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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第6章 クラウンという選択

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第041話 最初の候補

午後、ユイは王都の裏通りへ向かった。

表通りとは違い、薄暗く、建物が密集し、路地が入り組んでいる。一般の市民が好んで足を踏み入れる場所ではない。


だが、ここには情報が集まる。

裏社会の住人、冒険者、商人。表に出ない噂や取引が、この場所を行き交っていた。


ユイは前世の記憶を辿りながら歩く。

確か、この先に酒場があったはずだ。アイリスが情報を売っていた場所。


角を曲がると、古びた看板の酒場が見えた。

翡翠の杯。

扉を開けると、昼間だというのに中は賑わっている。


カウンターには数人の客が並び、奥のテーブルでは小声の取引が行われていた。

ユイは中に入り、周囲を見回す。


奥の隅のテーブルに、小柄な人影があった。

青い短髪のフェアリス。テーブルには紙束が積まれ、向かいには客が座っている。


アイリス・フェンネル。


ユイが近づくと、客が立ち上がり、クリスタルコインを数枚置いて去った。

アイリスはそれを素早く懐にしまい、顔を上げる。


「はい、次の方どうぞー」


明るい声。茶色の瞳がユイを捉える。


「アイリス・フェンネルさん?」


「そうだけど。新規のお客さん?」


興味深そうに笑うアイリスの前に、ユイは腰を下ろした。


「情報が欲しい」


「いいねー。何の情報?」


「その前に、話があります」


ユイは真っ直ぐにアイリスを見た。

その笑顔が、わずかに変わる。


「話? 情報屋に話?」


「組織を作ります。偵察と情報収集ができる人が必要です」


アイリスは目を見開き、数秒黙った後、突然笑い出した。


「あはは! 面白いこと言うね。で、何するの? その組織」


「幻モンスター討伐です」


その瞬間、アイリスの笑顔が消えた。

店内のざわめきは続いているのに、二人の間だけが静まり返る。


「マジで言ってる?」


「本気です」


ユイは一切、視線を逸らさない。

アイリスは腕を組み、背もたれに寄りかかった。


「幻モンスターって、おとぎ話のやつでしょ? 子供だましの」


「実在します」


「証拠は?」


「ありません。今は」


アイリスが鼻で笑った。


「証拠もないのに信じろって?」


「信じなくていいです。ただ、退屈しているなら、少しは面白い話だと思いませんか」


アイリスの表情が変わった。

興味を刺激された目だ。


「確かに、退屈はしてるわね。毎日同じ情報売って、同じ客と話して。正直、つまんない」


前のめりになり、ユイを見る。


「で、あんた誰? 名前は?」


「ユイ・セイラス」


「冒険者?」


「はい」


「ランクは?」


「E」


アイリスが声を上げて笑った。


「E! 一番下じゃん! そんなのが幻モンスター討伐? 冗談きついわー」


ユイは表情を変えない。


「ランクは関係ありません。実力と経験があります」


「へー。じゃあ、他のメンバーは?」


「今、3名います」


「あと何人?」


「6名で組織を作ります。あなたを入れて4名目です」


アイリスはテーブルに肘をつき、顎に手を当てた。


「組織ねえ。クラウンってやつ? ギルドに認可してもらう」


「そうです」


「本気だね、あんた」


ニヤリと笑い、即答した。


「いいよ、乗った」


ユイはわずかに目を見開く。


「本当ですか?」


「うん。理由? 退屈だし、面白そうだから」


アイリスは立ち上がり、紙束をまとめる。


「それに、あんたの目、嘘ついてない。本気で信じてる目だ。そういうの、嫌いじゃない」


「ありがとうございます」


「ただし」


指を一本立てる。


「本当におとぎ話だったら、すぐ抜けるからね」


「分かりました」


「じゃ、よろしく。ユイ。敬語いらないよ、めんどくさいし」


「分かった」


二人は酒場を出た。

裏通りの冷えた空気が、肺に流れ込む。


「あと2名、ね」


軽い口調で言うアイリスに、ユイは頷く。


「次は回復役です」


「回復かー。いいじゃん。死にたくないし」


笑うアイリスを横目に、ユイは前を見る。

あと2名。


「じゃ、また明日ー」


アイリスは手を振り、路地の奥へ消えていった。

ユイは表通りへ戻る。


夕日が王都を赤く染めている。


4名。

着実に、形になり始めていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じていただけましたら、

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