第045話 西の街道
午後、ユイは宿で装備を整えていた。
短剣2振りを腰に下げ、回復薬をベルトに差す。黒銀の軽装鎧を身につけ、動きを確かめる。問題はない。
窓の外を見る。空は澄み渡り、雲も少ない。
西の街道へ向かうには、申し分のない天候だった。
ユイは部屋を出た。
ギルド前に着くと、すでに全員が揃っていた。
カイルは銀のプレートアーマーに大剣と盾。リリアは緑金のローブに長杖。アイリスは黒紫のレザー装束に複数のナイフ。セリスは水色の軽鎧と水晶杖。エルザは黒い軽鎧に短剣と投擲武器。
「全員揃いましたね」
リリアが穏やかに微笑む。
「では、行きましょう」
ユイが先頭に立ち、6名は王都の西門へ向かった。
門をくぐると、石畳の街道が西へ延びている。両脇には畑が広がり、農夫たちが作業に勤しんでいた。
「魔物の群れって、どのくらいの規模なんですか?」
カイルが尋ねる。
「依頼書によると、10体前後です」
「種類は?」
エルザが短く聞いた。
「赤目の狼。群れで行動する魔物です」
アイリスが肩をすくめる。
「赤目の狼なら、そんなに強くないよね」
「油断はできません」
ユイは前を見据えた。
「群れで連携してきます。こちらも連携が重要です」
全員が頷く。
街道を進み、1時間ほど経つと、道の先に商隊が止まっているのが見えた。馬車が3台並び、商人たちが荷を確認している。
近づくと、1人の商人が顔を上げた。
「冒険者の方ですか?」
「はい。ギルドの依頼で来ました」
ユイが答えると、商人は安堵した表情を見せる。
「助かります。魔物が出てから、街道が通れなくて」
「どこで出ましたか?」
「この先、森の近くです。昨日も襲われました」
商人が西を指差す。
「ありがとうございます」
6名はさらに街道を進んだ。やがて、道の両脇に森が迫ってくる。
ユイは手を上げて足を止めた。
「ここからは警戒します」
全員が武器を構える。
ユイとカイルが前衛。後方にリリアとセリス。アイリスは上空へ舞い、エルザは影に溶けるように側面へ回った。
陣形を保ったまま進む。
森の奥から、低い唸り声が響いた。
「来ます」
ユイが短剣を抜く。
森から飛び出してきたのは、赤い目をした灰色の狼だった。3体。さらに奥から、複数の気配が伝わってくる。
「前衛、受け止めます」
カイルが盾を構え、飛びかかる狼を弾き返す。
ユイは側面へ回り込み、短剣を振るう。刃が狼の喉を裂き、血を噴いて倒れた。
「後ろから来るよ!」
上空のアイリスが叫ぶ。
振り返ると、さらに5体の狼が迫ってきていた。
「セリス、リリア、後方警戒!」
「任せて!」
セリスが水晶杖を振ると、水の壁が生まれ、狼の動きを鈍らせる。
同時に、リリアが治癒魔法を展開し、全員の消耗を補った。
影から現れたエルザが、狼の背後に短剣を突き立てる。抵抗する間もなく、狼は崩れ落ちた。
「まだいる!」
アイリスの投げナイフが空を切り、狼の脚に突き刺さる。動きが止まったところへ、カイルの剣が振り下ろされる。
ユイも間合いに入り、短剣で確実に仕留めていく。
連携は機能していた。
やがて、最後の狼が地に伏す。
全員が一度、呼吸を整えた。
「全員、無事ですか?」
ユイの問いに、全員が頷く。
「連携、良かったですね」
カイルが笑う。
「うん! みんな、ちゃんと役割果たしてたよ!」
アイリスが地上へ降りる。
「でも、まだ油断は禁物ね」
リリアは周囲に視線を走らせる。
ユイも同感だった。
10体前後という情報に対し、実際は8体。誤差の範囲だが、油断は禁物だ。
「戻りましょう。ギルドに報告します」
全員が頷き、街道を引き返す。
商隊の前を通ると、商人たちが深く頭を下げた。
「ありがとうございました!」
「気をつけてください」
短く返し、王都への道を歩く。夕日が背中を照らしていた。
「初めての依頼、成功ですね」
カイルが満足そうに言う。
「報告が終わるまでは、まだです」
ユイは前を見据えた。
連携は悪くない。
だが、これは簡単な依頼だった。本当の試練は、これからだ。
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