第033話 森への再突入
8名が森の中へ足を踏み入れた。木々が視界を遮る。陽の光が葉の隙間から差し込み、地面に斑模様を作っている。空気は湿っていて、土の匂いが強い。
ヴィクトルが先頭を歩く。リオンとカイルがその後ろ。ユイは側面を警戒しながら進む。エリナは後方で杖を構えている。グレン、ロウ、アリスが周囲を見張っている。
足音が落ち葉を踏む音だけが響く。鳥の声は聞こえない。森は静まり返っている。
ユイは周囲を見回した。前回来た時と同じだ。木々の配置、道の形、全て記憶通りだ。リオンが低い声で言った。
「前と変わらないな」
「ああ」
ヴィクトルが答えた。短く、警戒を怠らない。カイルが盾を構え直す。金属が擦れる音が響いた。
しばらく進むと、前方に開けた場所が見えてきた。木が倒れ、地面が荒れている。前回、呪われた魔物と遭遇した場所だ。
ヴィクトルが手を上げた。全員が止まる。
「警戒しろ」
ヴィクトルが剣を抜いた。全員が武器を構える。ユイは短剣を両手に持った。
静寂が続く。風が木々を揺らす。葉が擦れる音だけが聞こえる。
その時、茂みが揺れた。
何かが飛び出してくる。赤い目をした狼だ。毛は黒く、牙は鋭い。呪われた魔物だ。
「来たぞ!」
ヴィクトルが叫んだ。狼が跳躍する。ヴィクトルが剣で受け止めた。金属と牙がぶつかり、火花が散る。リオンが側面から回り込む。剣を振るう。狼が避ける。素早い。
カイルが前に出た。盾を構える。狼が突進してくる。カイルが盾で受け止めた。衝撃。カイルの足が地面を滑る。だが、踏みとどまった。
「今だ!」
カイルが叫ぶ。ユイは駆け出した。狼の側面に回り込む。訓練で何度もやった動きだ。リオンが前から斬りかかる。狼が避けようとする。だが、カイルの盾が動きを制限している。
ユイは短剣を構えた。狼の足元を狙う。訓練通りだ。1人で動かない。連携する。短剣が狼の後ろ足を斬った。浅いが、傷がつく。狼が怯む。
リオンの剣が狼の首を捉えた。1撃。狼が倒れる。動かなくなった。
ヴィクトルが頷いた。
「いいぞ。その調子だ」
ユイは息を整えた。訓練の成果が出た。連携が機能した。
カイルが盾を下ろす。
「やりましたね」
「ああ。だが油断するな」
リオンが短く言った。全員が頷く。
再び進む。森の奥へ。道は狭くなり、木々が密集してくる。
やがて、洞窟の入口が見えてきた。岩壁に開いた穴だ。前回と変わらない。暗く、中は見えない。
ヴィクトルが全員を見回した。
「到着した。ここから先は前回と同じだ。警戒を怠るな」
「了解」
全員が答えた。ユイは短剣を握り直す。
グレンが松明を取り出した。火を灯す。明かりが洞窟の入口を照らす。
「入るぞ」
ヴィクトルが先頭に立つ。リオンとカイルが続く。ユイはその後ろを歩く。エリナ、グレン、ロウ、アリスが続いた。
洞窟の中は冷たい。壁から水が滴る音が響く。松明の明かりが壁を照らす。影が揺れる。
足音が洞窟に反響する。誰も話さない。全員が警戒している。
通路を進む。曲がり角を曲がる。前回と同じ道だ。ユイは記憶を辿る。この先に、封印陣がある。
やがて、通路が広がった。部屋だ。天井が高く、壁には古代文字が刻まれている。そして中央に、封印陣がある。円形の模様が地面に描かれている。複雑な文様だ。一部が壊れている。前回見た時と変わらない。
ヴィクトルが部屋の中央へ進んだ。全員が周囲を警戒する。
エリナが杖を掲げた。魔力を感じ取る。
「まだ、魔物の気配はないわ」
ヴィクトルが頷いた。
「封印陣の調査を始めろ」
ユイは封印陣に近づいた。古代文字が刻まれている。前回は時間がなく、詳しく読めなかった。だが今回は違う。
ユイは膝をつき、文字を見つめた。複雑な文様の中に、文字が埋め込まれている。古代文字だ。前世で何度も見た。禁書庫でも調べた。少しずつだが、読める。
最初の1文。
「封印陣、ここに記す」
次の1文。
「連鎖封印陣」
ユイの手が止まる。連鎖。ナオミが言っていた通りだ。
さらに読み進める。
「1つ破れば、他も弱まる」
ユイは息を呑んだ。やはり、他にも封印陣がある。そして、それらは繋がっている。
文字の一部が読めた。
「連鎖封印陣。1つ破れば、他も弱まる」
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