第042話 水の治癒師
翌朝、ユイはリリアの治療院を訪れた。
扉を開けると、薬草を分類していたリリアが顔を上げる。
「おはよう。アイリスとは上手くいった?」
「はい。加入してくれました」
リリアは安心したように微笑んだ。
「あの子なら、そうすると思ってたわ。で、次は?」
「回復役をもう一人」
ユイの言葉に、リリアは小さく頷く。
「ちょうどいいわ。紹介したい子がいるの」
そう言って、リリアは机に向かい、羽ペンを取った。紙に迷いなく文字を書き綴っていく。
「セリス・アクアノート。アクアニア族の治癒師よ。私の知り合いで、腕は確か」
「どんな人ですか?」
「明るくて元気。少し天真爛漫すぎるところもあるけど、回復魔法の才能は本物。それにね」
リリアは一度、手を止めた。
「あの子、陸上の冒険に憧れてるの。水中生活から離れて、色んな場所に行きたいって」
手紙に封をし、ユイに差し出す。
「これを持っていって。話は通してあるわ」
「ありがとうございます」
ユイは手紙を受け取り、治療院を後にした。向かう先は王都の東区だ。
東区は庶民が多く住む地域で、商人や職人、冒険者が行き交っている。通りを抜け、小さな治療院の前で足を止めた。看板には、水の癒しと書かれている。
扉を開けると、明るい声が響いた。
「はーい、どうぞー!」
中には長い青髪の女性がいた。水色の瞳に、透明感のある肌。細身の体に、水色の軽鎧を身につけている。
「あ、ユイさんだね! リリアさんから聞いてたよ!」
笑顔で手を振る彼女が、セリス・アクアノートだった。
ユイは一瞬、反応の早さに驚く。
「もう、話は?」
「うん! 組織作るんでしょ? 幻モンスター討伐するって!」
セリスは椅子を勧め、ユイを座らせた。
「リリアさんから聞いているなら、話は早いですね」
「でもさ」
セリスは少しだけ表情を引き締めた。
「幻モンスターって、本当にいるの? おとぎ話じゃなくて?」
「実在します」
ユイは即答した。
「すごーい! でも、危なくない?」
「危ないです。本気で危険な戦いになります」
セリスは少し考え込んだが、すぐに顔を上げ、笑顔に戻る。
「じゃあ、私も本気で回復するよ! 誰も死なせないから!」
あまりにも迷いのない返事に、ユイは目を見開いた。
「本当ですか?」
「うん! 面白そうだし。それに、ずっと陸上で冒険したかったの。水の中じゃなくて、色んな場所に行ってみたいって」
そう言って、窓の外を見つめる。
「リリアさんが、あなたを信頼してる。だから、私も信じる」
「ありがとうございます」
セリスはくるりと振り返った。
「で、他のメンバーは? 何人いるの?」
「今、4名です。あなたで5名目になります」
「じゃあ、あと1名だね! 誰を誘うの?」
「まだ決めていません」
「楽しみだね!」
セリスは無邪気に笑った。
「いつ会えるの?」
「明日、ギルドで全員集まります」
「分かった! 行く行く!」
ユイは立ち上がる。
「では、また明日」
「うん! 待ってるね!」
治療院を出て、通りを歩きながらユイは考えた。
5名。残り1名。
前衛、回復、偵察は揃った。足りないのは、裏の仕事を任せられる存在。
ユイは自然と、裏通りの方角へと足を向ける。アイリスに会う必要がある。最後の1人について、相談するために。
夕暮れの王都を歩きながら、ユイは思う。
残り1名。
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