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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第6章 クラウンという選択

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第043話 影の女

夕暮れ時、ユイは裏通りの酒場へ向かった。

アイリスに連絡を取ると、すぐに会える場所を教えてくれた。昨日と同じ、翡翠の杯だ。


酒場に入ると、奥のテーブルにアイリスの姿があった。相変わらず紙束に囲まれている。顔を上げると、軽く手を振った。


「やっほー、ユイ。最後の一人、決まった?」


「まだです。相談があります」


ユイが腰を下ろすと、アイリスは紙束を片付けた。


「裏の仕事ができる人を探してます」


その言葉に、アイリスの目がわずかに輝く。


「裏って、どのくらい裏?」


「暗殺、奇襲、潜入。シャドウキンがいいです」


アイリスは楽しそうに笑った。


「へー、本格的だね。で、心当たりは?」


「エルザ・ナイトハート」


その名前が出た瞬間、アイリスの笑顔が消えた。

空気が静かになる。


「……知ってるの? あの人のこと」


「名前だけ」


「嘘。名前だけなら、普通は知らない」


アイリスは身を乗り出す。


「エルザ・ナイトハートは元暗殺者。今は裏社会から距離を置いてるけど、腕は確かよ」


「会えますか?」


アイリスは少し考え込み、やがて口を開いた。


「会える。でも、危ないよ。断られたら、最悪消されるかも」


「大丈夫です」


ユイの迷いのない目を見て、アイリスは溜息をついた。


「分かった。場所、教える。今夜、裏通りの倉庫街。待ってるって伝えとく」


「ありがとうございます」


「本当に、気をつけて」


ユイは酒場を出た。


夜になり、ユイは倉庫街へ向かった。

街灯はなく、暗い路地が続く。並ぶ倉庫の間に、人の気配はない。指定された場所は、古い倉庫の裏手だった。


月明かりだけが、地面を淡く照らしている。


ユイは立ち止まり、待った。


やがて、背後に気配が生まれる。


振り返ると、黒装束の女が立っていた。

黒い短髪、紅い瞳。しなやかな体つき。腰には短剣、ベルトには投擲武器。


エルザ・ナイトハート。


「話は聞いた」


低い声だった。感情が読み取れない。


「幻モンスター討伐? 馬鹿馬鹿しい」


ユイは動じない。


「本気です」


「証拠は?」


「ありません」


エルザは冷たく笑った。


「じゃあ、何で信じると思った?」


ユイは一瞬だけ考え、口を開いた。


「3年前、南の湿地帯で任務に失敗した。標的を逃がした」


エルザの瞳が鋭く細まる。


「……なぜ、それを」


「知っているからです」


エルザが一歩前に出る。

周囲の空気が一気に張り詰め、殺気が漂った。


「あんた、何者?」


「ただの冒険者です。でも、知っている」


エルザはしばらく黙ってユイを見つめ、やがて小さく笑った。


「面白い」


殺気が消える。


「殺されるかもしれないけど、乗ったわ」


即答に、ユイはわずかに目を見開いた。


「本当ですか?」


「退屈してたし。それに」


エルザは短剣を指で弾く。


「あんた、嘘ついてない。何か知ってる。その正体、見てみたい」


「ありがとうございます」


エルザは腕を組んだ。


「で、他のメンバーは?」


「5名います。あなたで6名目です」


「6名か。最低限ね」


エルザは空を見上げる。


「いつ会える?」


「明日、ギルドで」


「了解」


そう言い残し、エルザは踵を返した。

次の瞬間には、影の中へ溶けるように消えていた。


ユイは深く息を吐いた。


6名、揃った。


倉庫街を抜け、宿へ戻る道を歩く。

前衛、回復、偵察、暗殺。偏りはあるが、まずは動ける布陣だ。


明日、全員と会う。


夜空を見上げると、雲の切れ間から星が覗いていた。


今度は、一人じゃない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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