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エターナル・リアルム 〜20年後の知識でやり直したら、世界が想定外に歪み始めた〜  作者: たくわん。
第4章 孤独な到達点

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第031話 未完の道

グラヴォルスが立ち上がる。

傷は塞がっていた。血も止まっている。呼吸が戻っている。深紅の瞳が、再びユイを捉える。

まるで、何もなかったかのように。


ユイは短剣を握り直す。

手が震える。力が入らない。指先が痺れている。

それでも、構える。

それでも、やるしかない。


ユイは走る。

足がもつれる。視界が揺れる。地面が傾いて見える。


グラヴォルスが炎を吐く。

ユイは横へ跳ぶ。炎が地面を焼く。熱風が吹く。着地する。膝が砕けそうになる。足に力が入らない。


立ち上がる。

グラヴォルスへ向かう。短剣を振るう。

刃が鱗に当たる。弾かれる。手首が痛む。


グラヴォルスが爪を振る。ユイは避ける。

だが、遅い。


爪がユイの肩をかすめる。服が裂ける。血が飛ぶ。温かい液体が腕を伝う。


後ろへ跳ぶ。

距離を取る。呼吸を整える。肺が痛い。喉が渇いている。


グラヴォルスが動かない。ただ、見ている。試すような目だ。


ユイは地面に手をつく。

魔力を流す。だが、出ない。

枯渇している。


もう、限界だ。

それでも、立つ。


短剣を構える。刃が震えている。自分の手が震えているのか、視界が揺れているのか、分からない。


グラヴォルスが動く。翼を広げる。

跳躍する。

空へ上がる。高く、高く。翼が風を切る音が響く。


そして、飛び去る。


ユイは立ち尽くす。

グラヴォルスの姿が、雲の中に消える。黒い影が、灰色の中に溶けていく。


逃げたか。

また、次だ。


力が抜ける。

ユイはその場に座り込んだ。地面が冷たい。岩が背中に当たる。


短剣を置く。手が震える。指が曲がらない。


ベルトから回復薬を取り出す。

最後の1本だ。


栓を開け、飲む。苦い。だが、体が少し楽になる。

傷が塞がっていく。痛みが和らぐ。出血が止まる。


だが、疲労は残る。


ユイは空を見上げた。

雲が流れている。夕日が差し込んでいた。赤い光が山を照らす。岩肌が茜色に染まっている。


美しい、と思った。

だが、それだけだ。


どこまで続くんだ、この戦いは。


呟く。答えは返ってこない。


風が吹く。冷たい。髪が揺れる。


ユイは立ち上がる。短剣を拾い、腰に下げる。刃が鞘に収まる音がした。


山を下り始める。

足を1歩、また1歩と進める。


体が重い。傷が痛む。肩が、脇腹が、足が、すべてが痛む。

だが、止まらない。


岩場を下りる。

手をついて、体を支える。岩が手に食い込む。


村の跡を通り過ぎる。

誰もいない。何も残っていない。焼け焦げた家々が、静かに佇んでいる。


ユイは足を止めない。


夕日が沈んでいく。

空が茜色に染まる。そして、紫に変わる。雲が赤く光り、やがて暗くなる。


世界は、まだ歪んでいる。


ユイは歩き続ける。

明日も、戦う。

それしかない。


街へ戻る道は長い。

だが、ユイは歩く。1歩ずつ。足音だけが響く。


背中を、夕日が照らしている。

影が長く伸びる。


1人だ。

ずっと、1人だった。


それでも、歩く。


終わらない戦いが、続く。

倒しても、また現れる。


それでも、戦う。

他に、道はない。


ユイの足音だけが、静かに響いていた。

遠くで、鳥が鳴いた。哀しい声だった。


第4章 完

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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