「賃料は?」
「月額50クリスタルコインです」
6名で分担すれば、問題ない額だ。
「お願いします」
ソフィアが契約書を取り出す。
「こちらにサインを」
ユイは書類に署名した。
クロウフォール、その名で。
「これで拠点は確保されました」
ソフィアは微笑んだ。
「クロウフォール、正式認可です。おめでとうございます」
一瞬の静寂の後、アイリスが跳ねる。
「やった!」
「これで、本当に始まるんだね!」
セリスも嬉しそうだ。
「頑張りましょう」
カイルが拳を握る。
「まずは掃除ね」
リリアが言い、エルザが短く頷いた。
「了解」
夕日が差し込む中、ユイは館の扉を開けた。
「ここから、始める」
全員が頷く。
ソフィアが帰った後、6名は掃除に取りかかった。埃を払い、窓を開け、床を拭く。
夜になっても作業は続き、松明の明かりの下で黙々と手を動かした。
やがて、広間がある程度片付く。
「今日はここまでにしましょう」
ユイの言葉に、全員が疲れた表情で頷く。
「明日も続きをやりましょう」
リリアの提案に、誰も異論はなかった。
館を出て門の前で振り返ると、古い建物が月明かりに照らされている。
「ここが、クロウフォールの拠点か」
カイルが呟いた。
「そうです」
ユイは答える。
「ここを拠点に、戦っていきます」
全員が頷き、それぞれ宿へと戻っていった。
ユイは最後に一人、館を見上げる。
前世では、一人で戦っていた。今度は違う。
仲間がいる。拠点がある。
夜道を歩きながら、ユイは次を見据えた。
明日から、本格的な活動が始まる。
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