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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第5章 討伐隊の出陣

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第037話 不完全な討伐

魔物の体が光っている。淡く、揺らめくような光だ。弱々しいが、確かに消えていない。


エリナが杖を構えたまま叫んだ。

「まだ、完全には倒せていない!」


ヴィクトルが視線を落とす。地面に描かれた円形の封印陣。一部は破壊されているが、陣そのものはまだ残っている。


「封印陣が、まだ一部機能している」


ユイも封印陣を見た。魔物の体から、細い光の糸が伸びている。その先は、封印陣の中心だ。光はゆっくりと流れ、魔物の体を包み込んでいく。


体が透けていく。

血の痕が消え、傷が消え、輪郭が曖昧になっていく。


次の瞬間、光が弾けた。


魔物の姿が消えた。地面には血も傷も残っていない。最初から存在しなかったかのようだ。


全員が沈黙した。武器を構えたまま、封印陣を見つめている。


リオンが低く呟く。

「討伐、成功か?」


ヴィクトルは首を横に振った。

「完全ではない。封印陣が魔物を再び封じ込めただけだ」


ユイは封印陣を見つめた。完全に壊れていない以上、猶予はある。魔物は戻った。少なくとも、すぐに復活はしない。


だが、他の封印陣が壊れていたら。


ユイは拳を握り締めた。東の山脈、南の湿地、西の砂漠、中央遺跡。全てを調べなければならない。


ヴィクトルが全員を見回す。

「北の森の異変は、一時的に収まった」


全員が頷いた。カイルが剣を鞘に納め、深く息を吐く。グレンとロウも肩の力を抜いた。エリナが杖を下ろし、アリスが弓を背負う。


「他の封印陣については、各地の支部に調査を要請する」

ヴィクトルが洞窟の出口を指した。

「我々は王都に戻り、報告を上げる。戻るぞ」


全員が歩き出した。ユイは最後に封印陣を振り返る。一部が欠けた円。意図的に壊された痕跡。誰が、何のために。


答えはない。


通路を戻る。足音が洞窟に反響する。疲労は重いが、誰一人倒れていない。全員、無事だ。


やがて出口が見え、外の光が差し込んできた。


洞窟を出ると、湿った森の空気が肺に流れ込む。土と木々の匂い。ユイは大きく息を吸った。生きている。


カイルが隣に来た。

「ユイさん」


振り返ると、カイルは頭を下げていた。

「助けてくれて、ありがとうございました」


ユイは首を横に振る。

「お互い様です。盾を失っても、最後まで前に立ってくれました」


カイルは顔を上げ、照れたように笑う。

「盾は、また作ればいいですから」


リオンが近づいてきた。

「いい動きだった」


短い言葉だったが、ユイは頷いた。

「訓練の成果です」


エリナが杖を肩に乗せる。

「連携、かなり良くなってるわ」


完璧ではない。それでも、前世より確実に前に進んでいる。


ヴィクトルが腕を組んだ。

「各地の報告が揃うまで、時間はかかるだろう」


全員が頷いた。


森を抜け、来た道を戻る。魔物の気配はない。森は静かだ。


やがて入口が見え、馬車が待っていた。御者が手を振る。


その時、ユイは視線を感じた。背後、森の奥から。


振り返る。

だが、誰もいない。揺れる木々と、吹き抜ける風だけだ。


観測者。


ユイは前を向いた。気配は消えたが、確かに見られていた。


森を出る。

北の森での戦いは終わった。だが、全てが解決したわけではない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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