第040話 ギルドでの確認
ユイ、リリア、カイルの3人は、ギルド本部へ向かった。
朝の通りは活気づいている。商人が荷車を引き、冒険者たちが依頼を求めて歩く。いつもと変わらない、王都の朝だ。
ギルドの建物に入ると、受付にソフィアがいた。栗色のボブの髪を整えながら、3人に気づいて顔を上げる。
「おはようございます。今日はクラウン結成について、ですね」
ソフィアは微笑んだ。昨日の相談内容を覚えているようだった。
「はい。詳しく教えていただけますか」
ユイの問いに、ソフィアは頷き、奥から厚い書類束を持ってくる。カウンターの上に広げられた紙の山を前に、説明が始まった。
「クラウン結成には、いくつか条件があります。まず、最低6名の冒険者が必要です」
「6名」
カイルが低く繰り返す。
「今が3名ですから、あと3名ですね」
「その通りです」
ソフィアは書類を指でなぞる。
「次に、明確な長期目標の提示が必要になります。クラウンは単なる依頼受注用のパーティではなく、特定の目的を持った組織として登録されます」
リリアが腕を組んだ。
「目的の内容に制限はあるの?」
「違法でなければ問題ありません。ただし、危険度が高い場合は、審査が厳しくなります」
ソフィアはページをめくる。
「それから、活動拠点の確保です。ギルドが紹介できる物件もありますし、自分たちで探していただいても構いません」
「拠点か……」
カイルが呟く。
「最後に、ギルドマスターによる審査があります。グレン・マクレディが直接面談し、組織の目的と実現可能性を判断します」
ソフィアは3人を見渡した。
「目的は、何ですか?」
ユイは迷いなく答えた。
「幻モンスター討伐です」
ソフィアの手が止まった。小さく息を呑む音がする。
「幻モンスター……」
「実在します」
ユイの短い断言に、ソフィアは困惑した表情でリリアとカイルを見た。2人は、どちらも真剣な顔で頷いている。
「本気、なんですね?」
「本気です」
しばらくの沈黙の後、ソフィアは静かに頷いた。
「分かりました。正式申請は、メンバーが揃ってからになります。まずは6名集めてください」
申請書の雛形が差し出される。
「こちらに必要事項を記入し、メンバー全員の冒険者証と一緒に提出してください」
「ありがとうございます」
ユイは書類を受け取った。3人はギルドを後にする。
外に出ると、カイルが尋ねた。
「あと3名、誰を誘うんですか?」
「情報収集ができる人。それから、回復役をもう1人」
少し間を置き、続ける。
「裏の仕事ができる人も必要です」
リリアが頷いた。
「情報屋なら、知ってるわ。アイリス・フェンネル。フェアリスの子で、王都じゃ有名よ」
その名前に、ユイは前世の記憶を重ねた。優秀な偵察役だった人物だ。
「会えますか?」
「裏通りの酒場にいるはずよ。午後なら確実ね」
カイルが少し眉をひそめる。
「情報屋って、危なくないんですか?」
「危ないわよ」
リリアは即答し、軽く笑った。
「でも、幻モンスター討伐なんて目標を掲げるなら、表の世界だけじゃ足りない」
ユイは頷いた。情報は力だ。世界の裏側を知る人間が必要になる。
「午後、裏通りへ行きましょう」
3人は通りを歩きながら、それぞれ考えを巡らせる。
6名。目的。拠点。審査。
やるべきことは多い。だが、一つずつ進めれば、形にはなる。
「組織名は、どうします?」
カイルが問いかける。
「まだ決めていません。全員揃ってからにします」
「それがいいわね」
リリアが頷いた。
「みんなで決めた方が、組織としてまとまるもの」
ユイは前を見た。午後、アイリスと会う。最初の、新しい仲間候補だ。
「じゃあ、午後に裏通りで」
「分かりました」
3人は一旦解散した。ユイは宿へ戻る。
部屋に入り、書類を机に広げる。申請書の雛形。組織名の欄。目的の欄。メンバーの欄。
窓の外を見た。
前世では、一人で戦い続けた。今度は違う。
午後まで時間はある。ユイは装備を確認し、短剣を静かに研いだ。
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