第034話 連鎖の封印
ユイは古代文字の解読を続けた。文様の中に埋め込まれた文字を、1つずつ読み取る。複雑で、一部は欠けている。だが、意味は理解できる。
「この封印陣は、他の封印陣と連鎖している」
ユイは立ち上がり、ヴィクトルを見た。
「この封印陣は、他の封印陣と連鎖しています」
ヴィクトルが眉をひそめる。
「他にも封印陣があるのか?」
「おそらく。ナオミさんが言っていた通りです」
ユイは足元の封印陣を見下ろした。円の一部が欠け、文様が歪んでいる。
「1つ破れば、他も弱まる。そう書いてあります」
エリナが杖を下ろした。
「つまり、この封印陣が壊されたことで、他の封印陣も弱まっているということ?」
「そうです」
ユイが頷く。ヴィクトルは腕を組んだ。
「他の場所も調べる必要があるな」
エリナが鞄から地図を取り出し、床に広げた。王国全体が描かれている。
「ナオミさんが言っていた場所は、東の山脈、南の湿地、西の砂漠、中央遺跡」
ユイが地図を見つめる。それぞれの地点に印が付けられていた。
「全てを調査しなければならない」
ヴィクトルは地図から視線を上げなかった。
「時間がかかるな」
その時、奥から音がした。
重い足音。ゆっくりと、確実に近づいてくる音。
ユイは振り返った。部屋の奥、暗がりの中から、何かが歩いてくる。
「来るぞ!」
ヴィクトルの声が洞窟に響いた。全員が一斉に武器を構える。
暗闇から、巨大な影が姿を現す。黒い鱗に覆われた体。深紅の目。鋭い爪と牙。前回、撤退を余儀なくされた魔物。
古代種魔物。
ヴィクトルが剣を抜いた。
「陣形を組め!」
全員が動いた。ヴィクトルとリオンが前衛に立つ。カイルが盾を構え、2人の隣に並ぶ。ユイは側面へ移動し、グレンとロウが反対側の側面に展開する。エリナとアリスは後方へ下がった。
8名の陣形が完成する。
魔物がこちらを見据えた。深紅の目が、8名をなぞる。そして、咆哮した。
轟音が洞窟に反響し、壁が震える。天井から砂が落ちた。
ユイは短剣を握り直した。前回よりも、明らかに凶暴だ。封印陣が壊れた影響か。
魔物が地面を蹴る。突進。速い。
ヴィクトルが前に出た。剣を構える。
「受け止めろ!」
リオンとカイルが並ぶ。3人で突進を受け止める構えだ。
激突。轟音。ヴィクトルの剣が前足を受け止め、リオンが側面から支える。カイルの盾が衝撃を吸収する。3人の足が地面を滑ったが、踏みとどまった。
「今だ!」
ヴィクトルの声に、グレンとロウが側面から斬りかかる。剣が胴体を狙うが、黒い鱗が刃を弾いた。金属音が響く。
「硬い!」
グレンが舌打ちする。魔物が尻尾を振るい、2人は後方へ跳んだ。間一髪だ。
エリナが杖を掲げる。
「炎よ、奔れ!」
赤い光が放たれ、炎が魔物を包む。だが、魔物は止まらない。炎を突き抜けて迫ってくる。
アリスが弓を引き、矢を放った。狙いは目。だが、魔物が顔を逸らし、矢は鱗に弾かれた。
ユイは魔物の動きを凝視していた。前世の経験が、わずかな予兆を拾う。足の運び、視線、攻撃の癖。
魔物が再び突進する。今度の標的はカイルだ。
カイルが盾を構え、叫ぶ。
「来い!」
前足が盾に激突する。轟音。カイルの体が押され、足が滑る。それでも、踏みとどまった。
「カイル、下がれ!」
リオンの声。カイルが横へ転がる。直後、魔物の前足が地面を叩き、石が砕けた。
ヴィクトルが背後へ回り込む。剣を振るい、後ろ足を狙う。だが、魔物は尻尾を振り払った。
ヴィクトルが剣で受け止める。衝撃。体が後方へ吹き飛ばされた。
「ギルドマスター!」
エリナの叫び。ヴィクトルは地面を転がり、すぐに立ち上がる。
「問題ない。続けろ!」
魔物が再び咆哮した。今度はエリナとアリスへ向かう。
リオンとグレンが前に出る。剣を構える。
だが、魔物は速い。
ユイは駆け出した。魔物の側面へ。訓練で叩き込まれた動き。1人で動かない。連携する。
それでも、魔物は強い。前回よりも、明らかに力が増している。
魔物が咆哮する。その声は、前回よりも激しかった。
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